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連載

〈わらはんど〉
ストーリーのあるおもちゃで、
こどもたちが木に触れる
きっかけをつくる。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.010

posted:2014.11.10  from:青森県弘前市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Yoko Aramaki

荒巻洋子

あらまき・ようこ●ときに編集者、ときに原稿の書き手。斜に構えるところがあるのを自覚しているが、意外に単純でやさしくされることに弱い。東京の西の地・青梅生まれ。自然いっぱいの中で育つ。自然、人、食に興味がある。

credit

撮影:岡田善博

わらはんどからつながる青森の森のはなし

森林面積が約66%を占める青森県。
スギ、ヒバ、ブナ、アカマツなど多様な樹種が分布する県でもあるが、
このうちスギの人工林面積が一番多くを占めており、
その利用拡大が課題となっている。

子どもたちにとって木が身近にある環境を

朝、9時。ウィーンと木を削る音があたりに響いている。
ここは、青森県弘前市にある「わらはんど」。
青森県産の木材をできるだけ使っておもちゃをつくり、
販売までを手がけている会社だ。

木工所に足を踏み入れると、職人さんたちが各々の作業にもくもくと取り組んでいた。

「わらはんど」とは、津軽地方の方言で「子どもたち」という意味。
子どもを指すわらべ(童)とハンド(手)をかけ合わせた造語でもある。

「いまって、木に触れなくても生きていけますよね。
だからこそ、大人が子どもたちに木に触れさせる機会を増やし、
『木っていいね』と思ってほしいです」
こう話すのは、わらはんどの代表を務める木村崇之さん。

わらはんどが誕生したきっかけは、
県産材をもっと有効活用しようと集まった仲間たちと
東京おもちゃ美術館の内部空間の施工を行ったこと。
それが評判を呼び、いまにつながっているそうだ。

まず見せてもらったのは、スギを使った積み木。
「スギってやわらかくて、軽い木なんですね。
それが加工しにくいという弱点にもなり得るんですが、
ぼくらはその弱点を強みに変えた商品づくりをしています。
やわらかいうことは、ぶつかっても痛くないし、
軽いということは落ちてきても痛くない。
スギは子ども向けの商品に向いていると思うんですよ、ぼくは」

1ピースの厚みは、やや厚めにしているそうだ。木村さん曰く「厚めなら積むのが早くて達成感がすぐ得られるでしょ(笑)。それに安定もしますよね」

このように、スギの特徴を生かして商品づくりを行うことは、
木村さんのこだわりのひとつにすぎない。
もっともっといろいろなこだわりが詰まっているのだ。それをご紹介しよう。

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積み木の表面を触ると、デコボコとしていることがわかる。
これは、「うづくり仕上げ」が施されているためだ。
うづくり仕上げとは、
木の表面をほうきのような道具(これを「うづくり」という)でこすることで
木目を浮き上がらせる、昔から日本に伝わる加工方法のひとつだ。
この手触りを子どもたちに楽しんでほしいとの想いがあってのことだが、
すべらず持ちやすいというメリットもある。
ちなみに、この積み木の名は「うづくり積み木」。
ちょっと耳慣れない商品名は、ここからきている。

木の年輪には夏目と冬目があり、夏目はやわらかく、冬目は硬い。そのため、表面をこすることで夏目が削られ冬目が浮き立つ。

口に入れても安心なように、塗装はしていない。
だから、赤ちゃんの歯固めにと、
3ピースだけ買うなんていうお客さんもいるそうだ。

非常にシンプルで、単純な板状の形をしているのにもわけがある。
家や車をつくりましょうといったルールがないので、
子どもが自由な発想で遊べるのだ。
まっすぐにつなげてレールをつくる子や、
ひたすら積み重ねていく子もいるのだとか。

「積み木って半端な木でもつくれるから、
木を無駄にしないという点でもいいですよね」

スギを使った商品はほかにもある。
「ピーナッツチェア」という名の、
ゆらゆらゆれる、子ども用のロッキングチェアだ。

「実は、これは、ぼくに代替わりしてから初めて手がけた第一号の商品なんですよ。
ぼくが絵を描いて、職人さんと相談しながらつくりました。
ピーナッツにした理由? そんなの忘れましたよ」
と笑う木村さん。

「ゆらしてずっと遊んでいる子もいますよ」と木村さん。植物由来の白い塗料が塗ってあり、和と洋がミックスされた雰囲気。

この商品にも、スギの特徴が生かされている。
それは、軽いから小さい子でも持てるということと、
硬くないので安全だということ。

壊れたら、修理は無料で受けているというから驚きだ。
「木の遊具は、確かに高価ですが、
価格だけにとらわれず使ってほしいと思っているんです。
送料はいただきますが、修理は無料です」

わらはんどを訪ねる前に、木村さんが言っていたこと、
「戦後植林し、現在伐採のピークにきているスギの
わたしたちらしい活用方法をご説明したいと思います」
これがわかったような気がした。

職人さんの手となり足となり、ものの誕生を支える名脇役。

「ぼくらは、木が先にあり、それで何ができるかなと考えるんですよ」
と木村さんは話すが、そこにある木とその活用法をマッチさせるのが、
木村さんをはじめ、わらはんどの職人さんたちはうまいのだろう。
なぜならば、わらはんどでつくっているおもちゃは、
どれも魅力的なデザインで、思わず手にしたくなるものばかりだから。

たとえば、赤ちゃん用のがらがらの、
「はちまんわんこ」と「はちまんうりぼう」。

横向きのわんこと、正面のうりぼう。それぞれ正面と横向きもある。

使っている樹種は、青森ヒバだ。なぜ、青森ヒバなのかというと、
きっかけは弘前八幡宮の鳥居の建て替えだった。

青森ヒバは寺社仏閣の建材として使われることが多いのだが、
この弘前八幡宮の鳥居も青森ヒバを使って建てられたものだった。
そこで、その古い鳥居を何かに有効利用できないかと考え、
生まれたのが、先のがらがらというわけなのだ。

せっかく弘前八幡宮のヒバを使うならばと、中には弘前八幡宮の鈴を潜ませた。
これが木に当たってカラコロとやさしい音色を奏で、なんとも心地よい。

上部のくぼみ部分が鈴を入れるところ。このあと2枚1組にしてのりづけし、プレス機にかける。

「なぜ犬と猪なのかって? 実はそれにもストーリーがあってね」
と話を進める木村さん。
「このあたりには、『一代様信仰』っていう風習があるんですよ。
自分の生まれた年の干支を一代様として、守り神にするというものなんですが。
十二支のそれぞれが、いろいろな社寺に祀られていて、
厄払いや人生の節目のときには、自分の干支の社寺にお参りに行くんです。
弘前八幡宮に祀られている干支は『戌』と『亥』。
だから『わんこ』と『うりぼう』をモチーフにしたんです」

なめらかに削られたがらがら。この時点で、どっちがわんこで、どっちがうりぼうかがわかり、愛おしい。

ひとつの商品にこんなにもストーリーがあり、
中の鈴は見えないのだから何でもいいところをこだわる。
赤ちゃんがなめたり噛んだりしても安心なように、塗装はしない。
こういったいくつものこだわりが
わらはんどらしいおもちゃをつくり出しているのかもしれない。

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木のある暮らし 青森・わらはんどのいいもの

はちまんわんこ、はちまんうりぼう 価格:各5,000円(税別)/サイズ(約):幅9×奥行9×高さ3cm/材質:天然木(青森ヒバ) 弘前八幡宮に祀られている干支である戌と亥をモチーフにした赤ちゃん用がらがらは、出産祝いにぴったり。

information

map

わらはんど

住所:青森県弘前市千年4-9-24

TEL:0172-55-7173

https://ja-jp.facebook.com/warahand/

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