連載
posted:2023.6.13 from:岩手県盛岡市 genre:旅行
〈 この連載・企画は… 〉
ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。
writer profile
Akihiro Furuya
古谷昭弘
フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。
credit
photographer:深水敬介
illustrator:横山寛多
音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションも
岩手県盛岡市。
コロンボ(以下コロ): 盛岡の〈JODY〉っていうソウルバーがすごかったよ。
カルロス(以下カル): 〈JODY〉ってネーミング、
達郎さんの「悲しみのJODY」から来ているの?
コロ: いまとなってはそれでもいんだけど、
一応、マスターの澤田明伸さんが好きな、シャラマーのジョディ・ワトリーからだって。
カル: どっちでもいいのか、ゆるゆるだね(笑)。
コロ: そのゆるさが強み。
マスターの音楽人生はポール・マッカートニーで“産湯につかり”、
達郎さんでディスコに目覚めたそうだよ。
カル: 『ラバー・ソウル』のレコードがサウンドチェック用なんだってね。
それも90年代のリイシュー盤。
コロ: マニア的には60年代のUKモノラルがラウドでガッツがあるらしいんだけど。
カル: サウンドチェック的にはどこがポイントなの?
コロ: ポールのベースがガンガンに出ていればOKだって。
リイシュー盤はそれが顕著なんだよ。
カル: ポールには音源にライブと、お店を潰すほど貢いでいるらしいじゃない?
コロ: 90年から来日公演はすべて行ってるばかりか、
あの伝説の武道館のライブだって2回行ってるって。
カル: なんたって、当時(2015年)ですら、SS席は10万円だった。
コロ: ポールのおかげでお店の選曲も大きく変わったらしい。
カル: それ、どういうこと?
コロ: 「エイトデイズ・ア・ウィーク」がオープニングだった2013年のライブは
ビートルズ、ウィングスを含めてとにかくヒットパレードだったの。
それを観たマスターは目が覚めたらしいよ。
やっぱりメジャーな曲は楽しいなと痛感して、考え方を改めたんだって。
とっても素直。
カル: それまでは「もっと聴く音楽があるでしょ」って感じで、
レアものをかけて自己満足に浸っていた自分がいた。
「セプテンバー」とか「ザッツ・ザ・ウェイ」とか、
ダンクラ(ダンス・クラシック)とは距離を置いていたわけだ。
コロ: そのとおり! おかげでお店は、
デルフォニックス、コン・ファンク・シャン、バーケイズ、クール&ザ・ギャング、
シャラマーにギャップ・バンドと、毎晩がコテコテのパーティナイトなんだってさ。
カル: そりゃー、そんだけブッ込めば自然発生的に踊っちゃうよね。
そもそも岩手にソウルバーなんて、一軒もなかったんでしょう。
いまとなってはDJバーの走りみたいだね。
コロ: ステップで踏み荒らされた床の痛み具合を見ればよくわかる。
踊り倒しているんだなって。
マスターいわく、王さんの一本足打法の素振りの跡みたいだってさ(笑)。
カル: おまけに、なぜか天井も壊れてるんでしょ。
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コロ: そもそも、お客さんは40代から60代がメインだから、まあ、コッテリ系。
ソウルじゃなかったら、ドゥービー・ブラザーズだったり、
ローリング・ストーンズの「ミス・ユー」だとか、あくまでアゲアゲ。
カル: バラードとかはないの?
アイズレー・ブラザーズ「Between The Sheets」とか?
コロ: あまりかけない。かけてもミディアムバラードがいいところ、
BPM高めの選曲はマスターのテンションにも通じる。
カル: そうはいっても、ダフトパンクとかシルク・ソニックとはあるんでしょ。
コロ: あるある。若いお客さんには
「元ネタならいっぱいあるよ」って自慢するんだって(笑)。
カル: もはや奇をてらった曲はかけないんだね。
コロ: ポールの教えなんだって(笑)。奇をてらってはいないけど、
プロレス関係もヘビー・ローテーション。
カル: もちろん昭和のヒーローの入場曲でしょ。
ミル・マスカラスの「スカイ・ハイ」(ジグソー)だったり、
ザ・ファンクスの「スピニング・トー・ホールド」(クリエイション)、
ブッチャーの「吹けよ風、呼べよ嵐」(ピンク・フロイド)とかのメジャーどころ。
コロ: 大正解! マスターは全盛期からのジャイアント馬場がプロレスのヒーローで、
藤原喜明組長、大瀧詠一、小沢一郎が岩手三大偉人なんだってさ。
岩手三大投手は世界の大谷翔平、佐々木朗希、菊池雄星だとも。
カル: ………。
コロ: オープンして30年が経つけど、最近はというと、
ヘビロテはショッキング・ブルーの「ヴィーナス」。
そんでもって、犬の散歩ついでに中古屋で毎日買う日本盤の7インチに凝ってる。
洋楽だったり、邦楽だったり。
カル: 7インチにハマり出すと泥沼だけど、
散歩ついでのお店なら、そんなことないんでしょ。
コロ: たいがいは100円だって。
カル: それでも7インチだから音にガッツはあるんでしょ。
コロ: らしいよ。マスター自慢の
「デイトリッパー」(UKオリジナルシングル:MONO)には及ばないけど、
昔の7インチはクオリティが高いってさ。
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カル: それもお店でまわすんでしょ。
興が乗れば、ノンストップ・パワープレイでガンガンいくらしいじゃん。
コロ: 70年代ディスコはつなぎが命だからね。
カル: しかもシングルバージョンのほうがテンポも早くて、
まさにマスターの思うツボだ。
コロ: やっぱり昭和といえばガッツだから。
これ、まったく余談なんだけど、
1980年の山下達郎さんの葉山マリーナのライブのとき、
翌日のスポーツ紙で「興奮したファンがプールに落ちた」って
記事になったことがあって、
その興奮したファンというのがマスター。
カル: あの嵐の4時間ライブの!
行っただけでもすごいのにプールに落ちて記事になるなんて、最高。
コロ: でも、本当は落ちたんじゃなくて、先輩たちに落とされたんだって(笑)。
後日、達郎さんと話せた機会があって、
それを言ったら「あのときの君か!」っていわれたそうだよ。
information
soul bar JODY
住所:岩手県盛岡市菜園2-3-22 プラザバンベールビルB1
TEL:019-651-8108
営業時間:20:00~3:00
定休日:日曜
【SOUND SYSTEM】
Speaker:JBL4312
Turn Table:Technics SL-1200 MK3
Pre Main Amplifer:SANSUI AU-X111MOS VINTAGE
CD Player:Accuphase DP-60
Mixer:VESTAX PMC-40
旅人
コロンボ
音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。
旅人
カルロス
現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。
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