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〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Yu Ebihara
海老原 悠
えびはら・ゆう●コロカルエディター/ライター。生まれも育ちも埼玉県。地域でユニークな活動をしている人や、暮らしを楽しんでいる人に会いに行ってきます。人との出会いと美味しいものにいざなわれ、西へ東へ全国行脚。
「嬉野茶」「肥前吉田焼」そして「温泉(宿)」。
佐賀県嬉野市はこの3つの伝統文化が息づく唯一無二の舞台です。
〈嬉野茶時 うれしのちゃどき〉は、この伝統を重んじ、
時代に合わせて新しい切り口で、「食す」「飲む」「観る」という空間を生み出し、
嬉野に住む7人の茶農家が、究極のもてなしをするプロジェクトです。
さらに、プロジェクト関係者全員が嬉野に暮らしているということで、
“メイドイン嬉野”、“嬉野から発信をしていく”という意気込みを感じます。
普段は佐賀県嬉野の和多屋別荘、旅館⼤村屋でのみ提供されている
嬉野茶時のティーセレモニーを、東京で体験できるとあって、
インターコンチネンタル東京を訪れました。
釜炒り茶発祥の地と呼ばれる嬉野。
霧深い山々に囲まれた盆地で、
澄んだ空気と清らかな水に恵まれたこの地だからこそできる、
甘みとうまみが凝縮された一杯は、
「こんなにも普段飲んでいるお茶と味が違うのか」と驚きの体験でした。
このお茶を淹れて、サーブしてくれたのは、
嬉野で茶葉の栽培をする副島園の副島仁さんほか、若手の茶農家・茶師の7名。
今回のティーセレモニーは、この7名が代わる代わる、
客前でお茶を淹れていくスタイルです。
茶葉を計る、茶釜で湯を沸かす、湯冷ましに湯を入れる、茶器を温める、と
普段の茶の淹れ方とは明らかに違う、むしろ省略してしまっていたような動作ですが、
そのすべての所作が茶の味を決めるのだと知りました。
茶葉を急須に入れ、適度に冷ました湯を注ぎ、若干の蒸らし時間を経て、器へ。
最後の一滴が最上のうまみと言わんばかりに、落ちきるまで急須をやさしく振り、
やっと一杯がサーブされます。
この所作を繰り返し、ひとりひとりに丁寧に淹れてくれるので、
“あなたのために淹れたお茶です”というメッセージを感じられ、
受け取った側も皆、お茶の味を噛みしめるようにいただいていたのが印象的でした。
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そのお茶と合わせたのは、⽇本料理〈雲海〉料理⻑、吉安健さんによる特別な料理。
⾷前茶から⾷中茶、⾷後茶まで、数種の嬉野茶の個性と響き合うように、
料理の⼀品⼀品を吟味し、
お茶の成分を利⽤した伝統的な会席料理の技法を⽤いながら、
お茶そのものや粉末を料理の⾹りづけや隠し味として⽤いるなど、
お茶の⾵味の豊かさを⽣かしています。
今回の〈雲海〉では、佐賀⽜を使った茶⾹の逸品をはじめ、
塩ポン酢で味わう嬉野温泉⾖腐の徳利蒸し、
ふぐのスープと嬉野茶をブレンドした、極上のふぐ茶漬けなどがいただけます。
夜の部は、上記の料理のほか、嬉野茶で茶振りをしたナマコの海⿏腸和えや、
粉末茶を使った旬の味覚の揚げものなどがいただけ、目でも舌でも春を感じられます。
こちらの特別コースは、3月15日までの提供です。
副島さんは「急須がない家庭が多いと言われていますが、
新しいお茶の飲み方を知ってもらえるきっかけとなれば」と話していました。
嬉野茶のおいしさと、器、温泉を合わせたすばらしさを、
何十年、何百年と先につなぎ、伝えるために始まった〈嬉野茶時〉プロジェクト。
若手茶農家のこれからの仕掛けに注目をしてみてください。
information
嬉野茶時
ANAインターコンチネンタル東京〈雲海〉での、特別懐石コース・特別御膳は3月15日まで。
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