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これでもかの装飾と
照明演出が圧巻!
大宮〈ROCK MEMORIES〉

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.030

posted:2024.12.17   from:埼玉県さいたま市  genre:旅行 / エンタメ・お楽しみ

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスがリスニングバーを探す巡礼の旅、
次なるディストネーションは、埼玉県さいたま市大宮。

通りすがりのお客さんも入店に10年かかった圧倒的デコレーション!

コロンボ(以下コロ): キラキラの外観、なかなかのもんでしょ。

カルロス(以下カル): クセ強いねー。絢爛豪華! ロックはこうじゃないと。

コロ: 毎日、前を通って気になっていたお客さんでも、
入るのに10年かかったらしいよ(笑)。

カル: いくらマイケルが出迎えてくれるといっても、
このグラマラスな佇まいだと、ドアを開けるにはかなりの勇気がいるよな。

コロ: 内装だって、すこぶるゴージャス。
マスターのケイさんはいたってフレンドリーなんだけどなー。

カル: 白を基調とした店内に、あるわあるわ往時のレコードジャケットの数々。
まさにロックメモリーズだね。

コロ: ジャケットのカラーコピーをこれでもかと貼りめぐらせているんだけど、
笑っちゃうのが、
帯がないレコードはカタカナでわざわざアーティスト名を加えちゃっているところ。

カル: 手づくり感がなんともいえず好印象。

コロ: わかりやすいがモットーなんだって。

カル: ジャケットに「GOOD」とか丸印とかもあるけど。

コロ: それはケイさんによる評価。まあ、感想ね。

突如現れるジャケットに彩られた絢爛豪華なファサード。

突如現れるジャケットに彩られた絢爛豪華なファサード。

店内のデコレーションもキラキラ。白を基調とした壁面にレコードジャケットがこれでもかと。

店内のデコレーションもキラキラ。白を基調とした壁面にレコードジャケットがこれでもかと。

カル: お店に入ったとき、最初にかかっていたのはなんだった?

コロ: シャカタクの「Easier Said Than Done」だったかな。
雨が降って、寒い夜だったんで、滲みたなー。

カル: フュージョンの名盤、『Night Birds』収録曲だね。

コロ: シャカタクはAOR全盛時のフュージョンだから、とにかくキラキラしている。

カル: ブリット・ファンクの文脈からも、最近、盛り上がっているみたいね。
店内のジャケットを見る限り、70年代〜80年代のチャートやロックが中心だけど。

コロ: ロックメモリーズだけにマスターのメモリーを具現化しているんだ。

ホストの仕事もしていたというマスター、ケイさんの長髪時代。まるでロックスター。

ホストの仕事もしていたというマスター、ケイさんの長髪時代。まるでロックスター。

ディスコが学校、『MUSIC LIFE』が教科書だったという10代。

ディスコが学校、『MUSIC LIFE』が教科書だったという10代。

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初めて買ったレコードは?

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カル: 初めて買った洋楽レコードはなんだったろうね。

コロ: ディープ・パープルの『ライブ・イン・ジャパン』だってさ。
カルロスはなんだった?

カル: それがさー、全然覚えていないんだよね。
邦楽がありなら中山美穂の「You‘re My Only Shinin’ Star」が入ってる
『SUMMER BREEZE』だったかな。カセットテープだったけど。

コロ: うわー、角松敏生枠ミポリンだ! 

カル: まさかあんなことになるなんて。

コロ: ……RIP。ボクの洋楽はシカゴの日本独自のベスト『The GREAT CHICAGO』か
カーペンターズの当時、年末によく出ていた
これまた日本編集のベスト盤シリーズだったと思う。
シカゴのベストなんてそのとき、世界初だったらしいよ。

カル: 初めてのレコードついでに、
カウンターに飾ってあるレコードはマスターが観に行った初来日シリーズなんでしょう。

コロ: KISS、エアロスミス、クイーン、マドンナ、
マイケル・ジャクソンの伝説の後楽園球場、それからベイ・シティ・ローラーズ、
まあ、すごい初来日ラインナップ。

カウンター前の壁面はケイさんが目撃した初来日のアーティストたちのジャケットが。

カウンター前の壁面はケイさんが目撃した初来日のアーティストたちのジャケットが。

ベイ・シティ・ローラーズの「サタデー・ナイト」の7インチジャケット。7インチのジャケットってなかなかレア。

ベイ・シティ・ローラーズの「サタデー・ナイト」の7インチジャケット。7インチのジャケットってなかなかレア。

カル: ちなみにボクの初外タレは東京ドームのガンズ&ローゼズ。
初来日ではなかったけど、2階席の最後尾、アクセル・ローズが米粒で。
こんなもので金を取るのか、って冷静に思ったりもしたなぁ。
でも、初めての大物外タレだったんで、興奮したなー。

コロ: ボクの初来日はエリック・クラプトン、1974年。
C席買って、武道館の2階スタンドの階段に座って観た。鷹揚な時代。
クイーンにイーグルス、ニール・ヤングも初来日には立ち会ったな。いーでしょ。

カル: うらやま。

コロ: ライブ好きのマスターだけに、オーディオ類は凝ってないけど、
店内の特殊効果はなかなかのもんだよ。

カル: ミラーボールとか?

コロ: そんなもんじゃないよ。レーザービームにムービングライト、ストロボ、
スモークマシンまであるんだ!

カル: ちゃんと客電も落ちるんだ。

コロ: すごかったよ。
ヴァン・ヘイレンの「Eruption」から始まるんだけど、煽る煽る。

カル: エディのバリバリのタッピングから「You Really Got Me」につながるあれね。

コロ: そう、あれ。
お客さんの予約があると、その日のプレイリストをつくって楽しませてくれるらしい。

バリバリの照明演出とレーザー、スモークのマシンの特殊効果まで大サービス。

バリバリの照明演出とレーザー、スモークのマシンの特殊効果まで大サービス。

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あなたのロックメモリーは?

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カル: カウンターにあるマイクはMC用なの?

コロ: コロナ明けのオープンのとき、アクリル板を高くしすぎて声が聞こえなくて、
マイクを通してお客さんとやりとりしていた名残りだそう。

カル: 笑。マスター、イカしてるんで、モテるんだろうな。

コロ: ディスコが学校だったんだってさ。ホストもしていたらしく、女性にやさしいし、気分よくさせるのがことのほかうまい。
女の子と遊ぶためには音楽知識が基礎教養だったようだよ。

カル: くどきのミックステープとかせっせとつくっていたんだろうね。

コロ: マスターのヒーローはロッド・スチュワートなんだって。
豹柄のスリムパンツを原宿の古着屋で探し歩いていたらしい。

カル: やっぱり好きな曲は「アイム・セクシー」ってことになる?

コロ: もちろん。ロックに限らず、哀愁のAOR、ディスコ、R&B、LAメタルと、
とにかく幅広いんだ。

カル: 貸切もできるんでしょう?

コロ: 貸切にすると、ことのほか盛り上がるそう。ぜひ体験してほしいな。

カル: だろうね。まさにロック・メモリーになりそう。
ところでマスターにとってのこの店のロック・メモリーはなんだって言っていた?

コロ: お父さんが亡くなる2週間前に母と一緒に来たんだって。
来たのはその一回だけ。
プレスリーとかポール・アンカをかけたら、とても喜んでくれたそうだ。
で、ドラマティックスの「In The Rain」を聴くや、
うれしそうに母と踊りはじめたんだって。それがマスターのロックメモリー。

カル: なんか目に浮かぶね。いい光景。

貸切で騒いだときの盛り上がりはまさにロックメモリーとなるそう。

貸切で騒いだときの盛り上がりはまさにロックメモリーとなるそう。

〈ロック・メモリーズ〉のお店を象徴するアルバムといえばボン・ジョヴィの『Slippery When Wet』。

〈ロック・メモリーズ〉のお店を象徴するアルバムといえばボン・ジョヴィの『Slippery When Wet』。

information

map

ROCK MEMORIES 

住所:埼玉県さいたま市大宮区桜木町3-113

tel:048-667-5590

営業時間:20:00〜24:00

定休日:日曜、祝日

 

SOUND SYSTEM

Speaker:HAND MADE

Turn Table:AMERICAN AUDIO DTI 1.8

DJ Mixer:Dirigent RMX-22i

Equalizer:CLASSIC PRO CEQ231

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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