連載
posted:2024.4.12 from:京都府京都市 genre:旅行 / アート・デザイン・建築
〈 この連載・企画は… 〉
ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。
writer profile
Akihiro Furuya
古谷昭弘
フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。
credit
photographer:深水敬介
illustrator:横山寛多
音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
京都府京都市。
カルロス(以下カル): 〈Technics〉がカフェをオープンしたとは
聞き捨てならないね。それも京都なんでしょう?
コロンボ(以下コロ): 京都も京都、四条通り沿いのど真ん中。
昨年の12月6日、音楽の日にオープンしたんだ。
カル: 音楽の日?
コロ: エジソンが発明したフォノグラフの録音、再生が
初めて成功した日らしいよ。1877年の出来事。
カル: 世界中のDJが使い続けるターンテーブルの名機、
あの「Technics SL-1200」シリーズが発売されたのが1972年だから、
誕生のほぼ100年前だね。当然、このカフェのタンテもそうなんでしょう?
コロ: DJブースのものはもちろんだけど、
メインとなるオーディオユニットはハイエンドの「SL-1000R」。
より正確でなめらかな回転を追求し、
あらゆる振動を遮断・制御する強靭な構造らしいよ。
カル: 42キロ以上とかなり重いんだってね。
放送局用のユニットとして採用されるものもわかるね。
コロ: このカフェに鎮座する
パナソニックならでは垂涎のオーディオユニットの総額は700万円だってさ。
カル: TOYプレイヤーから始まったボクのレコード人生、
ここまで登り詰められればいいんだけどな(笑)。
コロ: 最近のレコードブームで、
入口はたしかにTOYプレイヤーからなんだけど、
たいがいそれじゃ物足りなくなくて、次のフェーズに向かうんだってね。
まあ、そりゃそうだけど。
カル: 広々としたカフェはガラス張りで天井もやたら高い。
シンプルかつソリッドな空間なんだけど、
これはデザインだけでなく音響への配慮とかもあるのかな?
コロ: すべてに音響的配慮があるそうだよ。
あえてテーブルを置いてなかったり、植栽が吸音の役割を果たしたりとね。
空間設計を担当した関祐介さんもSL-1200シリーズのユーザーで、
「デザインされているけれど主張しないところが」が気に入っているらしい。
カル: まさにその思想が空間設計にリファインされているね。
コーナーに積み上がった〈M&M Furniture〉の椅子を
お客さんがそれぞれ持って来て座るというシステムも新しいね。
そもそもなんで京都につくったのかな?
コロ: 京都の文化と
学生やインバウンドのツーリストが多いのもポイントだったみたい。
カル: 文化庁も京都に移転したしね。
テクニクスといえばグローバルブランドだから外国人にも親和性が高い。
コロ: そのおかげか、シティポップがすこぶる人気なんだ。
インバウンドの人たちのリクエストは
圧倒的かつダントツに竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」らしいよ。
カル: ハイエンド・オーディオどころか、
レコードで聴いたことない日本の若い子も多いだろうしね。
たしかにここで聴くと
山下達郎さんのいかしたギター・カッティングはもちろんのこと、
ストリングスがいかにきれいな鳴りかがよくわかる。ゾクゾクするね。
コロ: だよねー、別次元。
ヴィンテージ・オーティオショップの名店〈ジュピターオーディオ〉で
『クリムゾン・キングの宮殿』を聴いて以来の衝撃。
いままで聴いていた『クリムゾン・キングの宮殿』は
なんだったんだろうって(笑)。
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カル: レコードだけでなくて、ハイレゾ音源もまた極上らしいね。
基本、どんな選曲でやっているの?
コロ: プロデューサーの立川直樹さんとか、〈春の雨〉のオーナー中澤敬さん、
京都からは〈Jazzy Sport Kyoto〉のバイヤーのSHUN145さん、
〈SECOND ROYAL RECORDS〉など6人がプレイリストを作成して、
それをかけているんだ。
カル: 京都ローカルもフックして、とても行き届いたメンバーだね。
彼らがそれぞれの時間帯を想定してセレクトしているわけ?
コロ: まさにその通り。それぞれが朝昼晩とイメージした10曲くらいを決めて、
そのレコードをスタッフに預けてかけているんだって。
カル: 具体的にはどんな感じ?
コロ: 立川さんだったらドアーズ「まぼろしの世界」、
ニーナ・シモン「ファースト・レコーディング」だったり、
中澤さんならJoan Bibiloniの爽やかなアコースティック、
SHUN145さんは京都のパーティシーンを支えてきた
ジャムバンド、SOFT「PASSING TONE」とかね。
カル: なかなか個性あふれる選曲で、しかも幅も奥行きもある。
コロ: その合間といっちゃなんだけど、
ハイレゾ音源もかかるし、リクエストもできる。
昼間に聴く京都在住だったREI HARAKAMIのアンビエントというか、
なんともいえない浮遊感もいいもんだよ。時間帯によっては持ち込みもOKだとか。
ただ、レコード盤だけはしっかり磨いて来てくださいとのことです。
カル: 礼儀ですね(笑)、
オーディオもいいからノイズが想像以上に気になるはずだから要注意。
コロ: ノイズといえば、ハイレゾ音源だとノイズがまったくないので、
その明鏡止水の環境も異次元。リストの「ラ・カンパネラ」とかビビったよ。
カル: レコード派なのでなおさら感じちゃうじゃない?
カフェとはいえども、オーディオメーカーのカフェなので、
それなりの音量で鳴っているんだってね。音がいいと気にならないでしょ。
コロ: まったく! むしろ心地いい。
不定期だけどDJイベントなんかもやるそうだよ。
カル: DJバー的な夜になっちゃうわけだ。そりゃ、いい。
でも、場所柄、おさえ気味なんじゃなない?
コロ: いやそれがそうでもないらしい。
キャパも70名以上になるから、それなりに盛り上がっちゃうみだいだよ。
カル: 今後もいろいろと仕掛けちゃうんだろうな。
ところでカフェなんでしょ、コーヒーは京都から?
コロ: もちろん! 〈小川珈琲〉がサポートしているので、
ご当地感も抜かりないです。
information
Technics café KYOTO
住所:京都府京都市中京区新町通錦小路下る小結棚町444番地
電話:070-7817-3849
営業時間:11:00〜20:00(日~木曜)、11:00〜22:00(金・土曜)
※イベント開催の際は営業時間が異なる場合がありますので、ホームページを確認ください。
定休日:無休(年末年始を除く)
【SOUND SYSTEM】
Speaker:Technics SB-R1
Turn Table:Technics SL-1000R
Pre-Main Amplifier:Technics SU-R1000
Music Server:Technics ST-G30
Network/Super Audio CD Player:Technics SL-G700M2
旅人
コロンボ
音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。
旅人
カルロス
現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。
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