news
posted:2018.5.11 from:全国 genre:活性化と創生
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
2018年5月、書籍『ローカルメディアの仕事術ー人と地域をつなぐ8つのメソッド』が刊行されました。
編著者は『ローカルメディアのつくりかた』などの著作で知られる影山裕樹さん。
寄稿者は、幅允孝さん、多田智美さん、原田祐馬さん、
原田一博さん、成田希さん、小松理虔さん、山崎亮さん。
本書では、各分野のプロフェッショナルが自らの仕事術について語っています。
たとえばブックディレクターの幅允孝さんは「プロデュース術」を、
編集者の多田智美さんは「チームづくり」を、
アートディレクターの原田祐馬さんは「デザインの方法」を、
コミュニティデザイナーの山崎亮さんは「写真の撮り方」を。
プロデュースから編集、チームづくり、デザイン、ウェブサイト運営、
取材&インタビュー、文章の書き方、写真の撮り方まで、
メディアづくりに必要なことが実例とともに紹介されています。
また、地域の課題にどうやってアプローチしていったらいいのかという
テーマにもふれているので、地域おこしに携わる方にもおすすめの一冊です。
影山さんは数多のローカルメディアを見てきた経験から、
それぞれのメディアの目標が「地域の課題を解決すること」や、
「売り上げをのばすこと」など、バラバラであることに気づいたといいます。
それから「ローカルメディアとは何か」「一体どこにゴールを見定め、
地域にふさわしいメディアをつくっていけばいいのか」ということにフォーカスを絞り、
ローカルメディアへの取材を重ねてきました。
第1章では「あなたのゴールはどこにありますか?」と問いかけながら、
メディアの必要性を明確にすることの大切さについて書かれています。
これからメディアをつくりたいと思っている方は、
この章を読むだけでもコンセプトが明確になっていくかもしれません。
Page 2
影山さんはまちの見方を180度変えるローカルメディアづくりワークショップ
〈CIRCULATION KYOTO〉のプロジェクト・ディレクターを務めるなど、
さまざまな活動を通して地域を見つめてきました。
そんな影山さんは本書のなかで「地域再生にローカルメディアが役立つのか」
という問いに、意外にも「ノー」といっています。
そして、まずはじめにするべきことは、
空き物件の利活用や地方経済を活性化させること、と述べた上で
他の手段やメディアの新しいかたちを探ることも提案しています。
そのトピックのなかで紹介されていたのが、京都市北区の商店街で
使われているポイントカード「ふえるかカード」。
このカードにはお客さんの来店履歴が記録されており、
しばらく買い物に来ていないお年寄りの方には、商店街から自宅へ
「お元気ですか?」と電話がいくようになっているといいます。
「このように、お年寄りの孤立が問題の地域や孤独死が課題になっている
団地なら、
若者も参加する回覧板を構想してみてもいいかもしれない。
通常、フリーペーパーを創刊したら、知り合いのカフェや
市役所のラックに配布する、というアイデアしか出てこないものだ。
せっかく良質なメディアをつくっても、配られる場所が考えられていないと、
届けたい相手に届かない。これではつくる意味がそもそもない」
(影山裕樹さん『ローカルメディアの仕事術』P.30より)
たしかに、お年寄りが多く住む地域では、スマホでアクセスしなければならない
ウェブマガジンやSNSよりも、ポイントカードや回覧板の方が有効かもしれません。
課題から新しいメディアの可能性を探っていく発想方法には、目からウロコが落ちるようです。
幅允孝さんが地域プロデューサーとして関わる城崎温泉で発行された
小説『城崎裁判』のアイデアも、城崎に潜む課題から生まれた一冊でした。
『城崎裁判』は兵庫県豊岡市の城崎温泉でしか買えない、万城目学さんによる小説です。
「最初の訪問時から、ご当地限定販売の本というアイデアが出てきたわけではない。
本や雑誌をつくるにしても、ある地域が唐突にリトルプレスをつくっただけでは
埋もれてしまうと確信していた。城崎は関西圏では温泉地として有名だし
アクセスもしやすいが、東京からだと飛行機を二度も乗り継がなければならないし、
プロペラ機なので、一度に乗れる人数にも限界がある。
そこで、交通の便を逆手にとることを考えた。
志賀直哉をはじめ昔の小説家がそうしていたように、現代の作家を旅館に招き
滞在してもらい、そこで作品を書いてもらい、でき上がったものを
ここだけで売ったら、わざわざ来る甲斐もある」
(幅允孝さん『ローカルメディアの仕事術』P.52より)
『城崎裁判』は初版の1000部が数週間で売り切れ、
現在の販売部数は累計1万部を超えたといいます。
幅さんは制作過程も重視されており、「制作者として関わるだけじゃなくて
現地に来て温泉に入って、地元のメンバーと仲間になる」ことも大事だと書かれていました。
幅さんの仕事術にはユニークなアイデアがたくさんちりばめられています。
続きはぜひ本編でご覧になってみてください。
このほか『ローカルメディアの仕事術』ではマネタイズの方法やコミュニティづくりのアイデア、
企業やNPOが手がけるローカルメディアが実践するまちへの働きかけも紹介されています。
2018年5月28日(日)、刊行を記念し
大阪のスタンダードブックストア心斎橋にて、
影山裕樹さんと多田智美さんによるトークイベントが開催されます。
テーマは「仕事のつくり方、チームづくりにまつわる10か条」。
詳細はこちらから! ぜひチェックしてみてくださいね。
information
書籍『ローカルメディアの仕事術ー人と地域をつなぐ8つのメソッド』
編著者:影山裕樹
著者:幅允孝、多田智美、原田祐馬、原田一博、成田希、小松理虔、山崎亮
判型:四六判
総頁:252頁
定価:2,000円(税抜)
出版社:学芸出版社
発行:2018年5月10日
Web:ローカルメディアの仕事術
Feature 特集記事&おすすめ記事