odekake
posted:2015.12.27 from:北海道上川郡下川町 genre:旅行
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
photographer profile
YAYOI ARIMOTO
在本彌生
フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp
writer's profile
Akiko Yamamoto
山本曜子
ライター、北海道小樽生まれ、札幌在住。北海道発、日々を旅するように楽しむことをテーマにした小冊子『旅粒』発行人のひとり。旅先で見かける、その土地の何気ない暮らしの風景が好き。
旅粒
http://www.tabitsubu.com/
credit
取材協力:北海道観光振興機構
世界を回った旅人ご夫婦が錨をおろしレストランを始めたのは、
下川の町外れ、牧草畑に囲まれた農家の一軒家でした。
下川の中心部から60号線に入り、
しばらく進むとこんな素敵な看板が見えてきます。
ここから細い砂利道を進むと、広い畑に囲まれた赤い屋根のレストランと倉庫が現れ、
まわりには庭と見まがうような手づくりの畑が広がっています。
車から降りると、元気いっぱいの看板犬のマリオと、
赤茶色の毛並みが愛らしい看板猫アーネストがお出迎えしてくれました。
そのたたずまいから、
不思議と世界の果てのレストランにやってきたような気分になる
カフェレストラン〈モレーナ〉。
薪ストーブがしゅんしゅんと燃えさかり、
広い厨房からはおいしそうなカレーの香りが漂ってきます。
ほとんどすべてが店主の栗岩英彦さんと奥さま、
そしてお友だちによる手づくりという店内には
いたるところに旅のエッセンスが漂い、
まるで古い海外の映画の中にいるようなノスタルジーに満ちています。
そこかしこに飾られている世界各地の風景画は、どれも栗岩さんの作品。
世界を旅した軌跡です。
モレーナの看板メニューは北インド仕込みのカレー。
〈具だくさんの野菜カレー(800円)〉と〈オニオンとひき肉のカレー(800円)〉は
どちらも深みとコクあるスープで、
ターメリックで炊かれたライスといただくと、さらに香り高く引き立ちます。
薬膳のようなやさしい辛さが癖になるこのカレーのベースは、
なんとスパイスと塩と野菜のみ!
そこにメインで加わるのは、
雑草と野菜とを共存させる不耕起栽培の畑でとれた、
無農薬のおいしい野菜たちです。
「畑を始めたのはここに来てから。今年最後の野菜だよ」
と見せてくれたのはツヤツヤのピーマン。
旬の野菜にあわせて、メニューは季節ごとに変わります。
「東京農業大学を出ていますが、
そのときの知識は今、何も使ってないですね(笑)。
なるべく自給自足で、自分でつくった、身体にいいものを提供したい。
それも旅のなかで生まれた価値観のひとつです」
子どもの頃から転勤族のご両親について日本を転々とした栗岩さんは、
大学を出て養蜂の仕事に就いたのち、夢だった世界一周の旅に出かけます。
まだ格安航空もない1960年代に陸路や船で世界を巡りました。
栗岩さんにとっての転換点は、この旅で訪れたインド。
長く滞在するうちに自分の考え方や価値観が変わり、
シンプルライフを実践したいという気持ちが生まれました。
お店で提供している北インドのカレーは、
この滞在で自然と覚えたものだそうです。
帰国後は東京で喫茶店の調理仕事を経て、
小さなバンを木製キャンピングカーに改造(!)し、
7年間かけて日本一周の旅に出かけます。
そして奥さまの文子さんと最後の世界一周の旅へ。
長い旅の終わりに日本に帰る場所を探したとき、
思い出したのが、旅で訪れて気に入っていた下川の自然。
隣まちの名寄市に住む親友に家探しを頼んで見つかった物件のひとつが、
ここモレーナとなる農家の空き家でした。
もともと料理をつくって人をもてなすことが好きだった栗岩さん。
やがて文子さんの「ここでカレーのレストランをやってみない?」
というアイデアから、お店づくりがスタート。
いつでも枠にはまらず、
必要なら自分でつくるという精神がお話の中に見え隠れします。
1995年、カフェレストラン モレーナが誕生しました。
宝箱をひっくり返したような店内に無駄なものはひとつもなく、
栗岩さんのセンスが宿って、生き生きと置かれているものばかり。
「こんなところでお店をしても誰も来ないよと思ったけど、
だめでもいいやと、冒険するような気持ちで始めました」と笑う栗岩さん。
実際はその逆で、当時なかった
「まちから離れた畑にあるレストラン」と大きく報道され、
開店からお客さんが絶えなかったそう。
お店の什器や椅子にかけられた手編みのクッション、
食器のひとつひとつ、飾られた野の花……
細部に光る魅力的なセンスに身をゆだねて、
のんびりとくつろぐことができます。
18時から21時までのディナータイムは、
フランスで修行しモロッコ大使館でフランス料理を提供していたという、
下川町在住の田中則昭シェフによる予約制本格フレンチのお店に変わります。
「冬はハンパなく寒いけど、下川は自分にとって面白くて住みやすいところ。
今もここで、絵を描き続けていますよ」
世界中探してもここにしかない、旅の途中の休憩所、モレーナ。
ゆるやかに流れる時間のなかでカレーをいただいたあとは、
栗岩さんに旅のお話を聞かせてもらうのもおすすめです。
information
カフェレストラン モレーナ
住所:上川郡下川町北町309
TEL:01655-4-4110(カレー)/090-7652-9935(フレンチ)
営業時間:11:00~17:00/18:00~22:00(ディナータイムは要予約)
定休日:月曜日、ときどき不定休
※12月31日〜2016年1月3日は年末年始のため休業
※駐車場 あり
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