colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

news

〈FC越後妻有〉
めざせなでしこリーグ!
お米を育てる女子サッカーチーム

コロカルニュース

posted:2016.8.20   from:新潟県十日町市  genre:暮らしと移住

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Yu Miyakoshi

宮越裕生

みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。

サッカーと、農業。
一見なんの関係もなさそうな、ふたつのジャンル。
2016年春、越後妻有(新潟県十日町市・津南町)に
このふたつを実践する農業実業団チームが誕生しました。

その名も〈FC越後妻有〉。
この名前を聞いて、ピンときた方もいるかもしれません。
越後妻有といえば、世界最大級の
国際芸術祭〈大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ〉の舞台。
本プロジェクトも、この芸術祭の一環で行われるものなのだとか。

写真:中村脩

大地の芸術祭2000年(第1回)写真:中村脩

チームの選手は、ただいま2名。
サッカー関係者を通して声をかけられ、越後妻有にやって来た西川美里さんと大平理恵さんです。

左から西川美里さん、大平理恵さん。

2人は十日町市に暮らし、朝は鳥のさえずりや虫の声を聞きながら田んぼに入り、
朝食後はサッカーのトレーニング、昼はゆっくり休み、
午後にはまた農作業をするという毎日を送っているそう。

活動拠点の〈奴奈川キャンパス〉。農業、食、生活、遊び、スポーツ、踊りを通してひとりひとりが得意なことを掘り起こすための学校です。さまざまな講座やアートプロジェクトを展開しています。

芸術祭会期中や通年でのイベント時には、 奴奈川キャンパスも展示会場になります。

このプロジェクトの目的は、女子サッカー選手が棚田の担い手として
移住・就農し、里山の風景を守っていくこと。
そして、都市部ではできないゆたかな暮らしとアマチュア競技スポーツの両立をはかること。

FC越後妻有のU-15サッカー教室

それにしても、なぜサッカーと農業という組み合わせが生まれたのでしょうか。
発起人は、FC越後妻有ディレクター/奴奈川キャンパス体育学科チューターの坂口淳さん。
サッカーを中心にさまざまな活動を行ってきた坂口さんは、
食に興味をもち、仕事の合間に全国の農業現場をめぐってきました。
そのうちに、後継者不足の問題に取り組みながら、
アマチュアサッカー選手のキャリアを支援する
このプロジェクトを思いついたといいます。

FC越後妻有ディレクター/奴奈川キャンパス体育学科チューター、坂口淳さん。日本サッカー協会のマネジメント人材養成講座〈JFAスポーツマネジャーズカレッジ〉ダイレクターでもあります。

「長い時をかけて山の上まで築かれたうつくしい棚田、
澄んだ空気と清らかな水、旨い米や野菜、山の恵みをいただく食生活、
心身をリフレッシュできる温泉、ゆっくり流れる時間。
越後妻有には、都市では味わえない豊かな暮らしがあります。

いま、越後妻有が若い力を必要としています。

先祖から引き継いできた田んぼはこの地域の人たちにとって誇りであり、
地域のシンボルであり、生きてきた証です。

80歳を超える年齢になっても何とか踏ん張って
山奥の田んぼをやってきたがそれも限界になる。
過疎高齢化で手の回らなくなった田んぼを守り、
里山の風景を未来に残すお手伝いをしていきたいのです。

ここで身につけた農業のスキルは、生涯選手たちの糧となり、
選手としてプレーができなくなった後の生活=セカンドキャリアも、
農業の担い手として自立する契機を与えてくれるはずです」(坂口さん)

いま、日本の農家の65%は65歳以上。
稲作にいたっては、70歳以上になります。(農林水産省「2015 農林業センサス」より)
「農業に若い力を呼び込めたら」という思いから始まったFC越後妻有。
たしかに、明るい光を灯す存在となってくれそうです。

しかも田んぼ作業は、バランス感覚が鍛えられたり、
共同作業によってコミュニケーション能力が磨かれたりと、
サッカーにもプラスになるのだとか!

グランドの芝刈りも自分たちでやっています。

ページトップ写真:米山典子

次のページ
2人の選手に聞きました。なぜ入団を決めたの?

Page 2

写真:中村脩

毎日のようにサッカーと農業にいそしむ、大平理恵さんと西川美里さん。
2人は、FC越後妻有への参加が決まってからこの地に引っ越してきました。
大平さんは青森県七戸町、西川さんは兵庫県神戸市のご出身。
一体、なぜ参加を決めたのでしょうか。

大平さん

「移住のきっかけは、大学で専攻していた農業を学びながら
今まで続けてきたサッカーができる環境だったから。

自分が大学で学んだことを少しでも活かせるのならチャレンジしてみよう、
万が一仕事がなくなっても、自分で何か栽培できたら食べていけるだろうと思い、
半分はノリと勢いでここに来ました。

地域の方々の温かさ、うつくしい棚田の風景、
季節のおいしい食など、田舎ならではの魅力が多くあり、
越後妻有はすごく良いところだと思います」(大平さん)

西川さん

「私はただ“サッカーがしたい”その一心でこちらに移住してきました。
はじめは、慣れない環境に戸惑うことや驚くことも多々ありました。

しかし、地域の方々がとても温かく、いつも気にかけて支えてくださるので、
移住してまだ2か月ですが生活にも慣れ、友達もでき、毎日楽しく過ごしています。

私は、農業未経験で慣れるまで上手くいかないことも沢山ありましたが、
地元の方も棚田チームの先輩もとてもていねいに教えてくれるので、
いまではトラクターや田植え機などの機械もひとりで使えるまでになりました。

サッカーの面でのいまの目標は、FC越後妻有として試合をすることです。
いま、支えてくださっている地域の方々に、
自分たちが活躍することで恩返しがしたいと思っています。

ゆくゆくはなでしこリーグに参入することが目標ですが、
いまは目の前の目標に向かって日々努力しています」(西川さん)

活動拠点となっている〈奴奈川キャンパス〉には、
いつでも使えるグランドと体育館、コーチ、スタッフなどが揃っています。
サッカーのトレーニングのほか、農業やスポーツプログラムのトレーナー、
大地の芸術祭のサポート、地元の方々との交流など、やることはたくさん! 
でも、2人ともここでの新しい生活を楽しんでいるようです。

奴奈川キャンパス校長/日本大学芸術学部教授の鞍掛純一さん。大地の芸術祭の参加アーティストでもあり、奴奈川キャンパス1階の内壁に『大地のおくりもの』という作品を展開しています。

大地の芸術祭で制作された作品が残る田んぼも、メンバーで草刈りを行っています。

都市の人が棚田のオーナーとなる〈まつだい棚田バンク〉での草刈りイベント。総勢67名が草刈りに参加し、夜は交流会も。参加者のみなさんは、秋に開催される稲刈りイベントを楽しみにしています。

ただいまFC越後妻有では、女子サッカー選手を募集しているのだそう。
サッカーはもちろん、食、農、田舎暮らし、アート、自然に興味関心があれば、
きっと楽しい毎日が送れそうです。
我こそはという方は、大地の芸術祭の里総合案内所までお問い合わせを。
(連絡先はこちらから!)
また、奴奈川キャンパスでは稲刈りイベントなど、
一般の方が参加できるイベントも随時開催しています。
Facebookやオフィシャルサイトもぜひチェックしてみてください。

information

map

FC越後妻有

活動拠点:奴奈川キャンパス

住所:新潟県十日町市室野576

問い合わせ: / 025-761-7767(「大地の芸術祭の里」総合案内所)

Web:奴奈川キャンパス Facebook

Feature  特集記事&おすすめ記事

Tags  この記事のタグ