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posted:2018.1.26 from:東京都港区 genre:ものづくり
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
意外性のある素材と伝統的な職人の技術、
そしてそれらを組み合わせたデザイナーの感性から生まれた
コンテンポラリージュエリーブランド〈SIRI SIRI(シリシリ)〉。
今日はSIRI SIRIが発表するコンテンポラリージュエリーの魅力を、
少しだけご紹介したいと思います。
SIRI SIRIはデザイナーの岡本菜穂さんが2006年にスタートさせたブランド。
その端正な美しさは、SIRI SIRIが「自由の探求者」と表現する——既成概念に縛られず、
自身の美意識に忠実な人たちから、根強く支持されています。
岡本さんは学生時代に建築や空間デザインなどを学び、
インテリア業界を経てブランドを立ち上げたのだそう。
そのせいか、作品にはどこか建築的な構造美が感じられます。
シンプルで潔いかたちは、既存の考え方にとらわれない自由な発想から生まれたもの。
ジュエリーには、しばしば日本の伝統工芸の技術が取り入れられています。
なぜなら、それらの技術が新しいアイデアやデザインにフィットするから。
伝統工芸は、SIRI SIRIを構成する数ある要素のひとつにすぎないのです。
たとえばブランドの代表作である「KIRIKO Ring」や「KIRIKO Bangle」は、
江戸切子(ガラスの表面にカットを入れる技術)の職人さんが、
ひとつひとつ手作業で仕上げています。
表面に施されているのは、槌目(つちめ)模様のカット。
見る角度によって微妙に照りかえしが変わったり、かすかに曇ったり。
繊細な表情が美しい、飽きのこないデザインです。
制作課程では、いままでにないデザインをかたちにするため、
職人さんの工房で何度も試作を繰り返します。
ジュエリーとしての仕上がりの滑らかさや、強度の不安が無いように試作を重ねて検証し、
やっと世に送り出せるのです。
下の写真は「CLASSIC Earrings CROSS mini」のパーツを仕上げているところ。
「もともとは真っ直ぐな長い棒状のガラスを、理科の実験で使っていたような、
酸素とガスで温度を調整するバーナーの火で溶かしながらかたちをつくっています。
溶けてくるガラス棒を片手で回しながら、炎の中の変形するガラスを見て調整し、
思うように仕上げていくことが大変難しく、正に職人技です。
オレンジに光りながら次第にSIRI SIRIのかたちになっていくさまは、
何度見てもドキドキ、興奮します。
クロスミニのパーツはディテールが複雑なため、サイズを細かく測りながら形成していきます。
クルクル回しながら、ガラスを伸ばしたり、ためたり、工具で形を整え、
切ったりくっつけたり、そして測ってまた整え……の繰り返し。
職人さんの手は休みなく動き、あっという間にクロスミニのパーツができていきます」
(制作部 福田さん)
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ヤシ科のつる性植物、籐を使った「ARABESQUE」シリーズも、
初期から続くコレクションのひとつ。
上の写真は、水引のあわじ結びから着想を得た「ARABESQUE Bangle CLEAR 」。
籐が編みだす幾何学的な模様とガラスの組み合わせが新鮮です。
SIRI SIRIでは200種以上もある籐のなかから適した素材を選び、
1本1本、極限まで磨きあげジュエリーに仕上げています。
「籐はとてもしなやかで軽く、水に浸して形成することで
複雑な曲線を表現できる素材として重宝されています。
やはり自然素材のため、素材の入荷ごとに色や硬さが違います。
それを選別したり、“肌に触れる”ジュエリーにするために、
表面を1本1本磨き上げたあとに形成し、仕上げの際に毛羽立ちを
丁寧に取り除いたりと、多くの工程が必要となります」(制作部 福田さん)
「籐の断面には無数の穴が空いていて、制作していただいている先生に
“籐は呼吸している”と聞き、ジュエリーとしての愛しさが更に増しました。
ジャングル奥地のトゲトゲの植物から、
長い工程を経てひとつひとつ丁寧に仕上げられた、軽くて肌馴染みの良いジュエリー。
ぜひ手にとって、触って、身に着けてみてください」(制作部 福田さん)
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SIRI SIRIでは木のジュエリーも手がけています。
こちらは「江戸指物(えどさしもの)」の職人さんとの
コラボレーションから生まれたピアス「WOOD Earrings DOUBLE STARS」。
江戸指物は、江戸で発展した茶道・邦楽用品や机、箪笥などの木工品。
基本的には釘を使わず、ノミや小刀などで彫り込んだ凸凹を組み合わせてつくられています。
木材の美しさを生かし、江戸の粋をシンプルに表現しているのが特徴です。
「木の一番の魅力は、木材そのものの持つ“木目”にあります。
使用する場所により、また自然のものなのでひとつとして同じ模様は無く、
まさに世界にひとつだけの表情になります。
一度見た、御蔵島の島桑で作られた骨箱は、形はシンプルでしたが、
木目の美しさを最大限に生かしたものでした。
ただひとつしかない儚さと誇らしさが、とても心に残っています。
SIRI SIRI のジュエリーとしてつくっていただくものも、
必要数量より少しだけ多く制作していただき、
その中からできるだけ対になるものを選んで最終仕上げへと進めます。
指物のカットの精巧さと、木材の唯一無二の模様で構成される
ウッドコレクション、ぜひ見くらべてみてください」(制作部 福田さん)
デザイナーの感性は古きも新しきも超え、これまでにない作品と技術を生み出します。
いまでは伝統と呼ばれる技術も、そんな風に時代の先端をいくクリエイターたちが
かつて生みだしたものだったのかもしれません。
SIRI SIRIのジュエリーは東京・西麻布にある直営店や世界各国の取扱店、
公式オンラインストアで販売しています。
また、直営店では毎月第2金曜日の夜に、SIRI SIRI的、優雅な時間を楽しむイベントや、
毎週火曜日にオープンランチなどのイベントも開催しています。
くわしくはFacebookをチェックしてみてくださいね。
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