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滝川の隠れ名店〈鮨 おくの〉。
ひと手間かけた抜群のおいしさ

おでかけコロカル|北海道・道央編

posted:2016.9.9   from:北海道滝川市  genre:旅行

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

photographer profile

YAYOI ARIMOTO

在本彌生

フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp

writer's profile

Akiko Yamamoto

山本曜子

ライター、北海道小樽生まれ、札幌在住。北海道発、日々を旅するように楽しむことをテーマにした小冊子『旅粒』発行人のひとり。旅先で見かける、その土地の何気ない暮らしの風景が好き。
旅粒
http://www.tabitsubu.com/

credit

supported by 北海道観光振興機構

繊細な姿で現れた真イカの握りは、思わず目を奪われる美しさ。
ていねいに包丁を入れた真イカに特製のタレのあとゴロをひと塗り、
仕上げは柚子七味。柔らかなイカにゴロの風味がふわりと香る、
見た目に違わぬおいしさです。

かつて炭鉱で栄えたまちに囲まれ多くのひとが行き交った、
札幌から北へ車で約一時間の距離にあるまち、滝川市。
今も飲み屋が多い滝川の中心部にあるアーケード街の一角、
広いアプローチに真っ白なのれんが目印の〈鮨おくの〉には、あたたかな光が灯っていました。

北海道産のタモ材を使用したカウンターは、友人である札幌の木工作家〈cogu〉が仕上げに手を貸してくれたそう。椅子やテーブルは飛騨家具〈柏木工〉のもの。

カウンター席とテーブル席とに分かれた店内は余白を感じられる空間。
真っ白な壁と木のトーンが、しっとりと落ち着く雰囲気をつくりだしています。
お店をひとりで切り盛りするのは若き店主、奧野恒康さん。
滝川市内の〈寿司本おくの〉二代目でもあり、
来たる代替わりの準備として2015年に独立、鮨おくのをオープンしました。

お任せ握り6種と酒肴5種の〈お任せコース〉(3800円)をはじめ、
〈お任せ握り〉(1貫150円〜)と〈酒肴〉(1種500円〜)を組み合わせて
厳選されたお酒とともに楽しむことができます。

左からサバの燻製、イワシとトマトの南蛮漬け、北海シマエビに黄身酢かけ。素材のおいしさを引き出す、隙のない技が光ります。

鮨おくのは、江戸前ならぬ“いいとこ取りの蝦夷前”と称する独自のスタイル。
素材そのままではなくひと手間をかけて、
素材のおいしさを引き立せることを大切にしています。

「江戸前寿司のような、手をかけて一貫を
ひと料理にするという感覚でやっていきたい」
と話す奥野さんの握りや一品料理は見た目も美しく、
後味にまでおいしい余韻が残ります。

ふんわりと上品なホッケのつみれ汁。訪れた7月上旬は道南の松前産を使用。お出汁もしみじみおいしい。

ひと品ごとを引き立てるうつわにも注目。やわらかな質感の古い汁碗は、
なんとオークションで奥さまとともに見極めたものだそう。
使う側、盛る側両方の目線から選んでいるうつわや料理のお話を伺いながら、
ついついお酒が進みます。

左2本が鶴沼ワイナリーの白。左から〈鶴沼ピノ・ブラン〉(グラス750円)、〈鶴沼ミュスカ〉(同950円)、右は〈北海道ケルナー〉(同650円)。

お酒のメニューにある白ワインは、奥野さんが出会ってそのおいしさに驚いたという、
同じ空知地域で浦臼町の〈鶴沼ワイナリー〉からお鮨に合う3本を厳選。

こだわりの日本酒(冷酒 400円・燗酒1合 750円)は純米吟醸酒や特別純米酒のほか、
乳酸発酵させた酒母の中から酵母を育む伝統製法“生酛造り”の生酛純米酒も。
隣町新十津川の金滴酒造前杜氏さんがつくられた山廃純米酒〈金滴 熟成酒〉の
絶妙なまろやかさは、ぜひ味わいたい一杯です。

ひと目で美味しさの伝わるマグロ。奥野さんがあつらえている醤油だれの風味とともに、口の中でほどけるよう。

「試作をつくっていると、素材に対する手数は3手になると多すぎるんです。
付け足した味にしかならない。1、2手で決めて、それでおいしかったら一番いいですね」

自分の体験から素材との間合いを計り、おいしさを追求している奥野さん。
「店をやっていくなかで軸にしているのは、まわりを気にせず、
好きなようにやるということ。それができるのが田舎の利点だと思っています」

カステラと見まがうふんわり美しい卵焼きは、大人な甘みがデザート感覚。

持ち帰るのがうれしくなるようなデザインの折詰(9貫2100円+折代100円)パッケージを始め、お店のロゴなどを手がけるのは札幌出身のイラストレーター、サトウアサミさん。

奥野さんの奥さまは、〈SANCHOS JAM〉の名義で
ひっそりとジャムづくりを続けるオクノサオリさん。
素材選びのセンスとおいしさとでファンの多いサオリさんのジャム。
現在は札幌にある北欧雑貨店〈piccolina〉で、月替わりのジャムが限定数販売されています。

奥野さんは大学卒業後、札幌で5年半の修行期間をへて、実家である寿司店に戻ります。
学生時代は跡を継ぐことを考えていなかったものの、
卒業間近にサラリーマンになるタイプではないと気づき、寿司屋の道に入りました。

凛とした雰囲気の若き店主、奥野恒康さん。子どもの頃から板前のお父さんの隣で包丁を使うのが好きだったそう。

料理はもとより、お店のすみずみにまで
洗練されたセンスが感じられる鮨 おくの。
滝川のまちに泊まってゆっくりと夜に訪れたい、そんな名店です。

information

map

鮨 おくの

住所:滝川市栄町3-4-5

TEL:0125-24-1818

営業時間:18:00〜24:00

定休日:日曜日

※駐車場 あり

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