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〈酒器の美に酔う〉
酒器だいしゅき!
静嘉堂文庫美術館にて
酒器の展覧会を開催

コロカルニュース

posted:2018.6.8   from:東京都世田谷区  genre:アート・デザイン・建築

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Yu Miyakoshi

宮越裕生

みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。

東京・世田谷の静嘉堂文庫美術館にて、お酒を盛る・注ぐ・酌み交わすうつわ、
そしてお酒を呑む人びとをテーマとする企画展〈酒器の美に酔う〉が開催されています。

東洋では、古くから神に捧げ、神と人とをつなぐ神聖なものとされてきたお酒。
そのお酒を盛る酒器もまた、祭や儀式のなかで重要な役割を果たしてきたといいます。
やがてお酒を飲む習慣が普及すると、季節やおもてなしの趣向にあわせて
多彩な酒器がつくられるように。
本展ではそんな酒器にフォーカスをあて、およそ3000年前の中国古代から
幕末・明治までの中国・朝鮮・日本の酒器の世界とお酒をめぐる美術を紹介します。

〈静嘉堂文庫美術館〉建築や庭園も素敵です。文庫の建物は大正時代のイギリス郊外住宅のスタイルを顕著に表すつくり。

〈静嘉堂文庫美術館〉建築や庭園も素敵です。文庫の建物は大正時代のイギリス郊外住宅のスタイルを顕著に表すつくり。

静嘉堂文庫美術館は、三菱の創業者として知られる岩﨑彌太郎の弟であり、
2代目社長をつとめた岩﨑彌之助と、その息子で4代目社長の小彌太の
父子二代にわたる蒐集品を収蔵・展示する美術館。

所蔵品は静嘉堂文庫と美術館合わせて、
和漢の古典籍約20万冊と、東洋古美術品およそ6,500件。
そのなかには国宝7件、重要文化財84件も含まれ、世界に3点のみ現存する
国宝『曜変天目』は、茶道具そして中国陶磁の至宝として知られています。
本展では、その『曜変天目』も見られるそう!

国宝『曜変天目』建窯 南宋時代(12〜13世紀)口径12.2cm 室町時代の文献『君台観左右帳記』において、唐物茶碗「土之物」(陶製の茶碗)のうち、もっとも貴重で高価な茶碗として分類格付けされてきた「曜変」。福建省建窯の焼成品で偶然の所産と見られている。現在、世界中で現存する曜変天目(完形品)は、日本にある三碗のみ。京都・大徳寺龍光院、大阪・藤田美術館と静嘉堂文庫美術館に所蔵されており、すべてが国宝に指定されている。

国宝『曜変天目』建窯 南宋時代(12〜13世紀)口径12.2cm 室町時代の文献『君台観左右帳記』において、唐物茶碗「土之物」(陶製の茶碗)のうち、もっとも貴重で高価な茶碗として分類格付けされてきた「曜変」。福建省建窯の焼成品で偶然の所産と見られている。現在、世界中で現存する曜変天目(完形品)は、日本にある三碗のみ。京都・大徳寺龍光院、大阪・藤田美術館と静嘉堂文庫美術館に所蔵されており、すべてが国宝に指定されている。

酒器の美に惚れぼれ!展示の見どころ

見どころは、とにかく美しい酒器の数々。
盛期鍋島色絵水注や気品にみちた高麗青磁など、鑑賞陶器の逸品が目白押しです。

こちらは、うつわを酒の池に見立てた盃。
水禽(すいきん・水鳥)が遊ぶ水辺の景を白と黒の象嵌(※1)で表しています。
龍首の彫刻など精緻なつくりも見事です。

右:『青磁象嵌蓮池水禽文龍頭盃』左:『青磁象嵌水禽双魚文龍頭盃』ともに高麗時代(14世紀) 口径(右)8.3/(左)7.1cm

右:『青磁象嵌蓮池水禽文龍頭盃』左:『青磁象嵌水禽双魚文龍頭盃』ともに高麗時代(14世紀) 口径(右)8.3/(左)7.1cm

こちらは女神さまの誕生パーティーに向かう仙人たちを描いた慶賀の杯。
透きとおるような薄さが美しいですね!
この杯のように、青花(※2)で輪郭を描いた文様に淡い緑を主体とする
上絵付を施した技法を「豆彩」というそうです。

『豆彩八仙文杯』(8口のうち)景徳鎮窯清時代(17〜18世紀)口径6.0cm

『豆彩八仙文杯』(8口のうち)景徳鎮窯清時代(17〜18世紀)口径6.0cm

※1 象嵌(ぞうがん):金属・陶磁・木材などの表面に模様を刻み金・銀・貝殻などの他の材料をはめ込む装飾技法

※2 青花(せいか):白磁の素地に青い文様を描き、ガラス質の透明な釉をかけて焼いた陶磁器。 

画像提供:静嘉堂文庫美術館

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ユニークな酒器から工芸の粋にふれる。

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〈酒器の美に酔う〉展示風景

〈酒器の美に酔う〉展示風景

ふたつめの見どころは、酒宴のうつわにこらされた工芸の粋と遊び心。
こちらは祝宴専用の角樽(つのだる)形酒器。
お祝い用の木製の樽をモデルにした、色絵磁器の徳利です。

『色絵円窓文樽形徳利』有田焼(古九谷様式)江戸時代(17世紀) 高26.6cm

『色絵円窓文樽形徳利』有田焼(古九谷様式)江戸時代(17世紀) 高26.6cm

お次は、茶壺のように見えますが……

『色絵松竹牡丹文壺形段重』 京焼 江戸時代(18〜19世紀)総高26.2cm

『色絵松竹牡丹文壺形段重』 京焼 江戸時代(18〜19世紀)総高26.2cm

なんと、徳利と重箱!

『色絵松竹牡丹文壺形段重』京焼(展開図)江戸時代(18〜19世紀)総高26.2cm

『色絵松竹牡丹文壺形段重』京焼(展開図)江戸時代(18〜19世紀)総高26.2cm

三段に分かれており、下段・中段は酒肴を入れ、上段には酒を入れて
徳利のように使っていたと考えられています。
また、紅色の組み紐などが描かれていることから、
茶の湯の世界で茶人の正月ともいわれる「口切の茶事」の際に
茶壺に施す「壺荘(つぼかざり)」をイメージした意匠だと見られています。
茶の湯と酒宴の世界が交錯しているなんて粋ですね。

そのほか、初公開となる中国古代の青銅酒器や
重要文化財の柿右衛門大徳利など、見どころは一杯。

桜井小太郎(1870〜1953)の設計による文庫や、
鹿鳴館や三菱一号館美術館などで知られるジョサイア・コンドル(1852〜1920)が
手がけた廟(納骨堂)など、建築も見ものです。
また、近隣には〈岡本公園民家園〉も!
本展は6月17日(日)まで。この機会にぜひお出かけになってみてください。

静嘉堂文庫美術館の庭園(春)

静嘉堂文庫美術館の庭園(春)

館内からのぞむ庭園。展覧会を見た後は、ぜひ庭園散策を。

館内からのぞむ庭園。展覧会を見た後は、ぜひ庭園散策を。

information

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酒器の美に酔う

開催日:2018年4月24日(火)〜6月17日(日)

時間:午前10:00〜16:30(入館は16時まで)

休館日:月曜日

会場:静嘉堂文庫美術館

住所:東京都世田谷区岡本2-23-1

アクセス:東急田園都市線・大井町線「二子玉川」駅からバスまたはタクシー。詳しくはこちら

入館料:一般1,000円、大高生700円(20名以上団体割引)、中学生以下無料

電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)/ 03-5777-8686(英語版ハローダイヤル案内)

Web:静嘉堂文庫美術館

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