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連載

〈noshu〉
能登ヒバを使った、
オリジナル家具

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.049

posted:2015.2.6  from:石川県金沢市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Kanako Tsukahara
塚原加奈子

つかはら・かなこ●エディター/ライター。茨城県鹿嶋市、北浦のほとりでのんびり育つ。幼少のころ嗜んだ「鹿島かるた」はメダル級の強さです。

credit

撮影:片岡杏子

noshuからつながる石川の森のはなし

石川県は、総面積のうち7割が森林面積を占める、森林資源豊かな土地。
岐阜県との県境に位置する、標高2702メートルの霊山・白山にはブナの天然林もある。
この森林面積の約9割が民有林となるが、
戦後の拡大造林の推進により、そのうち4割が人工林として造成されてきた。
樹種は、スギ71%、能登ヒバ(アテ)12%、マツ9%だが、
なかでも能登ヒバは、能登地域に植えられる石川県独特の樹種。
昔から建材としてはもちろん、木工品などにも使われてきた。
現在、この人工林の約6割が成熟期を迎えているといわれるが、
国内全体での木材自給率は低く、木が森に残されてしまうような状況が続いている。

能登半島の穴水町。能登ヒバが植林され、手入れされている森。

故郷の木に込められた思い

石川県内で製作されている〈noshu(ノーシュ)〉は、
能登ヒバの間伐材や端材活用を考え、2010年にスタートした家具ブランドだ。

母体となっているのが、金沢市内の〈樋爪住宅研究所〉。
同社は、建築士の樋爪憲三さんが代表となり、
地元の建築関係各社の出資によりつくられた住宅メーカーだ。
能登ヒバ、加賀のスギ、珪藻土や和紙など、
石川県産の素材を使った家づくりを推進している。
そのような住宅空間のなかで、同じく能登ヒバの集成材を使った家具が考案された。

金沢市内に建つモデルハウスを訪ねると、樋爪さんが迎えてくれた。

noshuの丸テーブルとイス。イスの座面部分に使われている布はペットボトルを再生してつくられている。

能登ヒバの集成材でつくられた本棚。

床や柱に石川県のスギや能登ヒバを使っているというモデルハウスは、
中央に薪ストーブが設置され、木のぬくもり感じる、とっても気持ちのよい空間。
ここには、noshuの家具も展示されている。

「コストの問題で外材を使用してきましたが、
私も石川県の素材を使いたいという思いはずっとありました。
樋爪住宅研究所を立ち上げ、
このモデルハウスをつくるのには県の木材を多く使いました」

そう話す樋爪さんが案内してくれたのは、本棚。
「アテの集成材でつくった本棚です。
集成材は、無垢材に比べると手頃なので活用を広げられないかと。
たまたまこの板が余ったので、家具をつくれないかと職人に相談したところから
noshuの家具づくりがスタートしました」

気になったのは、能登ヒバのことを “アテ”と呼ぶことだ。
「能登ヒバのことを地元では、昔から“アテ”と呼んでいるんですよ。
なぜかはわかりませんが、そう言いますね。
ほかには、“アスナロ”とも呼ばれています」と教えてくれた。
なるほど能登ヒバには、3つの呼び名があるらしい。
樋爪さんと一緒に、まずは能登ヒバの生産地である能登半島へと向かった。

樋爪住宅研究所の代表であり、建築士の樋爪憲三さん。

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(協)能登木材総合センターに積まれる、能登ヒバの丸太。

能登森林組合にいただいた冊子『能登のあて』によると、
能登ヒバは、〈アスナロ〉という木の変種〈ヒノキアスナロ〉という学名を持ち、
一般的には、ヒバと呼ばれる樹種と同じ木だといわれている。
なぜ能登では、アテ(档)と呼ばれるようになったのかというと、
気候風土が能登ヒバを育てるのに適し“当たった”との説があるらしいが、
はっきりとした真相はわかっていないそうだ。

さらに、アテのなかでも性質の違いから、
クサアテ、マアテ、エソアテ(スズアテ)、カナアテの、
4種に分けられるというから、なんだか面白い。
加工されるものによって使い分けるという。

能登ヒバの丸太。ねじれているのが特徴。ヒノキのようなすーっとした気持ちのよい芳香を放つ。

能登ヒバは300年ほど前から能登で植林され始めたというが、
造林が盛んになったのは、戦後。大正時代の15倍というから驚く。
「能登ヒバは、丈夫で耐久性にも富み、害虫や腐朽にも強く抗菌力もある。
建材として非常に優れた木材なんです」

それゆえ、能登ヒバの市場価格はスギとくらべると約2倍。
地元産業の核として発展してきたが、
昭和50年代以降は下がり続け、良材といわれながらも、
「全国の銘木に比べると、まだまだ知られていない。もっと活用される道があるはず」
と樋爪さんは、これまでも能登ヒバを使った小学校建築を手がけたり、
集成材を住宅に生かしたり、積極的に能登ヒバを取り入れてきた。

自身も能登の出身という樋爪さんは、
幼いころからこのアテという木材に親しんできたという。
「故郷の木材の活用をもっと広めたい」という思いが、
noshuには込められているのだ。

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続いて訪れたのは、能登ヒバを多く扱っているという製材所の〈鳳至木材〉。
戦後の昭和21年創業以来、能登の木材をずっと見つめてきた。

作業中だったのにも関わらず、快く対応してくれた四住さん。

鳳至木材で、丸太を床材、角材、板材などさまざまな大きさに製材していく。

いまも現役という代表の四住和雄さん。
「アテはアトピー・ぜん息の原因となるダニ・カビの増殖を防ぐ、
ヒノキチオールを多く含む木材だというデータがあります。
最近は、土台や浴室のほかに、子ども部屋に使いたいという
新たな需要が生まれていますよ」と教えてくれた。
やっぱり地元の人は、みなアテと呼ぶらしい。

鳳至木材で出た能登ヒバの端材などが金沢市内で集成材に加工され、
noshuの家具へと使われていく。

家具製作を手がけるのは、
内灘町に工房を構える〈ナカムラ木工〉の中村信吾さんだ。
普段から新築住宅のつくり付け家具などを製作し、
樋爪さんとも、数年来の仕事仲間だ。
「椅子をつくるのは大変でしたね」と話す中村さん。
座り心地やシルエットなど、樋爪さんと相談しながら、仕上げていったという。

ナカムラ木工の作業場の様子。

右から、ナカムラ木工代表の中村さんと、息子の一裕さん、樋爪さん。

これまでnoshuでは、イス、テーブル、勉強机、座卓、
スツール、ベッド、ソファイスなど、さまざまなものがつくられてきた。
現段階では、受注製作のみの展開だが
樋爪さんはインテリアデザイン専門の若いスタッフを採用するなど、
さらなる発展を目指している。
地元の資源を地元の職人たちの手で加工し、流通させていく。
故郷を思う樋爪さんの思いを乗せたnoshuの今後が楽しみである。

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木のある暮らし 石川・noshuのいいもの

ソファ/イス(作例)価格:64,170円~(税別)。

Information


map

noshu/株式会社樋爪住宅研究所

住所:石川県金沢市三口町火225-1

TEL:076-281-6024

http://www.hizume.info/

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