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連載

〈岸家具店〉
地元自慢の金山杉でものづくり。
年輪の自然美が生む、
木口の格子模様

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.044

posted:2015.1.29  from:山形県最上郡金山町  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Kanako Tsukahara
塚原加奈子

つかはら・かなこ●エディター/ライター。茨城県鹿嶋市、北浦のほとりでのんびり育つ。幼少のころ嗜んだ「鹿島かるた」はメダル級の強さです。

credit

撮影:ただ(ゆかい)

岸家具店からつながる山形の森のはなし

山形県の総面積の約7割は、森林が占めており、
水、木材、食料、信仰など、人々は昔から山の恵みと密接に関わってきた。
出羽三山、奥羽山脈などの高峰を有する山地は、
ブナやナラなど広葉樹が多い天然林で、
なかでも日本の山の原風景といわれるブナの天然林面積は日本一だ。
かつて人里に近い雑木林では、
薪や整炭の材料としてコナラやミズナラが多く活用されていた。
一方、人工林のなかで8割以上を占めるのがスギ。
まっすぐ生長するので寺社、家などの建材に向く。金山町の〈金山杉〉、
西村山地域(大江町、朝日町、西川町)の〈西山杉〉などの産地をはじめ、
スギは多く植林されているが、どこも木材需要が減少しているのが現状だ。
森林組合、工務店、建築家、職人が連携し、
地域材を使った住宅づくりが推進されている。

家具の販売店の店主から、木工職人へ。

山形県の北部に位置する最上郡金山町で
岸 欣一さんは奥さまの妙子さんとともに、
地元名産の金山杉を使った木工品をつくっている。
木口を組み合わせてつくる〈かなやま杉木口寄せプレート〉は、
オリエンタルだけどやわらかい雰囲気を持つ表情豊かな木製マット。
店頭に出すと、すぐに売れてしまう人気の品なのだそう。

かなやま杉木口寄せプレート。

金山町の風情あるまちなみは散策スポットにおすすめ。

自然豊かな山々を臨み、白壁と切妻屋根の古民家が連なる金山町の景観。
観光地としても知られる散策エリアのすぐ近くに岸家具店もある。
外観は、額装された風景画や可愛いらしい花壇が飾られている。
木工所とは思えない可愛らしい店構えに、
観光客がフラッと訪ねてくることもあるのだそう。
その理由を「もともと、うちは家具屋だったんですよ」という欣一さん。
なるほど、店内に入って1階を見渡すと、奥にタンスや棚が並び、
入り口付近に欣一さんがつくる木工品が販売されている。
「だから、うちの人はどこかで木工の経験があったわけでもなくて、
これらはすべて素人がつくったものなんですよ」と妙子さん。
それでも、半年先まで注文が入ってしまっているという欣一さんの木工品。
素人でもここまでつくれるのかと感心せずにはいられない。

こちらは木工を始めた当初、趣味でつくったという木のアタッシュケース。欣一さんはこれを持って会議に出ると仲間から好評を博したという。

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公安土木の仕事をしていた欣一さんが、
親が始めた家具店を引き継いだのは、昭和40年代後半。
当時は、婚礼家具などがよく売れ“まちの家具屋さん”として繁盛していた。
「でも最近は、家具といったら量販店で安価なものを買うでしょう。
まちの家具屋さんは必要なくなってしまったんです」

そんな欣一さんが金山杉を使った木工品をつくり始めたのは、いまから12年ほど前。
岸家具店に「金山杉の額がほしい」と依頼があったが、
商品がなかったので、欣一さんは自分でつくってみることに。
もともと家具を組み立てるなどして、木の扱いには慣れていたこともあり、
思ったよりもスムーズに額づくりが進んでいった。
そのとき、欣一さんが気になったのが廃棄される端材だった。
「樹齢100年の金山杉はキレイな木目。もったいなくって」

2階の工房に並ぶ、額や角材。

金山町は江戸時代より金山杉を育て林業で発展してきた歴史を持つ。
秋田県に隣接し山深く雪深い金山町では、
寒さと降雪のため、南方に比べるとスギの成長は遅く、
その分、年輪が緻密な良材が育つのだ。
だから金山杉として出荷するのは80年以上の木。
長い年月をかけて祖先たちが育ててきた金山杉の年輪の美しさはいうまでもない。

空に高くのびる金山杉。

「こんなに目の詰まった端材が出るのは金山杉だからでしょうね。
見てください、この木目だと樹齢120~130年は超えているはず。
みんなおじいさんが育てた木を伐り出しているんですよ」
と妙子さんが教えてくれた。

金山杉の角材の端材を使って、まずつくってみたのはテーブル。
木口部分に現れる木目が何ともいえない模様となったので、
続いて、コースターやアタッシュケース(前述)も製作。
すると、金山町のお土産として観光客の反響は上々。
そしてつくり始めたのが木口寄せプレートだ。

実際に、その製作工程を見せてもらった。
店内の2階部分は工房になっており、
電動のカッターや、さまざまな角材が並んでいた。

まず、数本の角材を1列に並べて貼り合わせ、
木口に沿って数ミリの厚さに薄くスライス。

端材は、近所の製材所や森林組合から購入する。

切り出しただけでも、木口の表情がさまざまなことがわかる。

木口が連なったピースを切り出したら、1階へ移動。
今度は、プレートになったときにキレイな模様となるよう、
切り出した木片を並べ、ボンドを塗る。

貼り合わせる部分にボンドを塗っていく。

規則的に現れる木目を互い違いに重ね、模様をつくる。

最後に、圧力をかけて固定し、その後ヤスリを丁寧にかけていく。
金山杉の質感を生かせるよう、ナチュラルな蜜蝋ワックスで仕上げれば完成だ。
見ていると簡単なようにも思えるが、木工のアイデアとセンスが肝となる。

木のピースを固定していく欣一さん。

現在入っている注文は、地元蕎麦屋のテーブルを10台、
介護施設のテーブル4台やベンチなど、地元からの人気ぶりが伺える。
都内や仙台から金山町を訪れた観光客が気に入り、
造作家具の注文をうけたこともあるのだそう。

木目のバリエーションは無限大!

「おかげさまで、半年先まで仕事がうまっています(笑)。
最初につくったときは、まさかこんなに続くは思いませんでしたね。
木を貼り合わせながら、想像を超える木目の模様ができることが面白いですね」
という欣一さんに、
「ほとんどが、偶然の産物なんですけどね」と妙子さんが耳打ちする。

何気ないきっかけから生まれた、地元の金山杉ならではの木のプロダクト。
自然が育んできた豊かな表情を生かせるのも、
手仕事でひとつひとつ仕上げていくから。
今後も地元に愛されるものづくりを行ってくれるに違いない。

岸家具店の前で、奥さまの妙子さんと欣一さん。取材中、朗らかなご夫婦のあたたかい会話にとても癒された。

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木のある暮らし 山形・岸家具店のいいもの

かなやま杉木口寄せプレート 価格:3,000円(税別)~

information


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岸家具店

住所:山形県最上郡金山町金山2117

TEL:0233-52-2136

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