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posted:2021.8.31 from:島根県隠岐郡西ノ島町 genre:旅行
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writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
鮮やかな海と草木のコントラスト。
草原にたたずむ穏やかな馬たち。
島根半島から約60キロに位置する、美しき隠岐諸島。
ユネスコ世界ジオパークにも認定された自然豊かな諸島に属する西ノ島町は、
隠岐を代表する名勝・国賀海岸や
後鳥羽上皇が島流しにあった際に灯台代わりになった焼火神社があったり、
江戸時代には北前船の寄港地(風待ち港)だったりと、
歴史的な海洋文化の香る地でもあります。
そんな西ノ島町に、ただひとつあるコーヒーショップ〈Sailing Coffee〉。
古くからにぎわいをみせる浦郷地区の一角にあるこちらは、
松江が誇るコーヒーショップ〈CAFFÉ VITA〉が
手がけるブレンドコーヒーが飲めたり、
140年余りの歴史を持つ松江の〈袖師窯〉でつくられた
オリジナルのコーヒーカップが使われていたりと、
島根の魅力が詰まったモダンなお店です。
オーナーの森山勝心さんは、
もともと父親の故郷ということもあり、
学生時代から隠岐で広告制作やイベント制作など、
さまざまなプロジェクトに取り組んできました。
それから大学卒業後に東京の企画プロデュース会社を経て、
導かれるように隠岐へと拠点を移したといいます。
「さまざまな側面を持たせておくためにも、
拠点となる場所にはコーヒーショップを併設したくて。
前職のボス、ライフスタイルプロデューサー・浜野安宏の言葉で
『おもしろいまちにはカフェと映画館がある』というものがあります。
この店も、生活の延長にあるにぎわいにつながる存在になれたら。
純粋に、自分が隠岐にあったらいいなと思うお店をつくりました」(森山さん)
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お店は内と外をつなぐ開放的なファサードが特徴で、
ストリートに開け、人々の交流が生まれやすいようにリノベーションされています。
「お店は自身のプレゼンテーションの場だと思うので、
理想のかたちを追求しました」と森山さん。
店内には、イラストレーターのオカタオカさんやzuckさんなどの作品が飾られ、
椅子はイームズ、スピーカーは〈sonihouse〉と、どこか都会の風が吹くよう。
「北前船の寄港地でいろいろな文化が入ってきていたように、
いろいろなアート作品も飾っています」(森山さん)
ドリンクメニューはペーパードリップコーヒー(400円)、
エスプレッソ(350円)、カフェラッテ(500円)など。
このコーヒーのブレンドを手がけている〈CAFFE VITA〉の門脇裕二さんは
バリスタ日本一に輝いただけでなく、学生時代はセーリングで国体出場という経歴の持ち主。
それがお店のコンセプトにも合致し、
船長という意味の“スキッパー”ブレンド、
仲間(クルー)と一緒に楽しく飲んでほしいという想いが込められた
“クルー”ブレンドの2種類のオリジナルブレンドが開発されました。
デザートメニューもあり、パウンドケーキやマフィン、
焼きプリン、チーズケーキなど、日替わりで2種ほど登場。
袖師窯とのマグカップ(3600円)は、隠岐の海をイメージした鮮やかなブルー。
カップの底には〈Sailing Coffee〉のサブグラフィック(帆と波)を刻印。
飲み終わったあとにコーヒーが刻印に残り、サブグラフィックが現れます。
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人の流れはオープン当初から変わってないのだそう。
観光で島に来た人はもちろん、
地元の人は銀行や郵便局などのついでに足を運ぶことも多いそうで、
お客さんが店外の友人を呼んで団欒が始まったりと、
森山さんが望んだスタイルができつつあるといいます。
「お店を通じての新しい出会いは毎回新鮮です。
地元の方から観光客の方まで、さまざまな人が来てくださるので。
まさに北前船の寄港地として多様な文化入ってきたように」
西ノ島の文化の交差点〈Sailing Coffee〉。
人と人、そして文化をゆるやかにつなぐまちのハブは
今日も西ノ島の穏やかな空気とともに運営されています。
「人生も“Sailing”のように、
追い風のときがあれば、向かい風のときもあります。
無理して乗り越えられるときもあれば、失敗するときもある。
時にそれは、人生を大きく左右する出来事かもしれません。
危険だと感じたときは、180度戻ることも選択肢のひとつです。
しっかり準備をして、よい風が吹いたときにまた、自慢の帆をあげて漕ぎ出せるように。
〈Sailing Coffee〉が、人々に愛される風待ち場になってくれたら嬉しいです」(森山さん)
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