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連載

Bsize
Part1:ひとり家電メーカーの、
未来型ものづくりへの挑戦。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.009

posted:2013.7.2  from:神奈川県小田原市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
伊勢谷友介さんがパーソナリティをつとめ、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。
http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

企画、デザイン、制作から販売まで
たったひとりの家電メーカー。

小田原に本社のあるBsizeは「ひとり家電メーカー」。
最初の商品、LEDデスクライト「STROKE」で業界を震撼させた
社長の八木啓太さんはデザインエンジニア。
もともと富士フイルム株式会社にて、医療機器の機械設計に従事していたが、
デザインのノウハウを独学で会得し、2011年、Bsizeを設立した。

STROKEの企画 設計 試作 製造 販売、
さらには熱や耐久などの試験・評価、量産設計、梱包まで。
その全ての工程を八木さん自身がこなし、
販売も自社のWEBサイトのみで行っている。
たったひとりで商品を生み出す、未来型ものづくりメーカーである。

大手メーカーにはマネできないこだわりのデザイン。

一本のパイプを4か所曲げてつくった、シンプルなデスクライトSTROKE。
継ぎ目はおろか、ねじ頭さえない美しいプロダクトである。
2011年のグッドデザイン賞を受賞。
そして2012年にドイツのレッドドットデザイン賞を受賞した。

4万円近い高額商品だが、1年ほどで千数百台を売り上げた。
現在も数か月待ちの人気商品である。

「アップルやダイソンの商品に影響を受けて、
いつか自分もライフスタイルを変えてしまうような
商品をつくってみたいと思っていました」

そんなひとりのデザイナーの夢が、
大手メーカーのまねできない商品を生み出した。

医療用に開発された自然光に近いLEDを採用。

きっかけはLEDのすぐれた技術との出会い。

きっかけは医療機器をつくっているときに出会った技術。
あるメーカーが手術するときの手術灯にどうかと持ってきたものだ。
血液や臓器が正しい色に見える、自然光に近いやわらかな光り。

一般的にLEDは明暗の差がくっきりしていて直下ばかりが明るいのだが、
その光はやわらかく、広がりがある。
独立するときに、この照明を使った照明器具のアイデアを思いついた。

「素晴らしい光があれば、それだけでいい。
照明器具であることを主張しないデザインにこだわりました」

この光に魅せられた八木さんは、
光そのものを邪魔しないデザインを考えた。
点灯時に少しずつふわりと明るくなるようプログラミングされている。

エコ思想が商品コンセプト。

八木さんのものづくりは、さまざまな場面でエコな思想が入っている。

まずつくるときに製造に使われる資源が少ない。
通常のデスクライトはベースがあって、
光源部があって、それをつなぐアームがある。
しかしSTROKEはアームしかない。
ほぼパイプ一本でできているため省資源なのだ。

ユーザーが使う時も省エネ、長寿命。
LEDは白熱球にくらべ20分の1の節電効果がある。
寿命も普通の使用で約30年間あり、その間、取り替える必要がない。
半永久的といってもいい。

捨てるときも再資源化が前提だ。
アルミと鉄でできているので
ほとんどの部品がリサイクルすることができる。
つくる時、使う時、いずれ捨てるとき、その循環のなかで
すべての環境負荷を最少にし、
ユーザーに対してのメリットを最大化している。

たったひとりで商品をつくるそのプロセスを聞いてみた。

21世紀のスキルを身につけた現代の匠だが、
ひとり家電メーカーが起業できたのは、現在の環境の変化がある。

かつて企業が商品設計に使っていたソフトは1000万円くらいするものだった。
しかしそれが今や10万円程度で手に入るようになり、
メーカーをスタートしやすくなった。

具体的な部品を設計したりするために3次元のソフトを使って、
アイデアをかたちにする。
コンピュータ上で商品のデザインは完成する。

そして実際の部品をつくってくれる工場を探して試作品をつくってもらう。
そこから先は簡単なことではなかったという。
なかなか技術をもった企業が見つからない。

パイプをしわなく曲げる技術や
アルミをきれいに押し出し加工する技術、
プラスチックを射出成形する具体的な技術。

トータル100社くらい回ったという。
そのうち15社くらいが協力してくれることになった。

こうしてできた試作機で、さまざまな条件での耐久性を調べる。
そして問題点を抽出して改善する。
大手のメーカーでも行うプロセスをひとりでじっくり行った。

そうした試験の評価を経て、
2011年12月ようやく発売をむかえることになる。

しかし、そのときすでに資本金は尽きていた。
商品を広告宣伝する費用がなくなっていたのである。

その危機を乗り越えることができたのは、
八木さんにとってひとつの朗報があったからだ。
発売前のプロトタイプモデルのSTROKEが、
経産省のグッドデザイン賞を受賞したのだ。

最初は100台。
あっという間に売れた。

そしてメディアに取り上げられ始めると発注が切れることはなかった。
最初は八木さん自身が組み上げていた商品は、
小田原の町工場が組み上げのラインを担当するようになった。
ひとり家電メーカーは少しずつチームメンバーが加わり、
本格的なものづくり企業として動き始めることとなる。

高温多湿の環境で基盤が壊れないかテストする。約40日間ずっと点灯させて壊れなければ、約10年は大丈夫である、などの評価基準で検査する。

熱や耐久などの試験・評価も八木さん自身が行う。

クラウドファンディングで資金調達も想定。

STROKEが話題になると八木さんのもとにさまざまな依頼が殺到する。
ある雑誌の企画で架空の商品を考えた。
リアルFacebookガジェット「NOTICE」。
Facebookの送受信の情報を可視化する外部機器だ。
受信すると点滅するUSBで作動するガジェットである。

ユニークなのはクラウドファンディングでの資金調達。
八木さんはNOTICEの試作品のみを制作。
購入希望者をWEB上で募り、一定数集まってから商品を制作する。
欲しい人の数だけ制作するので事業のリスクは軽減される。
在庫を持つ必要がない。

商品とそれを支持する購入者を結ぶ、
21世紀型のものづくりモデルがそこにある。

次回はBsizeの商品開発のこだわりについてと
Bsizeの現在開発中の新製品情報などをお届けします。

リアルFacebookガジェット NOTICEのパーツ。残念ながらNOTICEは希望者数が集まらなかったので商品化されなかったが、ユニークなアイデアは業界にインパクトを与えた。

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Bsize Inc.

ビーサイズ株式会社
http://www.bsize.com/

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