連載
posted:2015.1.30 from:大阪府南河内郡千早赤阪村 genre:ものづくり
〈 この連載・企画は… 〉
日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。
writer profile
Takaki Matsumura
松村貴樹
まつむら・たかき●1976年生まれ。京都で育ちながらも、奈良県吉野郡川上村の祖母の家で1年のうち数週間、山の生活を味わう幼少期を過ごす。21歳で単身渡米、ニューヨークで5年間暮らし帰国。2006年にLLC INSECTSを設立。2009年の春、「IN/SECTS Magazine」を創刊。2014年12月15日、最新号(日記特集)を刊行。http://www.insec2.com/
credit
撮影:大塚杏子(からもも)
森の大切さや豊かさを、木工教室や地域材を紹介するコーナー、
ショップ、作品の展示などで感じさせてくれるのが、
金剛山の麓、奥河内にある南河内林業総合センター〈ラ・フォレスタ〉。
大阪府森林組合が運営している。
ここでは、ふたりの木工作家=小山亨さん(K Factory)と
林靖介さんが、それぞれアトリエを持ち、
地域材を使った創作活動やオーダメイド家具などを製作している。
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ここでは数多くのワークショップが催されている。
地元・奥河内の河内材を使ったマイ箸、スプーン、フォーク、
子ども用の椅子づくりなど、地元の森林の一片に触れることで、
森を荒らさず手をかけて維持することの大切さを伝えることも目的のひとつだ。
ちなみに河内材は、スギ、ヒノキの年輪の幅が均一で粘りがあり丈夫なので、
多くは建築用材として使われている。
木工作家として、河内材を家具や小物などの木工製品に
利用していきたいというのは、ふたりの当然の思いだ。
「このあたりのスギ、ヒノキは
やはり構造材に適しているというのが正直なところではありますが、
適材適所に家具にも取り入れていければと思っています。
ショップ内にあるカフェスペースの机とイスは、
ちょうどここに工房を移したときにオーダーされて、
つくらせてもらいました」と小山さん。
工芸作家の林さんは作家活動の一環としてワークショップを企画し
スプーンやフォーク、スツールなどをつくっている。
「楽しみながらだと、その魅力が伝わりやすいですよね。
昨年、ギャラリーからお願いされて、今年の干支をつくりました。
一輪挿しになっているんです」と、木工作家ならではのアイデアが、
河内材の新しい価値を見出してくれそうだ。
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ふたりの作品は家具ショップで多数見ることができる。
バターナイフや携帯電話スタンドといった小物から、
スツール、テーブルや水屋など大きなものまで、さまざまなものが並ぶ。
小山さんの作品の特徴は木目を生かしたキャビネット。
林さんはデザイン性の高い椅子に加えて、額などの小物も多く展示。
アトリエが目の前にある展示空間だからこそつくり手と直接触れ合えて、
完成品からは否応なしにあたたかさが伝わってくる。
木のぬくもりを手づくりの作品が伝え、
木のある暮らしの大切さを木々に囲まれた地が伝える。
ラ・フォレスタを訪れ、作家と作品に触れ合えば、
地元の森を維持していくことの必要性を、
実感として持つことができるのではないだろうか。
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Information
南河内林業総合センター ラ・フォレスタ
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