odekake
posted:2015.10.28 from:北海道斜里郡斜里町 genre:旅行
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
photographer profile
YAYOI ARIMOTO
在本彌生
フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp
writer profile
Kanako Tsukahara
塚原加奈子
つかはら・かなこ●エディター/ライター。茨城県鹿嶋市、北浦のほとりでのんびり育つ。幼少のころ嗜んだ「鹿島かるた」はメダル級の強さです。
credit
取材協力:北海道観光振興機構
北海道の最東北端、斜里町と羅臼町にまたがり、
オホーツク海に突き出すように細長い知床半島は、
アイヌ語で地の果てを意味する“シリ・エトク”が語源。
冬には、流氷が接岸する北半球最南端の地です。
5つの山々からなる知床連山がそびえ、
切り立った海岸線の断崖が、多様な生物の生息地を守ってきました。
海にはシャチ、イルカ、クジラ、アザラシ、
空にはオジロワシやオオワシ、
陸には、ヒグマをはじめとする動物や昆虫など
知床には多様な野生生物が生息しています。
そんな生物の多様性や豊かな生態系が評価され、
知床半島の大半が国立公園として、
2005年7月に世界自然遺産に登録されました。
その一画にあるのが〈知床五湖〉です。
ウトロ温泉地区より勾配がある93号線を走らせること、約30分。
途中、道路脇に広がる熊笹と白樺の森や原っぱで、
エゾシカやキタキツネなどの野生動物に出会えることも。
そんな手つかずの自然が残る一帯なので、知床五湖を散策するにも、
野生動物との共存や植生保護に対する理解が必要です。
特にここは、ヒグマもすんでいる地域なので、
森を散策するとなれば、彼らに会うことも。
北米内陸部にすむヒグマの餌の種類が40種であるのに比べて、
知床では90種を超える自然の餌があると言われ、
ヒグマにとって、知床はとても快適な場所なのです。
ちなみにアイヌ語で、“キムンカムイ”(山の神)と呼ばれ、
古くから崇められてきた存在でもあります。
知床五湖の楽しみ方は、大きくはふた通り。
入り口もそれぞれ分かれています。
①“地上遊歩道”で5つの湖を間近で散策する
②“高架木道”を利用する
高架木道は、ヒグマを避けるために設置されたもので、
地上より2〜3メートルの位置につくられた木道を歩きます。
知床連山の眺めが美しい一湖を鑑賞し、
歩いて戻って来る約40分のルート。
知床連山と反対側は、オホーツク海が眺められ、
歩いていると海風が気持ちよく、とっても壮快な気分です。
こちらは無料で自由に行き来できます。
地上遊歩道は、湖沼や生態系を体感できるもの。
知床フィールドハウスでレクチャーを受けることが義務づけられています。
さらにヒグマの活動期である初夏から夏にかけては
ガイドツアー限定や散策不可となる場合もあるので、
事前にHPなどで確認を。
この地上遊歩道は、長短2ルートあります。
A)ふたつの湖をまわる約40分の小ルート(約1.6キロ)
B)5つの湖をすべてまわる約1.5時間〜3時間の大ルート(約3キロ)
取材に訪れた8月下旬のこの日は、Aを歩いてみました。
まず、知床五湖フィールドハウスで、立ち入りのための申請書に記入。
受付で立入認定手数料を支払ったら、レクチャールームへ案内されます。
約10分の動画を見ながら、
食べ物を持ち込まないこと、
もともと臆病な性格のヒグマを脅かさないことなど、
ヒグマに会ったときの心得などについて学びます。
さらに、湿原や植生を荒らさないよう遊歩道を踏み外さないことなど、
生態系に関するレクチャーも。
何より“ヒグマなどの野生動物たちのすみかにお邪魔する”
という感覚で、散策することが大切だと教えてもらいました。
立入認定書をもらったら、さあ、原生林のなかへ。
数千年前、知床連山をなす硫黄山の一部が崩壊し、
岩石が崩れ落ちてきた集積地帯のくぼみに
地下水がたまり、生まれたと言われる知床五湖。
流れ込むも河川はなく、いまも地下水が涌いています。
ヒグマとの遭遇にドキドキしながらも、凛とした空気に包まれ、
静かな森を歩くと感覚が研ぎすまされていくのがわかります。
まず林の奥に見えてきたのは、二湖。とても幻想的です。
二湖は、5つの湖のなかでも一番大きい湖。
よく目をこらすと湖上に小さな野鳥が見えることも。
さらに歩いていくと、二湖全体を見渡せるポイントに到着します。
晴れていると湖に鏡面のように
知床連山が美しく映り、
同じ国にいるとは思えないような雄大さに圧倒されます。
太古からほとんど変わらない景観が目の前に。
大地の生命力を感じる風景です。
さらに、歩いて一湖へ。林のなかで耳を澄ませば、
キツツキ科のアカゲラが幹をつつく音が聞こえるかもしれません。
水遊びに訪れるエゾシカの姿が見られることもあるという一湖は、
半分が草原になっています。
一湖を鑑賞すると、遊歩道は終了し、回転ドアを通って高架木道を通り、
フィールドハウスへと戻っていきます。
ほかの3つの湖も時間や条件が合えばぜひ訪ねてみてください。
水の透明度が一番高いという神秘的な五湖、
深い原生林に囲まれる四湖の近くには樹齢300年を超えるミズナラの大木が。
三湖は湖を囲むように散策路が整備されていて、
湖畔の景色を一番長く楽しめます。
6月下旬から8月上旬にかけては、絶滅危惧種のひとつで、
小さな黄色の花がかわいらしいネムロコウホネを鑑賞することも。
知床五湖の開園は、4月下旬から11月末まで。
GWは、散策道にはまだ雪が残って、冬の名残を楽しむこともできます。
季節をめぐり咲く花々や野鳥たちに会いに、何度でも訪れたくなる場所です。
かつては自由に出入りできた知床五湖でしたが、
たくさんの人が訪れるようになり、
一時は環境が悪化してしまったこともあるそうです。
その教訓を生かし、生態系を守りながら公開するシステムが推進され、
豊かな自然を体感しながら、後世へこの自然の聖域が守られていきます。
information
知床五湖フィールドハウス
住所:斜里郡斜里町遠音別村
TEL:0152-24-3323
営業時間:7:30〜18:00(時期により15:00〜18:30閉園と変動。HPで確認を)
駐車場あり
http://www.goko.go.jp/index.html
※営業期間は4月下旬〜11月下旬まで。
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