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連載

〈輪島キリモト〉
漆器の素材を生かしてつくる
「あすなろシリーズ」

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.065|Page 1

posted:2015.4.8  from:石川県輪島市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

editor profile

Ichico Enomoto

榎本市子

えのもと・いちこ●エディター/ライター。東京都国分寺市出身。テレビ誌編集を経て、映画やカルチャーを中心に編集・執筆。コロカルではアート関連の記事や、コロカル商店を担当。出張や旅行ではとにかくおいしいものを食べることに余念がない。

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画像提供:輪島キリモト、大治将典

輪島キリモトからつながる石川の森のはなし

石川県は、総面積のうち7割が森林面積を占める、森林資源豊かな土地。
岐阜県との県境に位置する、標高2702メートルの霊山・白山にはブナの天然林もある。
この森林面積の約9割が民有林となるが、
戦後の拡大造林の推進により、そのうち4割が人工林として造成されてきた。
樹種は、スギ71%、能登ヒバ(アテ)12%、マツ9%だが、
なかでも能登ヒバは、能登地域に植えられる石川県独特の樹種。
昔から建材としてはもちろん、木工品などにも使われてきた。
現在、この人工林の約6割が成熟期を迎えているといわれるが、
国内全体での木材自給率は低く、木が森に残されてしまうような状況が続いている。

能登半島の穴水町。能登ヒバが植林され、手入れされている森。

眠っている素材を生かしたプロダクト

能登半島の漆器のまち輪島で、150年以上にわたり
ものづくりをしている「輪島キリモト・桐本木工所」。
ほかの漆器の産地と同じく分業制が根づく輪島で、
お膳の猫脚や仏具などの木地をつくる「朴木地屋」として昭和初期に創業し、
現在は三代目の桐本泰一さんが多くの職人さんを束ねながら、
商品の企画から販売まで手がけている。

石川県も他県と同様、森林の状況はあまりよくないというが、
輪島の場合は山が浅いこともあり、人の手が入っているほうだという。
というのも輪島では大工さんが地元材を使うことが多く、
15年ほど前までは住宅の地元材使用率は8割を超えていたのだそう。
その地元材が、スギとアスナロ。ヒノキ科の針葉樹であるアスナロは、
たとえば青森県では「ヒバ」と呼ばれるなど、地域によって呼び方が異なる。
「アテ」という石川県の県木も、このアスナロのこと。
耐水性にすぐれ、ヒノキに似たさわやかな香りがあり、
抗菌性のあるヒノキチオールを含んでいる。
スギよりも水に強いため、外壁材など、多く建材として使われてきたが、
輪島では文箱や屠蘇器といった漆器の木地に長く使われてきた素材でもある。

「匙などにはホオノキ、椀にはケヤキなども使われていますが、
さまざまな漆器の木地にアスナロが使われてきました。
アスナロ中心といっても過言ではないくらいです」と桐本さんが言うように、
輪島の人たちにとってはなじみ深い素材なのだ。

輪島塗の木地として古くから使われてきたアスナロ。ヒノキチオールを多く含み、殺菌効果がある。

アスナロを木材として仕入れてから木地として使用するまでには時間がかかる。
狂いを少なくし、長持ちさせるために、水分量が一定になるまで木を落ち着かせるのだ。
天日で3年、その後風通しのいい場所で1年、
さらに倉庫で5~6年ほど寝かせたものを使うのが基本。
だが、現代では漆器が日常であまり使われなくなったこともあり、
木が倉庫に眠ったままの状態になってしまっていた。
これらをなんとか生かせるものがつくれないだろうかと生まれたのが、
輪島キリモトの「あすなろシリーズ」だ。

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