odekake
posted:2016.8.30 from:北海道小樽市 genre:旅行
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
photographer profile
YAYOI ARIMOTO
在本彌生
フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp
writer's profile
Akiko Yamamoto
山本曜子
ライター、北海道小樽生まれ、札幌在住。北海道発、日々を旅するように楽しむことをテーマにした小冊子『旅粒』発行人のひとり。旅先で見かける、その土地の何気ない暮らしの風景が好き。
旅粒
http://www.tabitsubu.com/
credit
取材協力:北海道観光振興機構
日本海に面した小樽の北西部にある漁師町、 祝津(しゅくつ)発祥、
カラリと揚げたニシンに特製の甘辛タレがからむ、
漁師さんおなじみのおかずをどんぶり仕立てにしたメニューです。
ニシンの豊漁を意味する〈群来〉は、この地の歴史そのものを物語る言葉。
かつて江戸時代末期から大正時代にかけて、祝津をはじめ、
小樽から稚内にかけての北海道の日本海側にはニシンが大量に押し寄せました。
その記憶を今に留め、2010年に復活した、
祝津のランドマーク〈茨木家中出張番屋〉(いばらきけ なかでばりばんや)で、
浜のかあさんと一緒に群来太郎丼をつくり、
ニシン漁の歴史に触れながら味わう体験メニューを楽しむことができます。
主催しているのは、この番屋の修復に携わり、
現在は番屋の運営とともに祝津の地域おこしを手がけている
NPO法人〈おたる祝津たなげ会〉のみなさん。
浜のかあさん、加藤明子さん、佐野信子さんのおふたりに教わりながら、
群来太郎丼とともに、ここ祝津地域で40年来養殖されているとれたての
ホタテ刺身、ホタテ稚貝の味噌汁づくりがスタート。
このあたりでとれるニシンの旬は、1〜3月の厳冬期。
群来太郎丼には、旬のニシンをとってすぐにおろし、保存したものを使っています。
「祝津の夏の旬はヒラメ。冬場はアンコウもとれますよ。
磯周りの漁師さんはウニやアワビが主ですね」
気さくなかあさんたちの家業はそれぞれ漁師。
下ごしらえの済んだ材料を使い、
祝津の特産のホタテ漁や、魚料理のお話をうかがいながら、
ニシンを揚げ、まだ生きているホタテをさばいていきます。
現れたホタテの身は、ぷくぷくと立派な大きさ!
完成した漁師ごはんセットをおいしくいただきながら、
おたる祝津たなげ会の青山政嘉さんに、
この番屋やニシン漁の歴史について教えてもらいます。
ニシンが最高の水揚げを記録した1897年、その漁獲高は約100万トン。
これは、当時国内の総漁獲高の6割を占めるという、想像を絶する豊漁です。
「大量のニシンは、その半分がニシンかすになり、
綿花や藍、畑の肥料として本州へ向けて出荷されていたんですよ」という意外な歴史も。
明治末期、祝津の三大網元に数えられた茨木家が建てたこの番屋は、
ニシン漁の漁夫たちが寝泊まりする暮らしの場でした。
長く使用されず損傷が進み、一時は取り壊しの危機にありましたが、
地域住民をはじめさまざまな人たちから保存のための活動がおこり、
2009年、修復へ向けて動き出します。
黒光りする床板やネダイと言われた寝床や天井に渡された梁など、
できる限りもともと使われている資材が生かされ、
番屋は2010年の夏、見事によみがえりました。
現在は地域のコミュニティーセンターとして、
地元産の旬の海の幸をランチにして提供する〈おさかな市〉や
地域の子どもたちに向けた〈食育番屋〉などさまざまなイベントが行われ、
ニシン漁の歴史や祝津の文化を伝えています。
かつて漁夫の活気にあふれていた番屋が、まちのにぎわいの新たな拠点へ。
「たなげ」とは“みんなで持ち上げる”という意味の古い浜言葉です。
「たなげ会の活動は浜のかあさんたちをはじめ、
漁師さんや地域の人たちの協力があってこそ。
今後はこの活動を引き継ぐ若い人を育てていきたいですね」
青山さんはそう語ってくれました。
42もの漁場建築が残る祝津地域。
港を見下ろす高台には、北海道の有形文化財に指定されている
〈小樽市鰊(にしん)御殿〉(入場料 一般300円)が威風堂々の姿を見せています。
また、番屋から歩いて行ける〈おたる水族館〉も隠れた人気スポット。
地元の素材と地元のレシピが生きた漁師ごはんとともに
北海道ならではのニシン漁の歴史にふれたあとは、
祝津のまちをゆっくり散策してみるのもおすすめです。
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おたる祝津たなげ会
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