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連載

〈イマトコ〉
伝統の北山丸太を
現代のプロダクトデザインへ

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.035

posted:2015.1.16  from:京都府京都市下京区  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Yusuke Nakamura

中村悠介

なかむら・ゆうすけ●編集者。大阪市生まれ京都市在住。今回の取材で好きになった絞りは溝が細かく刻まれた、縮めん絞。

credit

撮影:渡邉一生

イマトコからつながる京都の森のはなし

京都府の総面積のうち、74%が森林。
意外かもしれないが、京都市内においても73.7%と割合はほぼ同じ。
その市街地から車で約20キロ、北山エリアでは
京都を代表する地域材、北山杉が育林されている。
これは茶室や数寄屋づくりの建築に使用されてきた。
つまり古都・京都には欠かせない地域材だ。
しかし伝統的な和風建築のみならず
北山杉の魅力を、現代の都市生活の視点から捉え直すという
地域連携型のプロジェクトも始まっている。

丸太の模様は“天然のテクスチャー”

北山スギプロジェクト〈イマトコ〉の発足は2010年。
地元生産者をはじめ、京都に縁あるさまざまなポジションで
活動するメンバーによって構成されている。
発起人はインテリアショップのカギロイ(コクヨファニチャー)と
建築設計事務所の里仁舎。
従来の北山杉に新たな観点を、ということで片仮名表記の「スギ」。
長年、床柱として使われてきたスギを、
現在(イマ)の床(トコ)に、ということでイマトコと命名されたのだそう。

北山杉、それを細かい砂で磨いた北山丸太。
なによりの特徴は、絞りと呼ばれるデコボコした天然の模様と
木肌の滑らかな光沢にある。しかも干割れしにくい材質。
それらは桂離宮や修学院離宮など、
数寄屋づくりを代表する建築で使用されている。
その歴史は約600年。磨き丸太は京都府伝統工芸品に指定され
育林と加工の生産技術は、いまも北山エリアを中心に保たれている。

しかし近年、そんな銘木が
「まったく売れずにどうしていいか困っている状況だった」というのは、
もともと北山杉の利用促進の研究に携わっていた里仁舎の南 宗和さん。

イマトコの2人掛け用ソファに座る建築設計事務所〈里仁舎〉の南 宗和さん。

「北山丸太は昔から一家に一本の化粧材なんです。
日本の伝統的な建築だったり、日本の美学の中に入っているものだったんですね。
しかしいま、和風建築が少なくなってきたので、使う場所がない。
骨組みに使うにも加工が難しい。
それに、独特な絞りがあって、現代のミニマムなデザインからすると、
いまのデザイナーには処理しづらい。素材に主張があり過ぎるんですよね。
そこで、単なる従来の民芸調の家具ではなく、
もっと現代的な都市生活者のリビングのテーブルやソファなどに使えないだろうか?
と話し合ったのがイマトコが生まれた発端です」

枝を約6割落とし、成長を抑え年輪を密にする。写真は皮をむき乾燥させている本仕込み中の様子。

写真左側のまっすぐなものが磨き丸太。そして絞りにも天然、加工を含めこんなにも種類が。

「最初は天然絞り丸太の模様“出絞(でしぼ)”がグロテクスに見えていたんですけど、
いろんな種類があることを知るうちに、ずっと見ていると味わい深いし、
不思議とかっこよく見えてくるんですよ。
もはや通常の磨き丸太では、アクリルのパイプと同じように
味気ないと思ってしまうくらい。
この絞りは天然のテクスチャーで、世界に1本しかない模様なんですね」

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林業女子という新しい風

このプロジェクトに関わる面々は
建築家や家具デザイナー、家具職人、プロデューサーだけにとどまらない。
いま林業界で注目を集める、京都発の林業サークルの女子学生たち、
〈林業女子会@京都〉もそのメンバー。
この世界では珍しかった女性たちが新鮮な役割を担っている。

「僕たちのこのプロジェクトで、林業界への最大の貢献は、
林業女子のデビューに一役買えたことですね。
いまでは日本中にあって林業界では知られる団体になっていますが、
もともとは京都で、山作業サークルに参加していた女子大学生たちが
中心になってつくったグループです。
彼女たちの最初の外部事業がイマトコと北山丸太の啓発事業だったんですね。
彼女たちが京大の学園祭でいろいろな啓発イベントをしてくれたことは大きいです。
彼女たちはふだんから山に入って、雑草の下刈りの作業をしたり、
ものすごく活発。チェーンソーも使うし、木にも登る。
学生に限らず、森林に関わる女性たちと交流をし、
建築士もいれば、山の経営管理をする女性もいる。
林業はどちらかというと伝統的で慣習的なイメージだったので
なかなか若い子たちが入りづらかったんですね。
でもこういう若い女の子たちが集まれば、若い男の子も集まるし、
地元の人も元気になる。実にいい“人的サイクル”ですね。
僕ら男性も林業女子に負けないように
丸太ボーイズという名前を付けてみたんですけど……
彼女たちには一蹴されました(笑)」

伝統を「さわる」デザインへ

イマトコの家具製品には、伝統の北山丸太の絞りが生かされ、
かつ現代の生活にフィットするようデザインされている。
しかも、絞りを装飾として見せるだけでなく
「さわってもらおう」と、あえてテーブルの脚や
ソファの手すりなどに採用している。
シンプル過ぎず、大げさでもないデザイン。
そのちょうどいいルックもさることながら
スルスルしたデコボコの手ざわりは、なんとも気持ちがいい。
南さんいわく「この木を抱いて寝よかな(笑)、それくらい気持ちがいいですよ」

ダイニングテーブルは脚の表面に絞りが生かされている。

「これまで伝統のなかでつくられていきたもの、それはとてもいいものです。
ところが一方で現代にはものすごく優秀なプロダクトデザインもあるわけですよね。
その世界で北山丸太という素材を使えばどうなるか? というプロジェクトなんです。
だからデザイナーの小泉誠さんをはじめ、
いろんな立場で現在活躍されている方の視点が必要です。
それに、北山丸太は京都の独特の素材なので
この土地で取り組まねばならない仕事だと思います。
考えてみれば、日本のエネルギー資源でまともにとれるのは
林業と海洋資源しかないですよね。
なかでも林業は、森をきちんと管理したら再生産できる。
でも現在の日本は、国内の木を使うよりも海外から多くの木を輸入しています。
だから、いま日本の森で多くの木が劣化して朽ちているんです。
北山丸太もそうですけど、これはもったいないことですよね」

空手を嗜む南さんは北山丸太で木人をオリジナル制作。磨き丸太は稽古に最適だそう。

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木のある暮らし 京都・イマトコのいいもの

1人掛け用ソファ 価格:189,000円(税別) 座れば両手で手すりをさわってしまうこと間違いなし。

2人掛け用ソファ 価格:247,000円(税別) あぐらが組める、ゆったりの奥行きがうれしい。

information

map

里仁舎

住所:京都府京都市下京区綾堀川町306

TEL:075-823-6565

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