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連載

〈マエダ木工〉
スギ家具には傷がつきやすい。
しかしそれは子どもの
日記である。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.060|Page 1

posted:2015.3.24  from:福井県福井市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:今津聡子

マエダ木工からつながる福井の森のはなし

土地面積は約42万ヘクタール、そのうち森林が約75%を占めている福井県。
民有林の面積は約27万ヘクタール。
そのうち人工林が約40%を占めていて、その90%近くがスギである。
間伐期や主伐期を迎えている森林資源は増えているが、
ともに十分に利用されていないのが現状である。

平成22年から始まった〈ふくいの元気な森・元気な林業戦略〉では、
“木を伐って使う”流れを太くする取り組みを強化するため、
林業を産業として再生する“経済林”と
自然災害や鳥獣害から暮らしを守るなど、多面的な機能を発揮する“環境林”の
ふたつの側面から、多くのプロジェクトを進めている。

思い出とともに一生ものになる、子ども向け家具

福井市にある〈マエダ木工〉の前田智之さんは、大学を卒業後、
京都の木工所2か所で、合計9年の修業を積んだ。
さらにドイツに1年間、木工留学し、マイスター学校で勉強。
帰国後、地元福井に戻り、マエダ木工を開設した。
現在の主な業務内容としては住宅のつくりつけ家具やリフォーム、
百貨店の什器などを製作している。

代表の前田智之さんは二児の父。

これまでは外国産材か、国産でも広葉樹を使用することがほとんどだった。
あるとき、東海地方の木工仲間で組んでいた
〈未来家具〉というグループに誘われて参加した。
“ものづくりを通して森づくりを”というテーマで、若手木工作家が地域の針葉樹を使い、
次世代に残したい家具や小物を提案するというグループだ。
この展示会に出展するのに、本格的に県産スギを使ってみたところ、
「すごく使いやすかった」という。

「やわらかすぎて難しいというイメージでしたが、
傷がつくといってもまあまあ、それなりかなと。
それよりも淡いピンクの見た目がすごくきれい」と新しい発見があった。

「スギはあたたかいし、手触りがいい」という前田さん。

未来家具チームのなかでも、前田さんに子どもがいることもあり、
自然と子ども家具に注目していった。
そして〈日記家具〉という、新しい子ども向け家具ブランドを立ち上げることになる。

スギと家が合体したロゴ。

「当時、一生使い続ける家具をつくりたいと思っていたんですが、
実際は簡単な話ではありません。スギだと傷がつきやすいので、
家の中心に置くキャビネットのようなものはダメだろうと。
しかし子ども用家具なら、小さいころに買ってボロボロになっても、
思い出とともに味になっていくと思ったんです。
もちろん当初は、“スギだから傷がつきやすいことを大きく謳っておかないと
問題になる”と思っていました。
だけど思い切って、“傷がつきますということを特徴にしてしまおう”と、
考え方を切り替えたんです」

子どもが傷をつけないはずがない。だったらコンセプトにしてしまえばいい。
スギの傷つきやすさを逆手にとったのだ。
「むしろ傷をどんどんつけていってほしいくらいです」と前田さんが言うように、
“柱の傷”の発想。それはひとつひとつが思い出であり、子どもの“日記”なのだ。

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