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連載

西粟倉村・森の学校
Part1 : 100年の森を育み、商品を生み出す、
村の営業部。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.031

posted:2013.12.17  from:岡山県英田郡西粟倉村  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
伊勢谷友介さんがパーソナリティをつとめ、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。
http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

西粟倉村の取組み。

人口1539人の岡山県西粟倉村。
この小さな村が林業を軸とした
地域再生の成功モデルとして注目されている。

政府主導で行われた平成の市町村合併のなかで、
西粟倉村は合併をしない、独自の道を歩んできた。

西粟倉村をひとつのブランドに育て、つぎつぎと商品を生み出し、
地場産品の企画・販売、マーケティングを手がけるのが
株式会社 西粟倉・森の学校。
西粟倉村民76名や、西粟倉村役場などが株主として参加している
村ぐるみのプロジェクトから生まれた会社だ。

森の学校ショールーム。西粟倉村から生まれた商品を展示している。

代表取締役の牧 大介さんにお話を伺った。

「最初、外部のコンサルタントとして村に入ったんです」
そこで仕事をつくるための雇用対策協議会の立ち上げからはじめ、
そこから地域での起業をサポートしてきました」

牧さんは、もともと資源リサイクルや自然産業のコンサルティングを手がける
アミタ株式会社のシンクタンク「アミタ持続可能研究所」の所長として
西粟倉村に入った。一番の問題は過疎化だった。

「平均して年間30人、お年寄りが亡くなるんです。
少々子どもが産まれても、過疎化は止まらない。
人口を維持するためには、仕事を生み出す必要がある」

木のぬくもりがうれしい木馬。地域の資源に根ざした商品を生み出すために、まず人づくりからはじめた。

2007年、雇用対策協議会が設立される。
通称・村の人事部。

「厚生労働省の補助金ありきの組織だったので、
補助金が切れてからも、経済的に自立できるようにしたい。
ひとづくりの基盤を持とうというのが、はじまりだったんです」

企業の人事と同じように、地域もひとが重要なのだ。
起業家型の人材発掘・育成が必要だ。
そして村にやってくるひとの定住支援をしていくための組織づくり。

そして地域の資源に根ざした仕事をどうやって生み出すか。
森の再生を地域の雇用や人口維持につなげられないか。
それが課題だった。

廃校の教室がショールームになっている。

無垢の木で出来た天板のデスクやテーブル。森の再生のための商品が生み出されていく。

百年の森林構想。

村の95%は森林が占めている。
そのうち86%が人工林。
高度成長期に一斉に植えられた杉・檜がほとんど。
過疎化がすすみ、林業が衰退し、間伐が行われなくなったという。

「山はたくさんあるけれど、手が入らない。
山を資源として活用できないか」

そのために村ぐるみでひとつの決意をする。

西粟倉村で50年育った木を、50年先の未来へつなぐ、百年の森林構想。50年後、この樹々はどんな成長を見せるだろう?

百年の森林構想は、
「50年前に将来の子どもや孫のために植えた木を、
立派な100年の森に育てていく」
という、使命を持つ。
世代を超え、地域を超え、未来の想いを共有する森づくり。
百年の森を支えるための「共有の森ファンド」ができた。

一口5万円から出資してもらい、村の応援団になってもらう。
都会のひとに森を支えてもらう仕組みだ。
出資していただいた方に村に来てもらうツアーを展開するなど、
西粟倉村のファンになってもらい、百年の森を共につくる試みである。

百年の森林事業は西粟倉村役場、共有の森ファンドで資金調達をする(株)トビムシ、商品企画や部材を提供する(株)森の学校、施行・素材の販売を行う森林組合が連携して展開する。

ファンドメンバーは現在423人。
合計金額4205万円。
ファンドで集まったお金は、森林組合が林業機械を購入する費用にあてられた。
税金に頼らないで、自立できるお金。
それによってようやく間伐が進みはじめる。

山から木が出てくるようになる。
その木を丸太のまま売るのではなく、手を加えて商品として、
地域の経済につながるような、木材の加工・流通をはじめる。

木のまな板は、大きいものや小さいもの、かたちも豊富。後述の「ニシアワー」で購入可。

そして、2009年の10月に株式会社西粟倉・森の学校が設立された。
地域の資源を価値にする会社として、
ものづくりの企画・販売の拠点づくり、
マーケティングとインキュベーションの事業を展開している。

廃校を利用した森の学校の施設。カフェ、売店、工作室、各種展示スペース等がある。

間伐材を使いやすいサイズにパーツ化し、利用を促進する。

2010年に「ニシアワー」というサイトを立ち上げた。
地域の魅力やストーリーを紹介するサイトからはじめ、
村の商品を売るための売り場づくりと商品の企画を進めた。
西粟倉村の森と繋がるWEB上のショッピングモールだ。
その取り組みがメディアに取り上げられるようになる。

無垢の木でできた家具の製造販売や、鹿肉のバーベキューや、
源流の水からつくられる「メダカ米」などの米や地元で採れた農産品の販売など、
地域資源の循環的な利用を目指す取り組みなどを展開している。

地元でつくられた陶器。

木のスプーンで食べれば普段の食卓もほっこりしそう。

地域の間伐材を商品化した、ユカハリ・タイル。

間伐材を有効利用する商品は、使うと間伐が促進され、森が再生される。
しかし、間伐材は柱に使えるような、まっすぐの物ばかりではない。
それゆえに、新商品を開発して、新たな市場を開拓していく必要がある。

こうして生まれたのが、ユカハリ・タイル。
賃貸マンションでも使える無垢の床板で、
現在、年間3万枚ほど売れている商品だ。

一般的なタイルカーペットと同じ大きさで、
使い勝手の良い個人向けの商品として人気の商品だ。
杉と檜の二種類が「ニシアワー」でも販売されている。

適度に部屋の湿度も吸収し、空気がやわらかになる。
大工さんを使わずに、簡易なかたちで
普通の床板を敷きつめていくことができる。

森の学校の売れ筋商品。ユカハリ・タイル。

余った部分は割り箸にしたり、
木屑は木材の乾燥用の燃料用に使っている。
今後、周辺地域でバイオマスエネルギーが稼働しはじめると、
将来的には木屑を提供することも考えられるという。

子どもにも安心な木のおもちゃ。

カスタネット型のトング。トングとしても使えるカスタネットにも(!?)。

日本の地域再生のモデルとして期待。

西粟倉村のような取組みは、
やればできる潜在的な可能性がある地域は多いが、
いまのところライバルはいない。

「大手と競合せずに十分に独自性を持とうとしています。
木材加工のビジネスは4億か5億くらいの事業規模だと思っています。
ほかの事業もあわせて、地域全体としては10億くらい。
やみくもに大きくする必要はないと考えています。
必要とあればノウハウも提供できます」

2013年に森の学校は助成金に頼らず、
自前の事業のみで黒字化に成功した。
西粟倉村は日本の地域再生の成功事例といえる。
海外へ商品を輸出展開する可能性はどうなのだろう。
牧さんに聞いてみた。

「西粟倉村の木で家具をつくっている『木工房ようび』の家具は
海外で高い評価を受けています」

次回、コロカル取材班は、海外で高い評価を受けているという、
西粟倉村の木を使った家具をつくる『木工房ようび』を訪ねます。

information

map

西粟倉・森の学校

住所:岡山県英田郡西粟倉村影石895
http://www.morinogakko.jp/

ニシアワー
http://www.nishihour.jp/

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