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しっとりソウルからたまにディスコ。
松本にオープンした
ソウルバー〈Super Duper〉

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.029

posted:2024.11.19   from:長野県松本市  genre:旅行

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
長野県松本市。

おもてなしから始まったゴージャスなディスコサウンドのヘビロテ!

コロンボ(以下コロ: 今回は松本のニューオープンのソウルバー。
なんたって、今年の4月15日オープン!

カルロス(以下カル): 松本でソウルバーってなんだかイメージしづらいね。

コロ: でしょ、そうはいっても根強いファンが多いようで、
地元はもちろん県内からこぞってお客さんが来てくれるんだって。
といっても、マスターの上原紀喜さん曰く、
この手の店は長野県だと松本市と長野市くらいでしか成立しないそうだ。

カル: ソウルバーならスキー場近くもいけそうだけどな。

コロ: そりゃ、『私をスキーに連れてって』以前の話じゃない? 
ゲレンデそばのディスコ的な。ディスコじゃなくてソウルバーだから。

カル: でも、上原さんはその昔、
銀座のすずらん通りの大箱ディスコ〈マジック〉を仕切っていたんでしょう。

コロ: そうらしいよ。銀座の〈マジック〉といえば、
ベテランのステッパーさんたちが集まる熱いディスコ。
それ以前は三軒茶屋のソウルバーとか、なんだかんだでソウルバー歴は20年近いらしい。

お店の奥がレコードラックとDJブース。オーダーがてんてこ舞いでない限り、こちらに移動してパワープレイ。

お店の奥がレコードラックとDJブース。オーダーがてんてこ舞いでない限り、こちらに移動してパワープレイ。

エントランスにある面出しジャケットの数々。バンド・オブ・チーヴスとかデルズとか、シブいところが飾られる。

エントランスにある面出しジャケットの数々。バンド・オブ・チーヴスとかデルズとか、シブいところが飾られる。

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ディスコ過ぎないように……

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カル: お店の入口に飾った面出しジャケット、
シカゴソウルのバンド・オブ・チーヴスとかデルズとか、シブいところが並んでいるけど、
この手の感じがお気に入りなの?

コロ: ダブって買っちゃったアルバム(笑)と、サイン入りのジャケットだってさ。

カル: そうはいってもダブって買っちゃうくらいだから、お気に入りだよね。
ボクもけっこうあるな、ダブりアルバム。

コロ: 70〜80年代のアルバムを中心に3000枚、
シングルも2000枚くらいあるんだってさ。

カル: ストライクゾーンっていうとどのあたりなのかな?

コロ:  基本的にはコーラスものが好きらしい。
スピナーズ、ウィスパーズ、スタイリスティックスあたりはよくかけるって。

カル: ソウルがゴージャスだったいい時代のアーティストだ。
基本、アルバム片面がけなの?

コロ: いやいや、ランチのときは片面がけかCDだけど、
夜はフードのオーダーがない限り一曲一曲、DJブースでせっせと捌いているよ。
ボクらが入ったときは、
カーティス・メイフィールドの『Tripping Out』からのベティ・ライトだった。 

カル: 芯食った選曲! そもそも、なんでソウルに目覚めたのかな?

コロ: 6歳離れたお兄さんが、ひたすらディスコ&ファンクを聴いていたらしい。
とはいえ、嗜好はこれでもかのアリサ・フランクリンより
抑制の効いたグラディス・ナイトやベティ・ライトなんかが好きなんだって。

カル: 曲もコテコテよりミディアムテンポだったり、
アルバムのなかの目立たない珠玉の一曲とからしいね。
選曲のモットーもマンツーマンのおもてなしなんでしょ。

カーティス・メイフィールドの名作『SOMETHING TO BELIEVE IN』。いまではかなりのレア盤。

カーティス・メイフィールドの名作『SOMETHING TO BELIEVE IN』。いまではかなりのレア盤。

女性ヴォーカルといえば、アリサ・フランクリンよりグラディス・ナイトだそう。

女性ヴォーカルといえば、アリサ・フランクリンよりグラディス・ナイトだそう。

コロ: そうなんだけど、お客さんに寄せるとどんどんディスコ系に振れてきちゃう。

カル: だよね。わかるわかる。
ダンスクラシック、たとえばシェリル・リンの「Got Be Real」くらいならまだいいけど、
放っておくとユーロビートなんかにエスカレートしちゃうもんね。

コロ: それが悩みの種なんだって。この間も「怪僧ラスプーチン」のリクエストが来たとか。

カル: そりゃ、すごい! ボニーMね。あるんだ?

コロ: それがあるんだよ!

カル: さすが!

コロ: でも「怪僧ラスプーチン」はあっても「ジンギスカン」はなかったんだって。
そのあとのリクエストは「ソウル・ドラキュラ」だったそうだよ(笑)。

カル: たしかにディスコだけど(笑)……。ヒップホップはどうなの?

お酒だけでなくフードも充実しているのもポイント。ランチ営業もあり。

お酒だけでなくフードも充実しているのもポイント。ランチ営業もあり。

取材時に迎えてくれたベティ・ライトの『DANGER HIGH VOLTAGE』。

取材時に迎えてくれたベティ・ライトの『DANGER HIGH VOLTAGE』。

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人生が変わった名作とは?

Page 3

コロ: 85年あたりのニュージャックスイングまではなんとか。

カル: ニュージャックスイング、懐かし! New Jeansなんかが擦ってくれたおかけで、
タイミング的にはいいじゃない? さぞかし盛り上がるんだろうな。

コロ: やっぱり踊り出しちゃうらしいよ。
目の前が蔵塀でさ、これまた妙なコントラストなんだよ。
そんなソウルバーって、世界中探したってないから。

カル: まあ、仕方がないよね。大人しくしろっていうのも野暮だし。

コロ: しまいには「ミラーボール、つけて!」だってさ。

カル: あってもいいかもね(笑)。
お店はガラス張りだから外からの眺めもいい感じだし、お客さんを吸い寄せるんじゃない?

不朽の名作テリー・ハフ&スペシャル・デリヴァリーの『The Lonely One』。

不朽の名作テリー・ハフ&スペシャル・デリヴァリーの『The Lonely One』。

コロ: とはいえ、ほんとはしっとりやりたいみたい。

カル: みんなディスコ全盛時代のキラキラ感が忘れられないんだよ。
しっとりスウィート系だとどんな感じ?

コロ: テリー・ハフ&スペシャル・デリヴァリー、なかでも『The Lonely One』。

カル: アル・ジョンソンのプロデュースによる不朽の名盤だ!

コロ: この人のおかげで、人生が変わったんだってさ。

カル: きっとかけがえのないスウィート・メモリーなんだろうな。

しっとりとしたソウルバーを目指すもディスコ系のリクエストが多いのがたまにきずだとか。

しっとりとしたソウルバーを目指すもディスコ系のリクエストが多いのがたまにきずだとか。

information

map

Super Duper 

住所:長野県松本市大手4−12-11

tel:050-8880-7866

営業時間:12:00〜15:00、17:00〜23:00

定休日:月曜

 

SOUND SYSTEM

Speaker:Pioneer 型番不明

Turn Table:Technics SL-MK5

Control Amplifier:DENON PMA-390AE

Mixer:Pioneer CDJ

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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