odekake
posted:2016.8.24 from:北海道余市郡余市町 genre:旅行
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
photographer profile
YAYOI ARIMOTO
在本彌生
フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp
writer's profile
Akiko Yamamoto
山本曜子
ライター、北海道小樽生まれ、札幌在住。北海道発、日々を旅するように楽しむことをテーマにした小冊子『旅粒』発行人のひとり。旅先で見かける、その土地の何気ない暮らしの風景が好き。
旅粒
http://www.tabitsubu.com/
credit
取材協力:北海道観光振興機構
小樽から車で30分ほどの余市は、おだやかな海と見渡す限りの畑、
果樹園にかこまれた豊かなまちです。ニッカウヰスキーや新鮮な魚介類の並ぶ、
市場のある中心部から積丹方面へ進んだ、海を見下ろす緑あふれる丘の上。
「ここに宿が?」と驚く細い坂道の先に、木々と広い空にかこまれた大きな一軒家が現れます。
〈ゲストハウス はれるや〉は、ご夫妻で営む一日ひと組だけの”療養型民宿”。
旦那さんの高橋由人さんが台湾式足もみを、奥さまの尾崎サトコさんが
ここ余市ならではの食材を使った食事を担当しています。
ゲストルームは、ご夫妻の住まう母屋に廊下でつながった離れの建物。
くつろげるリビングと、緩やかに隔てられた小さなベッドルーム、
木々の見える大きな窓が開放的なバスルームがあり、
海を見下ろす広い庭へ出て過ごすこともできます。
静かなロケーションが心地よい一軒家は、釣り好きだった尾崎さんのお父さまが建てたもの。
札幌生まれの尾崎さんは23年前、ここに住み始めます。料理が好きで、
フランス料理をはじめ、ローフードや精進料理など幅広い教室に通ってきた尾崎さんは、
いずれ小さな民宿を開きたいという思いをあたためていたそう。
そして同じく札幌生まれの高橋さんがここへ移り住んだ理由は、まさに、療養のため。
東京でファッションの仕事や飲食店のディレクションなど幅広く活躍した高橋さんは、
50歳のとき悪性リンパ腫と重度の糖尿病を患いました。
その前に偶然興味をもち資格をとっていた台湾式足もみの診察経験から、
西洋医学ではなく、食事療法をはじめとした自然療法を選びます。
海と緑、そして川にかこまれ自然の力を感じる暮らしと高橋さんの強い意志が、
なんと3年で完治させたと言います。
「命が助かったから、これから何をやろうか? と思ったとき、
自分のように体を壊してしまった方たちにこの家へ来てもらって、
滞在しながら治療もできる“療養型民宿”を始めることにしたんです」
ふたりの思いが重なり、ゲストハウス〈はれるや〉は2009年にオープン。
足もみとともに、安心な食の提供に力を入れ、
食材は余市近郊の生産者さんと直接つながって旬の食材を中心に仕入れています。
食事制限のある方に対応したり、ローフードを取り入れるなど、
ひとりひとりお客さんの希望を汲んでメニューを構成しているそう。
コースのように一品ずつ運ばれてくる料理は、レシピを知りたくなる、
素材を生かして手をかけられたものばかりです。
家の隣にある自家菜園では、『奇跡のりんご』で知られる木村秋則さんから
縁あって教わった無農薬無施肥栽培で10種類以上の野菜を育てながら、
宿の料理に生かしています。
「余市は食材の宝庫。後志地域の食の豊かさは、日本で一番だと思っています。
すばらしい生産者さんたちがいるから、これだけの食事をお出しできる。
皆さんあっての私たちなんです」
そう話してくれた尾崎さんに案内してもらい、余市の生産者さんやつくり手さんのもとへ。
はれるやで使われる可愛い猫のカップは、
余市にアトリエ&ショップをかまえる〈JUNIO〉の作品。
茨城で手吹きガラス作品を制作していたご夫妻が奥さんの実家余市へ移住し、陶芸へと転向。
余市駅からほど近い元質屋の古民家を改装したショップには、
さまざまな質感の、ふだん使いが楽しくなりそうな器が並びます。
実は、隣の仁木町とともにフルーツのまちとして知られる、余市。
はれるやの夕飯のメニュー「ベリーとトマトのガスパチョ」などに使われていた
フルーツやトマトは、仁木に畑・観光農園・レストラン・ワイナリーをもつ、
〈ベリーベリーファーム上田〉から。7種のベリーをはじめ
有機栽培や特別栽培でフルーツづくりを手がける上田一郎さんは、
農地とともに余市の土壌に合うブルーベリーの木々を譲り受け、エンジニアから農家へと転職。
「この仕事が大好きです」と語る上田さんの周りには、
たわわに実をつけたさくらんぼが輝いていました。
さくらんぼ畑の丘の上には美しいヴィンヤードをもつ〈リタファーム&ワイナリー〉が。
農家の4代目にあたる菅原さんご夫婦は、
2013年に念願のワイナリーをオープン。ご夫婦ふたりで葡萄の栽培、草刈り
野性酵母による自然発酵のワインづくりすべてを行っています。
生産量は限られますが、ワイナリー隣のショップで販売も。
今後はバルを併設する計画をたてているそうです。
余市の丘陵地帯、数百種類の農作物すべてが無農薬栽培の〈えこふぁーむ〉は
なんと代表の牧野時夫さんがひとりで運営。
大阪生まれの牧野さんは北海道大学在学中に農業を志し、
ワインメーカー勤務後、離農した農家から葡萄畑を買い取って農園をスタート。
収穫した野菜や果物は、大半が個人注文を受けて
さまざまな種類のものを直接配送するスタイル。
現在も畑で、日々研究と挑戦を重ねています。
「同じまちで頑張っている生産者さんたちと共生してお互いに宣伝し合うことが、
将来的にハーモニーになっていくということを意識しています」
尾崎さんはそう語ります。
自然に囲まれた穏やかな空間で、余市の誇る恵みのお話を聞きながら、
おいしく安心な料理をいただき、台湾式足もみで現在の自分を深く知る。
まちの魅力を最先端で発信し続けるゲストハウスはれるやは、
より健やかな日常を送るための、大人の休息所です。
information
ゲストハウス はれるや
information
JUNIO
information
ベリーベリーファーム上田
住所:余市郡仁木町東町13-49
TEL:観光農園0135-32-3090、レストラン0135-48-5510
営業時間:11:00~20:30
定休日:不定休
information
リタファーム&ワイナリー
information
えこふぁーむ
住所:余市郡余市町登町1178
TEL:0135-22-7431
※Facebookで発送可能な野菜を発信中。ご希望の方はメッセージよりお申し込みください。
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