〈 この連載・企画は… 〉
ひとつの商店街(地域)をねり歩きながら、パンと具材を集めて勝手にサンドイッチを作る旅。
そこでしか食べられないオリジナルなサンド、果たしてどんなものができるのか?
writer profile
Kozakai Maruko
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
「商店街サンド」とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチをつくってみる企画。
必ずといっていいほど美味しいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる一石二鳥の企画なのだ。
今回は埼玉県の南端、川口市にやってきた。
人口は、なんと鳥取県を超える59万人(2015年5月現在)。
鋳物と植木と太郎焼と、昔SMAPにいた森くんが出ている
川口オートレース場で有名なまちである。
さて、第5回目となる商店街サンド、今回はイレギュラーな態勢だ。
これまでは、まちに詳しい方と2~3人で回ってつくっていたのだけど、
今回は大勢でトライすることになったのだ。
「川口メディアセブン」という施設の方から
「子どもたちと一緒にワークショップとしてやってみたい」とお声をかけていただいた。
当日の参加者は15名。いったいどうなっちゃうんだろうか。
ワークショップの講師、ということで呼ばれていたので
自己紹介と、この単純明快な商店街サンドのやり方を説明した。
問題なのはこの人数をどうやってまとめるかである。
しかし、そこは普段からワークショップなどのイベントを開催しているメディアセブンだ。
スタッフさんたちが手際よく3つのチームに分け、それぞれに同行スタッフを配置してくれた。
商店街の入り口にあったパン屋さんの前で、各チームに分かれることに。
また1時間後に公園に集合し、そこでサンドイッチづくりをする段取りになった。
それにしてもすごいのが、この短時間の間で子どもたちが打ち解けていることだ。
ついさっき知り会ったばかりなのにもう親友みたいだ。
ワークショップには女の子もたくさん参加していたのだけど、
私が一緒になったのはみんな男の子。ひとりはお母さんも一緒だ。
さっそく「ほうげつ堂」というパン屋さんで食パンを購入した。
子どもたちは、親からだいたい千円のおこづかいを貰ってきていたようだ。
その金額のなかでどうにかサンドイッチをつくらねばいけないので
節約にとみんなでお金を出し合い食パン一斤を買っていた。なるほど……。
大勢でやると分け合えるのだ。きちんと計算している姿に偉いなあと感心する。
しかし、さっきから「もしお金がなくなっちゃっても最終兵器がある」と
子どもたちが笑っているのが気になる。
最終兵器とはなにかと聞くと、私たちおとなのことだった。
私たちの財布が狙われているのだ。計算しすぎである。
ここからは、気になるお店があったらみんなに声をかけ、
買うのを待ってもらうという方針で進むことにした。
休日の昼前だが、駅前ということもあって商店街はとても賑やか。
川口市は鋳物で栄えたまちなので、
商店街にはあちこちに金属製のオブジェが見られて面白い。
Page 2
まっすぐに伸びた商店街は、チェーン店も混じえながらも
昔からあるようなお惣菜屋さんや八百屋さんが豊富であった。
私たちが狙っているお惣菜屋さんや八百屋さんは、どこも大盛況だった。
どれも美味しそうで、ビックリするほどお買い得な値段。
それにしても、である。
私の知る八百屋は行列までできないのだ。
まち歩きはそれだけでも発見があって楽しいが、
今回は子どもの発想が自由でいっそう面白い。
タカアキ君という子が
「お肉(フライドチキン)を買ったのでバランスを考えて野菜を入れたい」と
しっかりしたことを言うので、なにかレタスとかキャベツでも入れるのかと思っていると
また別のお惣菜屋で「かき揚げ」を買っていた。
フライドチキンにかき揚げでアゲアゲだ。
果たしてそれがバランスいいのかはわからないが
いちおう野菜が入ったので本人は満足気である。
タカアキ君はさらに
「バランスを考えてお魚系も入れたい」と言って
定食屋チェーン「やよい軒」のメニューを見ながら
「このお味噌汁の中に入ったアサリもらえないかな」とつぶやいていた。
万が一もらえたとしてもサンドとしてどうなんだそれは。
ぜひ味のバランスも考えてほしいな、と思う。が、すべては勉強である。
制限時間は1時間と短かったのだけど、
子どもたちの決断は意外と早く、食材選びはスムーズにいった。
最後はお金も時間も少し余裕があったので、
八百屋に並びキュウリや食後のミカンを買う余裕も見せていた。
最終兵器としての出番は訪れず。助かった。
Page 3
商店街の並びにちょうど公園があり、
そこでみんなでサンドイッチをつくることにした。
メディアセブンのスタッフの方たちがお皿やお手ふき、
ナイフなどを用意してくれているのでいつもよりもスムーズにつくることができた。
はてさて一体どんなサンドができるのか?
女の子すごい、色合いがすごく可愛らしい。
茶色系になりがちなお惣菜に大根のピンクの漬物とチーズを乗せることで
全体的に明るく、春らしいサンドに。
まさかひじきがオシャレに見えるようになるとは思わなかった。
こんな感じで、みんなに分けてもらったことで盛りだくさんのサンドになった。
まるで太郎焼のあんこを彷彿とさせるギッシリ感。
そこには子どもたちが大好きなチョコレートやミカンといったおやつもこっそり乗っている。
かぶりついてみると、商店街に並んでいたお惣菜たちが総力で美味しい攻撃をしかけてきた。
バランスを求めたタカアキ君のおかげで肉も野菜も魚もバッチリ摂取。
右上に突き刺さったメザシが、川口の職人がつくった鋳物かのように固く、堂々としていて、
最後まで存在感が強かった。
食後はひとりずつサンドに命名して感想を言い合った。
同じチームのひとりが「宇宙みたいな味でした。総理に食べさせたいです。」
と言っていたのが印象的。なんて壮大なコメントなんだ。
子どもたちがお金を計算したり、お店の方と接したり、
仲間と食材をわけあったりする姿を見ていたら、
商店街サンドは社会を知るいい機会でもあるということが分かった。
そして「お金、時間、食材のバランス」という制限があることで
ゲーム感覚になっていたようで「買い物が超楽しかった!」と言ってくれたのが嬉しかった。
今回の川口市のように
他のまちでもどんどん商店街サンドをしてくれたらなと思う。
自分の住んでいるまちがもっと好きになるはずなのだ。
・ほうげつ堂のパン 81円
・まのり家の焼き鳥
・ハッピーミールのスパゲティ、ソース、フライドチキン、フライドポテト
・マルサヤのかき揚げ
・おかしのまちおかの焼めざし、チョコレート
・八百屋のトマト、キュウリ、ミカン
・角煮(お店不明)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
合計 分けてもらったので不明
Post from RICOH THETA. -- Spherical Image -- RICOH THETA
Information
川口駅前商店街
住所:埼玉県川口市栄町
http://www.k-ginza.com/
Feature 特集記事&おすすめ記事