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Aloha Amigo!
フェデリコ・エレロ×関口和之

ローカルアートレポート
vol.028

posted:2012.10.29   from:石川県金沢市  genre:アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  各地で開催される展覧会やアートイベントから、
地域と結びついた作品や作家にスポットを当て、その活動をレポート。

editor's profile

Ichico Enomoto

榎本市子

えのもと・いちこ●エディター/ライター。生まれも育ちも東京郊外。得意分野は映画、美術などカルチャー全般。でもいちばん熱くなるのはサッカー観戦。

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編集協力:村田大輔(金沢21世紀美術館)
撮影:喜多直人
メイン画像:「Aloha Amigo! ウクレレサミット」でフラを披露するNa Lei Pualani Hula Studio

美術館で行われるウクレレプロジェクト。

金沢21世紀美術館で開催されている「Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之」。
2012年5月3日から2013年3月17日にわたり開催されているこのプログラムは、
同美術館が行っている「金沢若者夢チャレンジアートプログラム」の一環。
18歳から39歳までの若者に、ワークショップなどを通じて
芸術活動への参加の機会を提供するプロジェクトで、個性豊かなアーティストを招聘し、
長期にわたり地元の若者たちとの協働によって作品を制作していく。
昨年度はイギリスの若手アーティスト、ピーター・マクドナルドを招聘して
制作と展示をしたが、今回はなんとウクレレがテーマ。
サザンオールスターズのメンバーでウクレレ奏者として有名な関口和之さんと、
コスタリカ出身の美術家フェデリコ・エレロのコラボレーションにより、
音楽と美術の世界が融合したプロジェクトを展開している。

それにしても、美術館のプロジェクトでなぜウクレレ? 
このプログラムを企画したキュレーターの村田大輔さんは
「関口さんという、ウクレレの演奏活動のみならず、
ウクレレを通して人々の和を創出してきたアーティストに注目しながら、
音楽の演奏行為にプロジェクトの軸を据えました。
人が音を奏でるという行為と造形芸術も含めた芸術表現の本質を関連づけ、
その意義を考察することが目的です」という。
関口さんいわく、ウクレレは習得しやすく、かわいらしく、
そしてコミュニケーションのツールとして文化を超えて浸透してきた楽器。
楽器を手にし、音を奏で、聴き、自らの身体や意識を再発見するなかに、
重要なものが秘められているのではないかというのが、このプロジェクトの趣旨だ。

エレロは、金沢21世紀美術館とまちをつなぐ「アートバス」の
ボディのデザインも手がけていて、美術館とは密接な関わりがあった。
彼ならウクレレ音楽の世界をうまく空間に表現してくれるのではないかと相談したところ
「自分の表現は音楽的で、開かれていて、
こうしたプロジェクトをやってみたいと思っていた」と快諾。
そこから関口さんとのやりとりが始まり、本格的にプロジェクトがスタートした。
自分の故郷であるコスタリカ、関口さんが活動しているハワイ、
そして日本に共通する「火山」をモチーフとし、巨大なステージ状のオブジェを創出。
この展示空間は《サイコトロピカル・ランドスケープ》と名づけられ、
現在、アーティストと鑑賞者、そしてプロジェクトのメンバーをつなぐ場所となっている。

展示空間でもありステージともなる《サイコトロピカル・ランドスケープ》。エレロの作品は、金沢21世紀美術館に所蔵もされている。

音楽がつなぐ人と人。

このプロジェクトに参加しているメンバーは46名。
彼ら、彼女らは展示室でウクレレを奏で、鑑賞者にウクレレを教える
「ウクレレフリーステージ! 誰でもウクレリアン」プロジェクトを毎日行っている。
鑑賞者は聴くだけでなく、自ら演奏することもできるのだ。
そこでは日々、自然とコミュニケーションが生まれることになる。
日々の体験プログラムのほか、メンバーは毎月定期的に練習会を開き、
演奏会も行っている。展示室だけでなく、湯涌温泉や近隣の老人保健施設でも
コンサートを開催するなど、美術館の外に出た活動を展開中だ。
メンバーたちは、このプロジェクトのなかで
自信と誇りを得ている、と村田さんは感じている。
「鑑賞者とともにメンバーたちもウクレレを楽しみ、自らも何かを学んでいます。
あるメンバーが、“ここは音楽教室ではない。少々音が外れていても、
リズムがおかしくてもオッケー”と言っていたのがとても印象的でした」

自由にリラックスしてウクレレを体験してもらい、音を奏でる楽しみを知ってもらう。

さる8月26日に、「Aloha Amigo! ウクレレサミット」が開催された。
美術館の広場に特設されたステージに、プロアマ問わず
19組のウクレレバンドやフラチームが登場し、多くの来場者がその音色を楽しんだ。
関東から「U900」「JazzoomCafe」「岡田央」など
日本を代表するようなウクレレバンドが参加したほか、
地元の病院スタッフによるグループや、メンバーがふだん活動しているバンド、
子どもたちによるウクレレオーケストラなどが出演。
終盤には、関口さん率いる「関口和之バンド」が登場して、会場を楽しく盛り上げた。
最後はメンバーによる演奏。「幸せなら手をたたこう」をサンバ風にアレンジした、
Aloha Amigo!オリジナルの「幸せのAloha Amigo!」で幕を閉じた。

メンバーの表情はとても楽しそうで、終了後の
「音楽ってこんなに楽しいんですね! もっと演奏し続けたかった!」
というメンバーの言葉が忘れられない、と村田さん。
今後も、メンバーによるウクレレステージやさまざまなワークショップが開催される。
もちろん「ウクレレフリーステージ! 誰でもウクレリアン」は会期中、閉場日を除き毎日開催。
美術館で楽器を介して行われるプロジェクトに、今後も注目だ。

「手のひらを太陽に」「南の島のハメハメハ大王」など、おなじみのメロディも。

天気にも恵まれ、芝生の上でリラックスしながら楽しむ来場者たち。晩夏の夕暮れは気持ちいい。

関口和之バンドのステージでは口笛奏者の分山貴美子さん(写真右)による口笛の吹き方講座も。

information

map

Aloha Amigo!
フェデリコ・エレロ×関口和之

2012年5月3日(木)~2013年3月17日(日)
金沢21世紀美術館 10:00〜18:00(金・土は20:00まで)
「ウクレレフリーステージ! 誰でもウクレリアン」は連日14:00~15:00に開催
(当日先着20名、13:30より受付)
撮影:池田ひらく
http://www.kanazawa21.jp

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