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〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
朝起きたら
まず、窓を開けます
太陽が出てくるのね
お岩木様も見てね
それからご飯炊きもね
ずっと続けていることですよ
新刊『岩木遠足 人と生活をめぐる、26人のストーリー』(青幻舎)には、
2009年から2013年にかけて、青森県の弘前市を出発点に開催された
遠足形式のイベント〈岩木遠足〉に登場した、26人の物語が収録されています。
はじめの言葉は、弘前で〈森のイスキア〉を主催する
佐藤初女(はつめ)さんの言葉。
“お岩木様”というのは、広い広い津軽平野のどこからでも見える、
県内で一番高い山のことです。
その麓には、岩木山を仰ぎ見るようなかたちで神社があり、
山頂には奥宮が建てられているのだそう。
津軽の人たちの暮らしに溶け込み、古くから慕われきた山です。
『岩木遠足』は、この岩木山を望む地域をひとつの文化圏ととらえ、
その周辺に暮らす人や、ゆかりのある人を訪ねるバスの旅から始まります。
編著者は、このイベントの発起人であり、
先日「つくる」Journal!にもご登場いただいた豊嶋秀樹さん。
「岩木遠足」の本制作委員会のみなさんと一緒にこの本をつくってきました。
豊嶋さんは〈gm projects〉のメンバーとして展覧会の空間構成を手がけたり、
〈津金一日学校〉(山梨県)や〈陸前高田ミーティング(つくる編)〉(岩手県)
などのイベントを手がけたり、自身の作品を制作したりと、
枠にとらわれない活動を展開しています。
岩木遠足は、豊嶋さんが興味のある人や、会いたい人に会いに行く道程を
遠足のようなかたちで参加者の皆さんと
共有できたら楽しいのではないか——そんな思いから始まったイベントなのだとか。
一行が貸し切りバスを降りて山のなかを歩いていくと、
そこにはマタギや音楽家、こぎん刺しの研究所の所長さん、
農家さん、こけし工人、シェフなどなど、
その場所にゆかりのある人が待っていて、いろいろな話をしてくれる。
しかもただ話を聞くだけではなくて、
津軽笛による登山囃子(とざんばやし)の演奏を聴いたり、
リンゴ畑を歩いたり、農場でお昼ごはんを食べたりと、
そこでしかできない体験とともに聞く。
遠足は、そんな風に進んでいきます。
第1章には、世界を旅する写真家・石川直樹さんが登場します。
石川さんはつぶ沼という沼のほとりで、
“自分なりの地図”を描いて探求していくことなどを語りました。
石川さんはオーストラリアでアボリジニの人たちに会った時に、
彼らが何の変哲もない風景のなかに泉が湧き立つ場所や
聖地となっている洞窟を見ていることを知り、
普通の地図には載っていない、
まったく別の世界が存在することに気づいたのだそう。
その時に石川さんが思ったのは、たとえ見慣れたような風景でも、
自分のとらえ方によって、いかようにも変化させられるということ。
それから第2章、第3章と読み進んでいくと、
次々に“自分なりの地図を描く”ような生き方をしている人が登場します。
たとえば、伝統を継承していくだけではなく
“今の時代のいいものって何なのか、ってことをしっかりと考えて伝えられればいいな”と
語っていた〈必殺ねぷた人〉の三代目棟梁・中川俊一さん、
お金を稼ぐ仕事は自分が責任を持てることでないとだめだと気づき、
音楽に重点を置くようになったという音楽家のオオルタイチさん、などなど。
そうした人たちの話を聞いているうちに、
“自分なりの地図を描く”って、いつもの見方ややり方をちょっと変えてみるとか、
自分で考えた方法でやってみるとか、
そういうことなのかもしれない、と気づかされたりするのです。
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とくに印象に残ったのは、青森県の西目屋地区で代々マタギとして
暮らしてきた〈白神マタギ舎〉代表の工藤光治さんの話でした。
他の命をいただくのだから、命を惜しむ人はマタギになれないという話や、
同級生がうらやましくて修業をやめた時の話、
山のなかでハヤブサに襲われ動けなくなっていたアオゲラを助けた時の話……。
厳しい自然と動物、そして人がせめぎ合いながらともに生きていく、
マタギの生き方に驚かされました。
そのほかにも、シンガーでありながら僧侶でもある二階堂和美さんや、
リンゴ農家の鈴木秋則さん、働き方研究家の西村佳哲さん、
〈くるみの木〉主宰・石村由起子さんなどなど、
独自の道を歩んでいる人がたくさん登場します。
さらに後半では、バスは青森を飛び出し、
東京、長野、奈良、京都へも足をのばします。
また、巻末に収録されたテキストには、
豊嶋さんが本格的に東北を訪れるきっかけとなった、
美術家の奈良美智さんと協働で手がけた展覧会
〈Yoshitomo Nara + graf A to Z〉(2006年)のことも書かれています。
それは、吉井酒造煉瓦倉庫というリンゴのお酒をつくっていた巨大な倉庫に
廃材でまちをつくって作品を展示し、会期終了後には
もとの何もない空間に戻すという展示プロジェクトでした。
豊嶋さんはもともとそこにあった場やもの、そこで出会う人々との
出会いからインスピレーションを受けて新しいもの——展示やイベントなどといった
その瞬間、瞬間にしか体験できないものをたくさん手がけてきました。
この本を読み終わる頃には、その課程で生まれた、人の集いから生まれる創意や、
エネルギーがわっと広がる瞬間のようなもの、
何かそういったこのイベントに関わった人たちが
感じたこと、大切にしてきたことが伝わってくるようです。
それから、同テキストには岩木遠足の発足時の話から、
思うように参加者が集まらなかった時期のこと、その時に、
あえて実行委員のメンバーだけで遠足を実施した時のことも綴られています。
これが、何とも沁みるエピソード。
場づくりや、地域に根ざした共同体に興味ある方にも、おすすめの一冊です。
ただいま豊嶋さんは、全国各地で
〈「岩木遠足」の本の小さなトークツアー〉を行っているそう。
ツアーでは、ゲストを迎えたトークや、おいしいごはんが楽しめるイベントも!
これまでの岩木遠足を逃してしまったという方も、ぜひチェックしてみてください。
「岩木遠足」の本の小さなトークツアー
■鳥取
日時:2016年1月14日(木)19:00〜
場所:旧末次太陽堂(鳥取県米子市道笑町1-28-1)
料金:500円
電話:090-2409-7984(水田)
■石川
日時:2016年1月15日(金)19:00〜
場所:オヨヨ書林せせらぎ通り店(石川県金沢市長町 1-6-11)
料金:1,000円(1ドリンクつき)
電話:076-255-0619
予約:oyoyoshorinseseragi(a)gmail.com
■山梨
日時:2016年1月21日(木)18:00〜
場所:gallery trax(山梨県北杜市高根町五町田1245)
料金:¥1,000(ドリンク+おみやげつき)
電話:080-5028-4915
予約:trax(a)eps4.comlink.ne.jp
http://www.eps4.comlink.ne.jp/~trax/main/top.html
■神奈川
日時:2016年1月24日(日)11:00~16:30
場所:山と道 新アトリエ予定地(神奈川県鎌倉市大町3-1-17)
料金:1,000円(PLANT LAB.のチャイつき)
予約:https://coubic.com/yamatomichi/152930
※「岩木遠足」の本の小さなトークツアー、PLANT LAB.、山と道の3つが
集合するイベントとなります。「岩木遠足」のトークのみ
予約制となりますので、ご注意ください。
http://yamatomichi.blogspot.jp/2016/01/plant-lab.html
■千葉
日時:2016年1月25日(月)
場所:と~じ舎(千葉県香取郡神崎町武田890 トージバ千葉事務所)
料金:自由料金+食材・お酒持ち込み大歓迎!
予約:npo(a)toziba.net
■北海道(倶知安)
日時:2016年2月5日(金)19:00〜
場所:SPROUT OUTDOOR ESPRESSO(北海道虻田郡倶知安町北一条西3-10)
料金:1000円( 1ドリンク&お菓子つき)
予約:0136-55-5161/mail(a)sprout-project.com
http://sprout-project.com/sprout.html
■北海道(札幌)
日時:2016年2月11日(木・祝)18:30〜
場所:たべるとくらしの研究所 (札幌市中央区南9条西11丁目3-12)
料金:1,000円(1ドリンクつき)
電話:011-522-8235
予約:tabekurayoyaku(a)gmail.com
http://www.taberutokurashi.com/
※メールアドレスは(a)を@に変えてご送信ください。
・岩木遠足
infomation
岩木遠足 人と生活をめぐる、26人のストーリー
編著:豊嶋秀樹
制作:「岩木遠足」の本制作委員会
話し手のみなさん:佐藤初女(森のイスキア主宰)/石川直樹(写真家)/佐藤ぶん太、(津軽笛奏者)/成田貞治(弘前こぎん研究所所長)/中川俊一(必殺ねぷた人三代目棟梁)/阿保六知秀(こけし工人)/石田エリ(編集者)/児玉大成(こまきの自然学校代表)/工藤光治(白神マタギ舎代表)/柴田誠(マタギ)/KIKI(モデル)/西村佳哲(働き方研究家)/木村秋則(リンゴ農家)/ルーカスB.B.(クリエイティブディレクター、PAPERSKY編集長)/タテタカコ(シンガーソングライター)/石村由起子(くるみの木主宰)/ogurusu norihide(音楽家)/YTAMO(音楽家)/オオルタイチ(音楽家)/二階堂和美(シンガー)/トンチ(音楽家)/原田郁子(クラムボン)/福田里香(お菓子料理研究家)/笹森通彰(シェフ)/三原寛子(南風食堂)/白取克之(岩木山麓しらとり農場代表)
判型:四六判
総頁:356頁
定価:1,800円(税抜)
発行所:青幻舎
発行:2015年11月25日
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