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連載

〈アサヒ〉
独自の乾燥技術が日田杉を
3世代家具に変える。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.059

posted:2015.3.18  from:大分県日田市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

text & photograph

Yuichiro Yamada

山田祐一郎

やまだ・ゆういちろう●日本で唯一(※本人調べ)のヌードル(麺)ライター、フリーライター。製麺工場の長男として福岡で生まれ、主に麺を食べて育った。うどん・そばにおいては専門書にも連載を持つ。全国の麺の食べ歩きを記録するwebサイトを連載中。
http://ii-kiji.com

アサヒからつながる大分の森のはなし

別府、湯布院という全国的な知名度を誇る観光地を有する大分県。
森林面積は約45万3000ヘクタールあり、県土の71%を占める。
そのうち人工林は53%、天然林が38%となっており、
この豊かな森林資源は木材の生産のみならず、
県の名産であるシイタケの生産にも寄与している。

大分県では3つの柱によって森林の整備・保全を進めている。
ひとつが、荒廃森林を整備することによる「水をはぐくみ、災害を防ぐ森林づくり」。
ふたつ目が、自然と触れ合って学べる「子どもの森」の整備や
地域の特色ある森林を「百年の森」として整備する「遊び、学ぶ森林づくり」。
最後が山づくりに携わる人々が木を伐った利益で植林することで
「長期育成循環林」を整備する「持続的経営が可能な森林づくり」だ。
健全な森林の育成サイクルをつくり、維持することで、
大分では県をあげて豊かな森林づくりに取り組んでいる。

再造林された森林。大分県の民有林におけるスギ人工林の蓄積は全国3位。また、スギの丸太生産量も全国3位である。

日田杉の価値を高める。

家具製造会社〈アサヒ〉がある大分県日田市は、かつて幕府の直轄地・天領だった。
その広大な土地の8割を占める緑の森は、
大地に根を下ろした良質なスギが天に向かってまっすぐと伸び、
“日本三大美林”とも呼ばれている。

そんな日田市のスギは、古くから〈日田杉〉という名前で親しまれてきた。
日田杉の特徴は、表面はかたく、赤身の部分が多く、
害虫や湿気による被害を受けにくい。
木目は細かく、赤身は濃く、艶もあり、建材として用いられることが多い。
ただし、これらの特徴は、適切な乾燥方法によって処理されていることが前提だ。

工場へ運び込まれた日田杉。アサヒでは60~70年ものの日田杉を用いる。

板状にして積み上げ、随時、乾燥処理にかけていく。乾燥時間は外の湿度に応じて調整する。

乾燥前の状態でも赤身がしっかりと主張する。乾燥後は木目がくっきりと浮かび上がり、赤身がほどよく馴染んでいく。

日田杉の中でも大半を占める「ヤブクグリ」種は、
一般的な機械乾燥を施すと中心部が黒くなってしまい、
梁や柱といった高値で売買される構造材としては流通させられない。
中心部が黒くなったもの、根元の曲がっている部分については、
日田の伝統工芸〈杉下駄〉に加工されている。

ヤブクグリ、ひいては日田杉の価値を向上させるため、
日田では黒くさせないための方法について古くから考えられてきた。
ひとつが、風通しのいい山の斜面での天然乾燥だ。
ただし、十分に乾燥させなければならないため、広い場所、
そして何より約2年間という長い歳月が必要である。
もうひとつが技術・工夫による乾燥方法だった。

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乾燥によってスギを変える。

創業からおよそ70年が経つアサヒもまた、
独自の乾燥技術を創業時から模索していた。
アサヒはもともと、丸イスをつくる小さな町工場だったが、その後、製造商品が拡大。
現在は工場で90人の社員たちが家具づくりに携わっている。

そんなアサヒが社内に木材自然乾燥場を設け、
大型木材乾燥機を導入したのは、昭和40年頃だった。

「環境が整ったことで、乾燥方法の研究は一気に本格化しました。
試行錯誤の結果、独自の乾燥方法が確立でき、
現在、スギの木が納品されてから使用できるまで約1か月半しかかかりません」
そう教えてくれたのは、この道40年のベテラン、工場長の十時裕治さんだ。
アサヒでは短期間のうちに、家具材用として木材の含水率を7~10%まで抑える。
通常のやり方では内部から割れてしまうが、アサヒの技術ではそんな惨事は起こらない。

工場長の十時裕治さん。90人いる工場の職人たちを束ね、若手への技術の伝授にも力を注ぐ。

乾燥室に入れられた日田杉は、頃合いまで水分を抜かれていく。詳しい乾燥方法は企業秘密だ。

美しい木目をそのままの姿で。

現在、アサヒでは、ソファからテーブル、ローテーブル、チェア、
ダイニングテーブルまで、日田杉を使った幅広いプロダクトが生産されている。
特に人気を集めているロングセラーが、
耳(丸太を縦に切った際に生じる両端の皮が付いた部分)をそのまま生かした
ロングテーブルだ。

取材日にはロングテーブルのほか、〈風早〉というモデルの肘掛部分も製造されていた。

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その製造工程はいくつもの段階を経る。
大枠の形を荒取りによって削り出し、丁寧にカンナをかけ、
専門機器を使ってスギを真っ直ぐにならしていく。

それから腐れや硬化によるヒビ割れ、
抜け落ちそうな節の部分にヒノキの枝を埋め込む“節埋め”を行い、ヤスリをかける。
さらに表面の強度をアップさせるため、“夏目”という
夏場に育ったやわらかい部分だけを削る“うづくり加工”を施す。

荒取りの様子。木屑を取り除きつつ、一枚一枚、丁寧に処理していく。写真では長さ2100mmの板を加工している。

節埋めの後に行うヤスリがけは、ふたりがかりで。息を合わせ、ムラが出ないように処理を施す。

残った日田杉の端材は、接着し、テーブルの脚の部分になる。

下地の塗料を着色した後、独自の塗装でコーティング。天板の表情が際立つうえに、強度もアップする。

「長さのあるテーブルだからこそ、スギならではの
美しい木目を最大限に生かすように心がけています。
このテーブルは2枚のスギ板を組み合わせる設計になっていますので、
並べたときに一体感が出るように合わせているんですよ」
十時さんはそういって、テーブルの天板を優しく撫でた。
その表面には、木目を長きにわたってきれいに保つため、
独自に開発した塗料を塗り、強度を上げているそうだ。

2枚の木目が違えば違うほど、バランスが悪くなる。十時さんは長年の経験でベストな組み合わせを探るという。

アサヒが掲げる“三世代で使える家具”というモットーは、
日田杉を使ったプロダクトでも変わらない。
使い込むほどに味わいの出るロングテーブルは、
家族団らんの場を美しい姿のまま、見守り続ける。

木のある暮らし 大分・アサヒのいいもの

杉ロングテーブル 価格:112,000円~(税別)。サイズは最小のモデルでW1500×D700~800×H350mm。完全受注生産で、長さは1.5~4mまで10cm単位で対応してくれる。

information


map

アサヒ

住所:大分県日田市玉川3-659

TEL:0973-23-5163

http://www.asahi-mok.co.jp

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