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地元食材を味わえるカフェ付き
〈一の橋バイオビレッジ〉。
自給エネルギー町営住宅に宿泊!

おでかけコロカル|北海道・道北編

posted:2015.12.25   from:北海道北海道上川郡下川町  genre:旅行

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

「誰もが暮らしたいまちづくり」をかたちに

旭川から北東に約100キロ、
まちの面積の約9割が森林を占める、人口約3,500人の下川町。
2011年に国の「環境未来都市」に認定され、
まちが誇る森林資源をあますことなく利用しながら
エネルギー自給や移住者の促進、
超高齢化社会への先進的な取り組みをすすめるこの小さなまちは、
国内外から大きな注目を集めています。

まちがかかげる“人が輝く森林未来都市”のバイオビレッジ構想に基づいて、
誕生したのが、中心街から車で12分ほどの町営住宅〈一の橋バイオビレッジ〉。
コミュニティカフェや郵便局、派出所が併設され、
まるで小さな村のようなたたずまい。

敷地内には林業から生まれる木質チップを利用した
バイオマスボイラーが隣接し、
地下配管を通して一の橋地区の給湯や熱供給を担っています。

2機の木質バイオマスボイラー。余剰分のエネルギーは町民へ販売もしています。

バイオビレッジとは、エネルギー自給をともなう自立型コミュニティのこと。
現在も基幹産業である林業と、もとは鉱山でも栄えた下川町は、
相次ぐ鉱山の休山や外材導入のあおりで人口が減少。
ここ一の橋地区も過疎化・高齢化の一途をたどり、
一時2,000人だった住人は140人に。
高齢化率は50%を越えるなど地域の存続が危ぶまれましたが、
老朽化した町営住宅の建て替えをきっかけに、大きな変化が訪れます。

もともと町営住宅に住んでいたのは、ほとんどがお年寄りの方々でした。
その住人の要望や意見を生かしながら、
新たな町営住宅に向けてまちや地域おこし協力隊も交えた話し合いが重ねられ、
2013年、一の橋の町営住宅は、
先進的な集住型のバイオビレッジへと生まれ変わります。
その1室が一般の方も体験宿泊ができる〈宿泊ハウス〉となっています。

宿泊部屋の2階寝室。窓越しの豊かな森に心がほぐれるよう。長く滞在したくなる居心地のよさです。

宿泊ハウスは、基本的に居住スペースと同じつくりの1LDK。
木のぬくもりを感じられる明るく快適な住空間です。
セントラルヒーティングには
隣接したバイオマスボイラーから送られてくる温水が流れています。
冬期の暖房にかかる料金は化石燃料よりずっとお得なうえ、
冬には-30℃を越える寒さにも断熱でしっかり対応。
要所要所に手すりがつけられ、
もともと利用者で多かったお年寄りへの配慮も行き届いています。

建物や室内には下川産のカラマツを使用。

機能的な対面キッチンや広々としたお風呂も完備。
まちで購入した食材をここで料理することもできます。
バイオビレッジの設備をまるごと体感しながら、
暮らすように泊まり、下川暮らしを想像してみるのもいいかもしれません。

使いやすい収納も多数。カウンターに置かれた木製椅子は、下川町の森林組合の手づくりだそう。

バイオビレッジ内にある26戸の住宅は、現在満室の状態。
間取りは1LDKから3LDKまで幅広く、
もとの住人のお年寄りをはじめ、地域おこし協力隊、地区内の障害者施設の職員など、
世代も幅広い方々がエネルギーと共有スペースをシェアしながら、
お互いの暮らしを支え合っています。

棟をつなぐ役割の屋根や壁のある外廊下が、冬の雪かきの労力をぐっと減らしました。

バイオビレッジには、住人同士はもちろん、
外から訪れた方々をもつなぐ、
コミュニティカフェ〈駅カフェ イチノハシ〉が併設されています。
独り暮らしのお年寄りの方々が気軽に食事ができるようにと、
生まれたこちらのカフェ。
顔の見える地域食堂としての役割を果たしています。
店内の売店では、調味料や生活雑貨などが販売され、暮らしを支えています。
カフェのメニューも豊富で、地元の食材をふんだんに使った本格的な食事を楽しめます。

日差しにあふれた駅カフェ店内。視察に訪れた方たちが売店でお土産を求める姿も。

素材のおいしさを生かした〈和食プレート(600円)〉は老若男女が楽しめるメニュー。

隣まちである名寄市産もち豚がジューシー! 地域おこし協力隊の畑でとれた〈サンマルツァーノ〉というおいしいトマトは下川産。〈本日のお肉メニュー (1,000円〜) 〉。

地産地消や食育に注目し、下川に入った駅カフェシェフの宮内重幸さんは
以前東京のイタリアンレストランで腕をふるっていました。
「地域の年配のお客さまに『美味しかったよ』と喜んでいただけることや、
すばらしい生産者さんたちと近い距離でつながって
料理に落とし込めるここでの仕事に、やりがいを感じています」
インドネシアに生まれ、さまざまな国で生活し体験してきた食文化や
北海道の伝統料理をいずれ下川の若い世代に伝えていきたいと語ります。

道産の鹿肉を使った〈ボロネーゼ(700円)〉。鹿肉の濃厚な味わいにトマトソースが爽やかさを添えるマッチングの妙。

ランチタイムの〈マルゲリータ (650円) 〉。興部(おこっぺ)町の〈ノースプレインファーム〉の有機モッツァレラチーズがとろけます。下川産小麦のハルユタカにはちみつを練り込んだ生地がもっちりと香ばしい。

移住者を受け入れ、若い人たちのアイデアを
積極的に活かしていく下川町の寛容な気質は、
林業や鉱業で外からの労働者が集まっていた歴史も理由のひとつ。
小さなまちだからこそ、
ひとりひとりがまちをつくっているという町民の意識の高さもうかがえます。

駅カフェは地域おこし協力隊が運営。シェフの宮内さん(左)と福島英晶さん(右)。奥さまとともに下川に移住してきた福島さんには、いつか下川でカフェをやりたいという目標が。

このバイオビレッジをはじめとした下川町の試みは、
過疎化や高齢化といった課題を抱える地方の新しい活路として、
国内外からの視察が続々と訪れています。
「ここ下川の豊かさは、都市部とは基準が違います。
豊かな森や自然があって、薪ストーブを囲む生活があって、
魅力的な人たちがいて、思い思いに自分たちの活動をしている。
ここにしかないゆったりと流れる時間を、多くの人に知ってもらいたいですね」
自身も東京からの移住者であるしもかわ観光協会の長田 拓さんはそう語ります。

ここで大切にされているのは「誰もが暮らしたい町づくり」というぶれない軸。
森とともに生き、人や資源を生かし育ってゆくまちの試みに、触れに来てみませんか。

information

map

駅カフェ イチノハシ

住所:北海道上川郡下川町一の橋603-2

TEL:01655-6-7878

営業時間:ランチタイム11:30~14:00(L.O.13:30)、カフェタイム15:00~17:00(L.O.16:30)、
ディナータイム18:00~21:00(L.O.20:00)※11月〜3月の冬期期間中、ディナーは完全予約制

定休日:火曜、水曜

https://twitter.com/ekicafe

information

一の橋バイオビレッジ 宿泊ハウス

1泊4,114円〜 

※宿泊の申し込みは上記〈駅カフェ イチノハシ〉まで。

受付時間9:00〜17:00(火・水曜休)

ほか各種料金の詳細などはHPにてご確認ください。

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