連載
posted:2022.12.20 from:東京都葛飾区 genre:買い物・お取り寄せ
〈 この連載・企画は… 〉
全国にはどれぐらいの商店街があるのだろう? シャッター通りとか地域の課題もあるけれど、
知恵と元気とみんなの協同で生き生きしている、ステキな商店街を全国行脚します。
editor’s profile
Maruko Kozakai
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
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撮影:水野昭子
〈商店街サンド〉とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチをつくってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。
今回やってきたのは東京都葛飾区。
葛飾区といえば、舞台となった漫画“こち亀”こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』や、
映画『男はつらいよ』からわかるように、人情味あふれる地域である。
そのなかでも今回は、立石・四ツ木エリアをぜひ取り上げたい。
なにせ私の地元なのである。
どちらかといえば、というかダントツで立石の方が有名で、
特に〈呑んべ横丁〉を代表とするいい感じの飲み屋さんが集まる、
お酒好きにはたまらないまちとして知られている。
その立石に行く前に、私の実家がある四ツ木も紹介させてほしい。
ひと昔前は本当に何もない地味なまちだったのだけど、
10年ほど前、かなり大きな変化が起きたのだ。それがキャプテン翼である。
キャプテン翼の作者である高橋洋一さんがこの辺りの出身ということで、
四ツ木駅がキャプ翼だらけに変わったのだ。
改札をくぐると天井で翼君がオーバーヘッドキックしていたりする。
子どもの頃、翼君に憧れてサッカーを習っていた私にはうれしい変化だ。
また、四ツ木から立石まで、あちこちに設置されている銅像もおもしろい。
キャプ翼はヨーロッパでも大人気なので、
一時はそれらしき外国人がわざわざ銅像巡りしに来る姿がよく見られたくらいだ。
翼君の「ボールはともだち」という言葉を信じて
小学生時代の私もサッカーの練習後はしっかりボールを磨いていたものだ。
あの頃は作者が同じ地元だとは知らずにいたんだよなあ。
そんなキャプ翼推しのエリアでイチオシは
地元の洋菓子屋〈パティスリーコトブキ〉さんがつくる〈キャプテン翼サブレ〉である。
だいたいの所がそうであるように、四ツ木の商店街も時代と共にだいぶ寂れてしまった。
はじめて訪れる人には「何もないな」という印象だろう。確かにそうだ。
しかし! 最近はオシャレなカフェや、
道路拡幅計画により外観がリニューアルしたお店がちょこちょこでき、
少しずつ生まれかわっているのだ。
熱烈なファンがいる老舗もまだまだ残っている。
うなぎの〈魚政〉や大衆酒場〈ゑびす〉、蕎麦〈松のや〉、割烹料理〈玉子家〉などなど。
この商店街サンドの企画の肝であるパンは、1950年開業の〈長楽製パン〉さんで買い求めたい。
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続いてサンドにはさむ食材を求めに、歩いて立石に移動。
そこでは今回の案内人である松野美帆さんが待っていた。
松野さんはむかし仕事で関わった仲だ。
そういえば地元が近所じゃん、と最近になってあらためて仲良くなった。
自ら各地で掘ってきたきれいな石を見せてくれたり、
手先が器用なのでこういった変なものをつくってきてくれるので会うのが楽しみな人だ。
立石の駅前商店街にはいくつか筋があって、どこも昭和感ただよういい雰囲気。
角にある立ち食い寿司や、もつ焼きで有名な呑み屋はいつも並んでいる。
ほかにもグラムで注文するお惣菜屋さんが軒を連ねていて、歩くだけでワクワクする。
四ツ木から消えてしまった八百屋や魚屋さん、お惣菜屋さんが立石には並んでいる。
隣の筋の〈立石駅通り商店街〉も歩こう。
こちらには100円ショップやおもちゃ屋さん、服屋さんなどが並ぶ。
松野さんによるとこのTateishi Tシャツは有名らしい。
運動好きにはうれしい速乾素材だし、1200円と安い。
私がジムで着ようかな、と悩んでいるとお姉さんが登場。
なんでも立石にはジムがめちゃくちゃ増えているらしい。
そういえばボクシングの内藤大助さんが所属していた〈宮田ジム〉も立石では有名だ。
八百屋さんにはそもそも野菜を買いに行こうと思っていたのだけど、
お姉さんが言うには果物もおススメとのこと。
「スイカが安くておいしいのよ~、私ならフルーツサンドつくるな!」
なるほど……!
さすが立石だ、食材の調達にまったく困ることなく買い物完了。
なお、いま周ったのは、駅を降りて南側。
線路をわたり、再開発が進んでいる北側にも行ってみよう。
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見慣れていた立石一帯の踏切は、高架化していくので無くなる予定だそうだ。
隣の青砥駅から電車が急カーブで曲がってくるところが撮り鉄に人気だが、
いずれは見られなくなってしまう。
だいたいこの辺りまでが取り壊されちゃうみたいですよ、と松野さんが教えてくれるのだが、
現実味がない。
若鶏唐揚げで有名な〈鳥房〉は?
私の大好きな焼肉屋〈牛坊〉は? どうなってしまうのだ……。
というか既に、跡形もないエリアがあって、
ジワジワと昭和が消えて行っているのがわかる。
目に焼き付けるように練り歩いた。
立石には独自ルールがあって緊張しちゃう居酒屋も多いけど、
こうやって気軽に入れるノリのいいお店もたくさんある。
今のうちにいろいろのぞいておかなきゃな。
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つくる場所を考えていなかった、と伝えると、
急遽松野さんのお店の庭を使わせてもらえることに。
今回は、洋品店のお姉さんのアイデアも取り入れて2パターンつくってみる。
ご飯系は小堺が担当、フルーツサンドは松野さん担当だ。
チーズと赤い生姜のおかげで彩り美しくできた。
毎度のことながら欲張って盛りだくさんではあるが、
おいしさが100%保障されているといっていい見た目だ。
さて、フルーツサンド担当の松野さんのほうはどうだろう?
フルーツによってはつくっている間に変色していってしまう。
それにフルーツは水分たっぷりなので、
そのままパンにはさんでしまうと果汁がパンに吸い込まれてなんとも残念な食感になる。
でも、ホイップクリームがクッションになってくれて、おいしくいただけるわけだ。
食べる前から確信していたけど、すごくおいしい……。
甘辛いじゃがいもも、チーズも、生姜天のピリッと感も、ハムかつも、野菜たちも、
パンも、まるでチームメイトのように協力しあっている。
キャプテン翼で例えるならば、
じゃがいもは、キラキラと輝きみんなを魅了する我らがストライカー大空翼。
生姜天は、個性が強く好きな人にはたまらないパワー系の日向小次郎。
ハムかつは、ほかのメンバーのアシストが上手で安定感のある岬 太郎。
生野菜たちは、脇役ではあるものの、なくてはならないチームの盛り上げ役、石崎 了。
そして大きいチーズパンは、
試合全体を見渡しメンバーをまとめる天才ゴールキーパー、若林 源三といったところか。
(小学校時代にアニメで見たときの印象だけで書きました)
自分でつくると好きなだけフルーツを入れられるのがたまらない。
さらに私はシャインマスカットをいくつかほおばってから食べた。
スイカとマスカットのすっきりとした甘さとホイップの柔らかな甘さ……
まるで立花兄弟のように息が合った連携プレーじゃないか。
はじめてスカイラブハリケーンを見たときのような感動を覚えた。
長楽製パンで買っていた生食パンもものすごく合う。
翼君は事あるごとに「ボールはともだち」と言っているが、
この商店街サンド企画においては「パンは友達」と言い張っていこうと思った。
今回の案内人、松野さんにも感想をいただいた。
「「せんべろ」「東京の酒都」「モツニーランド」などなど、
どうしても外の人からは吞兵衛ワードしか出てこない立石で、
こんなにおいしくて映えるサンドができ上がるなんて!
普段当たり前に過ごしていた我がまち。
あらためて紹介することで、まち並みの変化やお店の方との他愛ない会話、
そして何より地元愛溢れるレシピとの出合い……
大切にしたいことの気づきをたくさん得られたと思います。
お声がけありがとうございました!
(旧制が若林だったので、親戚一同あだ名が「源三」だった松野より)」
・長楽のパン(ダブルチーズパン、生食パン) 788円
・愛知屋のハムカツ 90円
・生姜天 130円
・玉起屋の新じゃが煮 100g 160円
・ベアー青果のレタス、キュウリ、スイカ、シャインマスカット 2000円
・ヨークフーズのホイップ 267円
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合計 3435円
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