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いがらしみきおさんら
作家たちがとらえ直す
東北の民話〈物語りのかたち〉展

コロカルニュース

posted:2015.12.10   from:宮城県仙台市  genre:アート・デザイン・建築

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Yu Miyakoshi

宮越裕生

みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。

宮城県のせんだいメディアテークにて
〈物語りのかたち − 現在に映し出す、あったること 〉展が始まりました。
これは、東北の民話の記録活動をもとにした展覧会。

せんだいメディアテークでは東日本大震災以降、
みやぎ民話の会と協働して〈民話 声の図書室〉プロジェクトを立ち上げ、
民話の語りを記録し、公開する活動を行ってきました。

今回の展示では、そうした民話の記録をもとに、
作家たちが“私たちにとっての民話とはなにか”をとらえ直し、かたちに表しています。

〈物語りのかたち − 現在に映し出す、あったること 〉展ギャラリーツアーの様子

田村友一郎『ソテロの骨折』※展示作品の一部(撮影:小岩勉)

参加作家は、『ぼのぼの』や『I(アイ)』などの作品で注目を集める
宮城県在住の漫画家・いがらしみきおさん、
写真や映像などを用いながら、メディアによって形づくられる
社会について批評的な表現を行う田村友一郎さん、
子どもたちとの共同制作を通じて、彼らの視点から社会の制度や慣習を
シニカルに提示する山本高之さんの三名。

また、東北の民話の採訪活動を続ける市民活動団体
〈みやぎ民話の会〉も参加しています。

東北の民話は、厳しい環境のなかで生きる人びとが、
自然への畏敬の念や人生の悲哀、おかしみなどを、
豊かな発想によって物語化し、語り継いできたもの。

作家の皆さんがそこから新たに紡ぎ出した物語とは、
どんなものだったのでしょうか?

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三人の作家が紡ぎ出す、民話とアートの新たな展開

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いがらしみきおさんといえば、
かわいい『ぼのぼの』の世界観を思い出す方も多いかもしれません。
でも近年では、より生と死や社会問題に迫った、
ひと味もふた味も違う、秀逸な作品をたくさん生み出しているんです。

いがらしみきお『こうずんさん』郷土伝承資料室(撮影:小岩勉)

今回いがらしさんが手がけた作品『こうずんさん』は、
いまも東北に残る“庚申の日”という習わしにまつわる作品。
この庚申信仰を素材に漫画を描き、
その作品を架空の郷土伝承資料館の中にある資料の一部として展示しました。
六つの部屋を歩いていくと、そこに収められた不思議なものたちが、
少しずつ変化していくことに気づきます。
部屋を追うごとに、いがらしさんが紡ぐ物語の世界へと
つながっていきます。

田村友一郎さんによる『ソテロの骨折』は、
“聴く”という行為に着目した作品。
骨が語りだす民話『うたうしゃれこうべ』にヒントを得ながら、
ものに宿った記憶が声となり、聴く人の骨に伝達される作品をつくりました。
実際に使用されていた街灯やガードレールなど、
道路に関係した廃材と骨伝導技術を用い
宮城に暮らす海外出身者の“骨”にまつわる物語りを伝えます。

山本高之さんは『かまどがみのいわれ』という民話に登場する、
ヘソから金を出すものぐさな男を、自分自身の横たわる像として制作しました。
この彫刻のヘソからは、実際に毎日ひとつ、金色の粒が飛び出します。
また、山本さんはかつて仙台港で開催された〈’87未来の東北博覧会〉を
“仙台の過去を物語る現代の民話”ととらえた作品も制作。
子どもたちと“過去に夢見られた未来像”を想像しながらつくったパビリオンや、
仙台市柳生中学校の合唱部が歌うテーマ曲を展示しています。

山本高之『窯神のいわれ』(撮影:小岩勉)

このほか、みやぎ民話の会による民話語りの記録映像も見逃せません。

みやぎ民話の会「東北伝承の民話語り」(撮影:小岩勉)

また、せんだいメディアテークでは
震災復興や地域社会、表現活動について考えていく〈かんがえるテーブル〉や
館長の鷲田清一さんがさまざまな分野のプロフェッショナルと語り合う
〈鷲田清一とともに考える〉など、さまざまな対話の場を主宰してきました。

考えるテーブル「てつがくカフェ」の様子

12月13日(日)は、考えるテーブルのプロジェクトのひとつ〈てつがくカフェ〉を開催。
〈物語り〜いま、“象る”営みを問いなおす〉をテーマに、
震災以降の“象る”という営みについて、“物語り”という切り口から考えていきます。

さらに、12月27日(日)には民話ゆうわ座による『笠地蔵』も。
イベントに合わせて訪れるのもいいですね。

“あったること”(過去の出来事)から今に続く、
民話とアートの展開をお見逃しなく!

物語りのかたち − 現在に映し出す、あったること

会期 2015年10月31日〜2016年1月10日

休館日 11月26日、12月29日から1月3日

公開時間 11:00〜20:00

入場料 一般300円 高校生以下無料

会場 せんだいメディアテーク 6階ギャラリー4200

住所  仙台市青葉区春日町2-1

電話 022-713-3171

主催 せんだいメディアテーク(公益財団法人仙台市市民文化事業団)

せんだいメディアテーク

「物語りのかたち」展

考えるテーブル

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