odekake
posted:2016.4.22 from:沖縄県那覇市 genre:旅行
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
editors
沖縄CLIP
沖縄クリップは、沖縄の隠れた魅力や新しい情報を、沖縄在住のフォトライターが中心となって美しい写真とともに世界に発信し、沖縄の観光産業に貢献するという目的のプロジェクトです。沖縄が大好きな皆さまとさまざまなかたちでコラボレーションし、ともにつくりあげる新しいかたちの観光情報メディアを目指しています。
編集長 セソコマサユキ
http://okinawaclip.com/
writer profile
Akiko Ono
小野暁子
2011年に沖縄へ移住。観光サイト『沖縄CLIP』のフォトライターの活動を中心に、沖縄関連の雑誌やサイトにて執筆。おいしいごはんやかわいい手土産探し、宿めぐりが大好きで、取材では沖縄の人たちの温かい人柄を伝えることをモットーにしている。ふたりの息子とともに沖縄の大自然も満喫中。
http://okinawaclip.com/ja/detail/714
1日に余裕があるとき。ちょっとうれしいことがあったとき。
ゆっくり自分と向き合いたいとき。ふっと出かけたくなる場所があります。
それは首里の住宅街にある〈食堂黒猫〉という名の店。
メルボルンスタイルを掲げるこの店に、初めて来たのはいつだったろう。
ちょっとわかりにくい場所にあり、迷いながらもたどり着いた時には、妙にうれしくて。
階段をのぼり扉を開けた先には、こぢんまりとした
気持ちのいい空間が広がっていました。
一方の窓からは那覇のまち並みを見下ろせ、その先には東シナ海。
もう一方の窓からは首里城。
大きなコーヒーマシンと、緑が見えるキッチン。
学校で使われていた懐かしいテーブルとイス。
そこにあるものたちが、窓からの光を受けて、
どれも心地よさそうな表情をしていました。
そのせいか、席に着くと妙に居心地がよくて、
この店の空気にすうっと溶け込んでいくようでした。
店を切り盛りするのは、メルボルンから移住してきたご夫妻。
メルボルンでいくつものカフェやレストランを渡り歩いたシェフの沙季さんと、
メルボルン出身でバリスタ担当のクリスさんです。
食事のメニューは甘いプレートや野菜たっぷりのもの、
卵が主役だったり、肉がメインのプレートなど、5種類ほど。
料理写真のないメニューを眺めながら想像力をふくらませ、
その日の気分に合うものをオーダーすると、
運ばれてきたひと皿に毎度驚かされてしまう。
たいてい想像を、気持ちよく裏切られるからです。
沙季さんが作るプレートは、まるで洋書から飛び出したかのように美しくて、
はじめのひと口でおいしさに感激し、食べ進むうちにどんどん笑みがこぼれます。
酸っぱいの、甘いの、塩辛いのと、味がいろいろ。
食感もシャキシャキしていたかと思えば、
こりっとしたもの、ふにゃりとやわらかいもの。
とにかく口の中がにぎやかで、でも、ちゃんとハーモニーを奏でていて、
食べていて楽しいのです。
この驚きに満ちた料理が、メルボルンスタイル。
ひとつのメニューにバラエティに富んだ食材をふんだんに使い、
おいしさを引き出すためには手間を惜しまない。
ていねいな下ごしらえに始まり、ドレッシングもソースも、
料理ごとに手づくりしています。
どこかで見聞きしたものではない、ここでしか食べられない
オリジナリティあふれるひと皿に、シェフがありったけの力を注ぐ。
看板メニューはなく、味、食感、見た目、器使い、
すべにこだわったメニューが、少しずつ入れ替わっていきます。
だから、訪れるたびに新しい味に出会う、驚きがある。
それを楽しみにしているお客さんはとても多いようです。
食後には、クリスさんが淹れる渾身の一杯を味わいます。
豆を選ぶところから始まり、焙煎、豆挽き、抽出にまでこだわる、
メルボルンではサードウェーブとよばれるコーヒー。
クリスさんは新しい豆が入ったら、いくつものサンプルをとって、
納得のいく味を探すといいます。
そして、その日の気温や湿度、気圧をみながら淹れ方を変え、
とびっきりの一杯を出してくれます。
なにより、コーヒーを淹れるのが楽しいと笑うクリスさん。
お客さんは、その気持ちも一緒にいただいているようです。
夏のおすすめは、6時間かけて抽出する水出しコーヒー。
ロックで飲んでもいいし、氷が溶けたところを味わっても、
水で割ってもミルクを注いでもいい。
懐かしさを感じる牛乳びんのような入れものも、ちょっと楽しい。
そうやってすべてを味わったあとに窓から空を見上げると、
決まって心が晴れやかになっている。
それがなぜなのか、はじめはよくわからなかったけれど、
もしかしたらふたりが仕掛けてくる、いくつものサプライズに
心が弾むせいかもしれません。
ほどよく会話を楽しめて、ほどよくそっけない距離感もいい。
帰り際に、気持ちのいい笑顔で送りだしてくれることも、
すみずみまで掃除が行きとどいていることも。
常連さんらしき人たちが楽しげに過ごしている姿も、きっと理由のひとつです。
食堂黒猫には、目に見えないいくつもの心地よさが織りこまれています。
だから、ここに来るときにはいつもひとりで。
ふたりがつくる料理と空間をゆっくりと味わいたいから。
毎回、今日はどんな時間が待っているだろうかと、わくわくしながら扉を開けるのです。
information
食堂黒猫
住所:沖縄県那覇市首里赤平町2‐40‐1 3階
TEL:050-1300-3853
営業時間:9:00~17:00(LO 16:30、それ以降はコーヒーの持ち帰りのみ)
定休日:月曜日・木曜日、第1金曜日
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