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滋賀県長浜市・米原市(湖北地域)

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4 広がり続けるお米のチカラ。 青おにぎり

偶然の出会いをむすんだ、
家倉米のもっちり玄米おにぎり。

011年11月、京都に「青おにぎり」をオープンした青松としひろさん。
京都の中心地からやや離れた銀閣寺があるエリア、
それも裏通りに店舗を構えている。近所の小学生たちがたむろする、
まるで駄菓子屋の兄ちゃんのような存在だ。
また店舗とは別に、
毎日リヤカーにおにぎりを積んで、移動販売もしている。
こちらは細川徹さんの担当。
岡崎公園や祇園周辺、寺町商店街などに出没中だ。

人気メニューのひとつ、玄米のおにぎりには、
konefa samuraiの家倉さんのお米が使われている。
「玄米は、無農薬のミルキークイーンを探していたとき、
偶然、知り合いを経由して家倉さんと知り合って、
しかもそれをつくっていると!
彼は若い農家なのにがんばっていて、顔は濃いけど笑顔が素敵(笑)。
農家フェスにも遊びに行っていたし、話を聞き、いいお米だったので、
彼の玄米を使わせてもらうことにしました。
そういう縁を大切にしたいんです」

ミルキークイーンは粘りが強い。
玄米というと1粒1粒のしっかりした歯ごたえが好きな人が多いと思うが、
こちらの玄米おにぎりはもっちりした食感。
冷めても甘味が残るというので、おにぎりには最適だ。
「もっちり感を出すような焚き方にもこだわっています。
圧力鍋のなかに土鍋を入れることで、二重構造にして炊いています。
でも1回に25個分しか炊けないんですよ」

今はまだ、家倉さんの玄米の生産量/ストックも少なく、
青おにぎり側の製造にも手間がかかることから、
1日の数量がかなり限られている。
しかし次回の収穫以降は、量を増やしたり、
新たな玄米商品も考案予定だそうだ。
「去年の収穫のとき、湖北の田んぼに行って現場を見せてもらったり、
手伝ったりしました。もちろん彼もお店に遊びに来てくれたこともあるし、
一緒に飲みに行ったこともあります。
そういういい間柄になれる人だからこそ、
今後の収穫とか取引量の話も進めていけるんですよね」
おにぎりをひとつ、ご馳走になる。
握り始めたその手には、ほとんど力が入っていないように見える。
やさしく、大事に。
口に入れた途端にフワッとほぐれていく。

「おにぎりはただのおにぎり。老人も子どもも食べる。
日本人にとって、もっとも簡単な食のコミュニケーションだと思います。
だから僕は、どこのお米がすごいとか、うちのおにぎりが最高だとか、
一切お客様には言いません。そういうのは好きじゃない。
生きてきたなかで、信頼できると思った人ならばいいんです。
僕もそのときの精一杯の心を込めておにぎりを握らせてもらいます。
でもそれがおいしいかどうかは、お客さんが決めること」

お米を使った料理のなかで、最もシンプルなメニュー。
農家としてもお米の味がダイレクトに表現されるおにぎりが、
こんなにも大切なコミュニケーションツールとして機能しているなんて
うれしい限りだろう。
偶然の出会いが生んだおにぎりかもしれないが、
モノづくりへの愛情溢れる姿勢が、
縁を引き合わせて“むすぶ”のだろう。