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大阪〈yacipoci〉
音楽とビールの泡に
とことんこだわる

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.014

posted:2023.8.17   from:大阪府大阪市  genre:旅行 / エンタメ・お楽しみ

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
大阪市中央区。

夏の終わりにふさわしいイカした立ち飲みレコードバー

コロンボ(以下コロ): このイカした立ち飲みレコードバーは
オーナー以外、そうやすやすとレコードをかけられないんだよ。

カルロス(以下カル): なんで? 機材の扱いがデリケートなの?

コロ: レコードラックにレコードが反対向きに入っているから、背表紙が見えないんだ。

カル: つまり、かけたいレコードが選べない?

コロ: そうなんだ、ジャケットを見ないことには
目的のレコードに到達しないわけなんだ。

カル: なんでまたそんなややこっしいシステムなんだ?

コロ: 背が奥だと、レコードが出しやすいし、しまいやすい。
それと店主の秋谷直弘さんは心斎橋のレコードバーの名店〈BAR JAZZ〉が
メンターなんだって。あのお店もそうしているらしい。

カル: なるほど。当然、収納ルールもアルファベット順とかじゃないわけだよね。

コロ: もちろん! 秋谷さんが選びやすい順。

カル: そこがネックだよね。どのお店もどこに、
どんなレコードがあるかわからないから、うっかりプレイできない。

コロ: レコードだけじゃないんだ、うっかりプレイできないのは。
ビールサーバーが「スイングカラン」というレトロなサーバーで、
いまでは老舗ビアホールぐらいでしか見かけない、
ヴィンテージ級の難儀なサーバーなんだよ。

カル: 一度注ぎでおいしいビールが注げるという
ビールファンにはたまらない魔法のサーバーのあれ? 
熟練の技術が必要なんでしょ? 
レコードに針を置いたり、
スイングカランのZ軸のサーバーで泡を操作したり、大変そうだね。

コロ: ビールはガス圧、レコードは針圧なんだって。

カル: このお店の前は自転車屋さんだったんでしょう。
よっぽどアナログが好きなんだね。

コロ: 音楽よりビールの泡の話で盛り上がっちゃったよ(笑)。
クリーミーな泡はほんとに素晴らしかったな。

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空間の主役は曲である

Page 2

カル: 泡にとことんこだわるくらいだから、曲と流れにもこだわるんでしょう?

コロ: ビール談義で白熱しているときは、
何気にアルファ・ミストとか、
今年亡くなったエマホイ(・ツェゲ=マリアム・ゴブルー)がかかっていたかな。

カル: エチオピアの女性ね。洒落たピアノの流れだね。センスいい。

コロ: お店が西向きなんで、青い時間帯はたそがれちゃうのか、
どうしてもジャズが多くなるらしいよ。

カル: ヴォーカル系は?

コロ: 日が暮れてからだってさ。フリージャズやアンビエント、
ビートゆっくりめが多くなりがちだそうだ。

カル: 野村訓市さんのラジオ『Travelling Without Moving』みたいだね。

コロ: よく聴くそうだよ。音源も拾ったりするって。
基本、ラジオから音源を拾うことが多いそうだ。

カル: 夏の終わりのまったりしたこの時期だとなにがかかるのかな?

コロ: レゾナンスミュージックによるコンピレーションアルバム『bar buenos aires』。
タイトルがいいね。冒頭のスキャットがおセンチな気分にさせてくれる。
渋いとこだとグレッチェン・パーラト&リオーネル・ルエケの『Lean In』あたり。
これはピーター・バラカンの番組から拾ったんだって。

カル: いいね、グレッチェン・パーラト&リオーネル・ルエケのヴォーカルとギターは
昔のタック&パティみたいな味わいがあって、夏の終わりにぴったりだ。

コロ: 大阪っぽいところだと、キティー・デイジー&ルイスかな。

カル: たしかに楽しくて、大阪っぽい。

コロ: とにかく選曲が巧みなんだよ。
洗練されているというだけでなく、お店の空間づくりの主役っていうかな。
ベタなところもなければ、奇を衒ったところもない。

カル: あまりにオーナーの独りよがりだと、
飲んでいてだんだん引いちゃうし、酔いも覚めちゃう。

コロ: そうなんだ、その辺のさじ加減がいいのかもね。
エッジが効きすぎちゃうと、とんがっちゃうけど、
そのエッジをなめらかにサンディングするっていうか。

カル: なるほど、わかる。

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山下達郎を3曲連続!?

Page 3

コロ: 山下達郎さんを3曲続けたんだけど、
「AMAPOLA」→「BLUE VELVET」→「SO MACH IN LOVE」と全部アカペラ、
全部『ON THE STREET CORNER』シリーズからなんだよ。

カル: クリスマス時期ならともかく、たしかにありそうでない流れ。
1日1回はかけちゃうレコードってあったりするのかな?

コロ: ベン・ハーパーだとさ。中2のときに買って、
ミックステープに入れて女の子に渡したら、「気持ち悪い」って言われて(涙)、
それ以来、ミックステープは2度とつくってないそうだよ。

カル: 多感な年頃にかわいそうに。
レコードバーをやるのは、その復讐なのかもね(笑)。

コロ: それもこれも夏の終わりのおセンチなメモリーかな。

カル: 西日の差し込む夕暮れから飲み始めれば、さらにいいかも。
東横堀川の川面の揺らぎもいいし。ロケーションも最高なんでしょ?

コロ:  夏の終わりにぴったりなお店だね。
それもこれも〈Wharfedale〉のスピーカーから流れる、
店主の注ぐビールの泡のようなまろやかな音のおかげかもね。

information

map

yacipoci(ヤチポチ)

住所:大阪府大阪市中央区平野町1-1-1

営業時間:15:00〜22:00(L.O.21:30)

定休日:日・月曜、第2・第4火曜

Web:yacipoci

 

SOUND SYSTEM

Speaker:Wharfedale LINTON Heritage

Turn Table:Technics SL-1200MK7

Pre Main Amplifer:LUXMAN L-505uX

Mixer:Alpha Recording System MODEL 9100

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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