連載
posted:2015.1.28 from:香川県三豊市 genre:ものづくり
〈 この連載・企画は… 〉
日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。
text & photograph
Akiko Yamashita
山下亜希子
やました・あきこ●香川県高松市在住。広告営業から転身して旅情報誌の制作に携わり、四国内をあっちこっち。ここ数年は瀬戸内の島を旅して本をつくる日々を過ごしています。ウェブマガジン『四国大陸』メンバー。雑誌『せとうち暮らし』で島の移住体験記を連載中。
県内に広がる森林の90%を若いヒノキ林が占める香川県。
まだ若い森が多く、木造住宅の建材は、
県外や外国からの輸入に頼らざるを得ないのが現状だ。
土地がやせているために、ヒノキの生育が遅いのも特徴。
そのぶん、ゆっくりと年輪を重ねながら育つので、目の詰まった良質のヒノキが多い。
この特性はすぐに建材に使えなくとも、もっと身近な家具などに活用する余地はある。
一方で、間伐材の問題がある。
人工林の木々にまんべんなく雨や日光を行き渡らせるためには、
密集した立木を間引く間伐は欠かせない。
間伐された木は、家具などの材木として活用できる。
しかし、現実には間伐材そのものの需要が少ないため、
間伐作業の経費が出ないことからそのまま放置される場合が多い。
こうして山が荒れ果て、健康な木々が育たなくなる。
経済成長とエコの狭間で、間伐材は経済を生み出さない材木とされてきた。
なかでも、小径木間伐材と呼ばれる直径14センチ未満のものは、
若いヒノキ林が多い香川県内にひときわ多い。
この大きさが微妙なもので、最少サイズの柱すらとることができないという
少々やっかいな材木だ。そんな、どこにも使われない小径木間伐材を有効活用して、
県産ヒノキの家具を生み出しているのが、「讃岐の舎(いえ)づくり倶楽部」だ。
小径木間伐材を最大限に使うには、
一本の丸太から45×85ミリの断面の角材を取ることになる。
必然的に、つくれるものはその限られたサイズ内に収まるものとなる。
どっしりと構えた〈HINOKKI-CHAIR〉は、その大きさを最大限に利用した。
余分な加工は施さず、45×85ミリの木材を組み合わせてできたチェアだ。
座ると、もともとの小径木間伐材のサイズ感がイメージできる。
手すりも座面も背もたれも、小径木間伐材の厚みを
そのまま生かしているので重厚感がある。
積み上げた木材の境界線に凹形を掘るなど最小限のデザインを施した。
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HINOKKI-CHAIRの企画・デザインを手がけたのは、同倶楽部代表の菅 徹夫さん。
地元工務店の代表も務める菅さんは、
およそ17年前に、地球規模の環境問題に深く興味を抱き
「建築の知識と技術を生かして、まずは身近なところからエコロジーに貢献したい」
と考えるようになった。その想いが、讃岐の舎づくり倶楽部の発足につながった。
讃岐の舎づくり倶楽部は、もともと2002年の春に、
「近くの山の木で家をつくる運動」の香川県団体として発足した。
メンバーは林業家、家具職人、建具職人、大工、建築士など
木のものづくりに携わる人たちだ。
同倶楽部が年に一度開催する〈大黒柱伐採ツアー〉が好評を得ている。
施主が実際に森に赴き、これから建てる自分の家の
大黒柱が伐採される風景を見るというもの。
施主のみならず、森や木に興味のある一般客も多く参加しているそうだ。
大黒柱伐採ツアーで伐採された木は、
根元に近いほうから大黒柱、4寸柱といった建材となっていくが、
最後に残るのが細い枝をたくさんつけた上部の木。
太さが十分でなく、枝を取る手間がかかるため建材としては到底使えない。
そんな、通常なら廃材となってしまうこの部分を、
菅さんはまるごと住宅建築に使用する方法を考えた。それが、〈木登り柱〉だ。
自分の家づくりのために目の前で伐採された木が、
余すことなくその家のあらゆる場所で活躍する。
そこにはエコロジーの精神だけではなく、
ユーモアを伴って、木の家で暮らす喜びがあふれている。
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木のある暮らし 香川・讃岐の舎づくり倶楽部のいいもの
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讃岐の舎づくり倶楽部
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