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「雑誌『オリーブ』のクリエイティビティ」展

ローカルアートレポート
vol.009

posted:2012.6.27  from:石川県金沢市  genre:アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  各地で開催される展覧会やアートイベントから、
地域と結びついた作品や作家にスポットを当て、その活動をレポート。

editor's profile

Ichico Enomoto

榎本市子

えのもと・いちこ●エディター/ライター。生まれも育ちも東京郊外。得意分野は映画、美術などカルチャー全般。でもいちばん熱くなるのはサッカー観戦。

credit

編集協力:高橋律子(金沢21世紀美術館)
写真提供:金沢21世紀美術館

金沢で、オリーブ的感性にふれる。

金沢21世紀美術館のデザインギャラリーで、
いま「Olive 1982-2003 雑誌『オリーブ』のクリエイティビティ」が開かれている。
『オリーブ』は、1982~2003年にマガジンハウスが発行し、
「オリーブ少女」とよばれる多くのファンを生み出した伝説的な雑誌。
美術館で雑誌の展覧会とはちょっと珍しいのだが、
この企画展は学芸員の高橋律子さんの熱意によって実現したもの。
もともと「金沢湯涌夢二館」という竹久夢二の美術館の学芸員をしていた高橋さんは、
大正時代、夢二の絵が掲載された雑誌を見た少年少女たちのあいだで
「夢二式」が大流行したことから、雑誌とファッションやカルチャーの関係を考える、
この企画を思いついたそう。

高橋さん自身、高校生の頃『オリーブ』を愛読していて、
「自分の人生を振り返ってみると、夢中になって読んでいた『オリーブ』という雑誌が、
自分の感性をつくってくれたと思っています。
そして、その『オリーブ』で培われた感性が、
クリエイティブな仕事に就きたいという夢にもつながっていたり、
仕事に生かされると感じる場面が多くあります。
そして、同じように感じている元オリーブ少女は
決して少数ではないという確信がありました」という。

展覧会のアートディレクションは、『アンアン』の立ち上げに関わったほか、
『オリーブ』など多くの雑誌のアートディレクターを務めた新谷雅弘さんが担当。
高橋さんは『オリーブ』という雑誌そのものを見せたいと考え、バックナンバーを収集。
最終的に8冊足りないものの、434冊を集め、会場で閲覧できるようにした。
雑誌がボロボロになってしまうのではないかという懸念もあったが、
すでに3万人以上の来場者があるのに、みんなていねいに扱ってくれて、
その愛情のありようがうかがえるという。

反響もとても大きく、遠方から足を運ぶ人も多い。
「展覧会のついでに、金沢のおいしいお寿司を食べたり、まち歩きをしたり。
その発想こそが『オリーブ』っぽいように感じています。
『オリーブ』がきっかけで、金沢のまちの楽しさを感じていただけているようです」
と高橋さん。
もちろん、地元のファンも多くつめかけ、しかも何度もリピートするという現象も!
「先日、スタイリストの大森伃佑子さんが立ち上げられたブランド
『double maison』の展覧会で、フォトグラファーのシトウレイさんにお会いしました。
そのとき初めて知ったのですが、石川県出身のシトウさんも、
地元で憧れながら『オリーブ』を読んでいた女の子のひとりだったそうです。
金沢にも多くのオリーブファンがいたんですね」

442冊のうち、434冊のバックナンバーを集め、来場者に自由に読んでもらえるようにした。

本物のアートディレクターによるデザインワークショップ。

4月14、15日には、新谷さんによる「『オリーブ』流 雑誌デザイン・ワークショップ」
が開かれ、2日間のワークショップに15人が参加した。
1日目の午前中は、新谷さんによる「雑誌デザイン」についての講義。
雑誌はページをめくるたびに世界が変わっていくので、
見開きごとに世界観を伝えられるようなデザインをすることが大切、と新谷さん。
参考として、マガジンハウス時代のデザイン原稿と、
アメリカ旅行のスクラップブックも披露してくれた。

午後からは、いよいよレイアウトの作業。A3の紙の中央にA4サイズの枠をつくり、
そのなかに、見開き2ページをつくる。
レイアウトといっても基本は切り紙。色紙や包装紙を手でちぎりながら貼っていく。
こうすると、絵が苦手な人でも、それなりにかたちがつくれるのだそう。
参加者たちは思い思いにページをつくっていく。

B2サイズほどもある大判のスクラップブックには、たくさんの写真、切符や包装紙、そして新谷さんのコメントがぎっしり詰め込まれていて、雑誌そのもの。

新谷さんの見本レイアウト。切り紙にしたのは新谷さんのアイデア。枠の周囲には、全体のイメージやイラストの指示など、細かいことを書き込んでいく。

2日目も前日に続き、レイアウト作業。
それぞれが読みたいページをつくり上げ、
「元オリーブ少女の夏休みの過ごし方」
「お誕生日にしたい5つのこと」
「新谷雅弘さんへの100の質問」
「わんぱくキッズのスニーカーコレクション」
「シャンソンを歌おう」
「山へ行こう! 準備の基本教えます」などなど、面白そうな企画がいっぱい。

そして午後からは本に仕上げていく作業。
みんながつくったページが、1冊の面白い本になるように
新谷さんが構成を考え、製本していく。
製本といっても、大判セロテープでページをつなぎあわせていくという、
新谷流の大胆なつくり方。
全ページを人数分コピーし、それぞれが大判セロテープで製本し、
それを持ち帰ることができる。
手づくりの楽しさがたくさんつまった1冊を手に、参加者たちは笑顔で帰っていった。

かつてオリーブ少女だった人や、いまもオリーブ的感性を持った人が、
金沢という地で出会う、クリエイティビティあふれる展覧会だ。

全ページを床一面に並べ、新谷さんがページ構成を決定。読者が飽きることのないように、アートディレクターの視点で考える。

東京や名古屋から参加した人や、デザインや編集に携わっている参加者も。刺激的で楽しいワークショップとなった。

information

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Olive 1982-2003
雑誌『オリーブ』のクリエイティビティ

2012年2月25日(土)〜2012年7月1日(日)
金沢21世紀美術館デザインギャラリー
住所 石川県金沢市広坂1-2-1 TEL 076-220-2800
10:00〜18:00(金・土は20:00まで、月曜休館)
http://www.kanazawa21.jp

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