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連載

数々のプロジェクトを
通して鎌倉の輪が広がる。
カマコンバレー後編

貝印 × colocal
「つくる」Journal!
vol.012

posted:2015.7.14  from:神奈川県鎌倉市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  歴史と伝統のあるものづくり企業こそ、革新=イノベーションが必要な時代。
日本各地で行われている「ものづくり」もそうした変革期を迎えています。
そこで、今シーズンのテーマは、さまざまなイノベーションと出合い、コラボを追求する「つくる」Journal!
ものづくり・しくみづくり・ひとづくり・食づくり、場づくりetc、
貝印 × コロカル × earthradioチームが、フレキシブルにテーマを取り上げていきます。

writer's profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

メイン写真:Suzu(fresco)

前編【すべては鎌倉のために。 ITを使った参加型支援 カマコンバレー前編】はこちら

夢を達成するためのクラウドファンディング

“この街を愛する人を、ITで全力支援!”をテーマに
鎌倉で活動しているカマコンバレー。
これまでに、さまざまなプロジェクトを展開してきている。
もちろんプロジェクトを発足し、回していくには最低限の資金が必要になる。
しかしカマコンバレーは、ほぼボランティアによって成り立っているので、
大きな資金源があるわけではない。
おもしろいのは、それらを運営するための資金を募る手段すら、
自分たちで生み出してしまったことだ。
それが鎌倉限定クラウドファンディング〈iikuni〉だ。

「一昨年に行われたプロジェクトの資金を集めるのに、
クラウドファンディングを利用してみようという話になったんです。
しかし今後もカマコンバレーが活動していくのに、
資金集めは必要になってくるだろうと思い、
クラウドファンディングのシステム自体を自分たちでつくってしまったんです」
と話してくれたのは、iikuniを担当しているカマコンバレーの古田智子さん。

一般的に、クラウドファンディング自体の数も増え、認知度も上がり、
活用する人も増えてきた。
そのなかでiikuniの大きな特徴としては、鎌倉に限定しているということだ。

「鎌倉に住んでいたり、働いている人は、地元愛=鎌倉愛が強いと思います。
iikuniでのチャレンジを見て、
“こんな人たちがいるんだ”と応援したい気持ちになると思うんです」と古田さん。

現状では、まだカマコンバレーのプロジェクトや会員からの支援募集が多い。
カマコンバレーが運営しているので、月1回の定例会でもプレゼンや告知ができる。
すると会員同士でつながりやすい。
地域限定にすることで、口コミも広がりやすいのだ。

「知り合いの知り合いくらい辿れば、誰かはつながっています」と古田さんも笑う。
通常、達成しやすいものには傾向がある。
しかし地域が鎌倉に絞られていると、愛情があれば達成しやすいのかもしれない。

ウェブサイトの情報だけを見て、飛び込みで来る人は少ないという。
そのあたりもローカルらしさ。

「クラウドファンディングは字義的には、たしかに資金調達媒体です。
しかし私たちはローカルに根ざしたものなので、
それを強く打ち出さなくてもいいかなと思っています」というのは
〈関心空間〉CEOで鎌倉在住の宮田正秀さん。
iikuniのユニークさと情熱を教えてくれた。

「夢が達成されることを支援したいのです。
iikuniとしては、主にクレジットカード手数料などをいただくだけで、
利益は追求していません。その立場も一貫しています。
どちらかというと仲間のようなもの。ちょっとリードするとしても、
マラソンランナーの横について走るコーチのようなものです。
そのくらいの関係性を目指しています」

なるべくきめ細やかなサービスを目指している。だから一緒にじっくり考える。

「一緒に進めていくという気持ちで臨んでいるので、
ときには、“そのアプローチでは支援は広まりませんよ”とか
“そのリターンはよく考えましたか? ”などの苦言を呈することもあります。
軽い気持ちで“出してみたら?”という無責任な姿勢ではありません。
これなら達成できるはず、とチャレンジを練り上げていきます」

こうした積み重ねのおかげで、高い達成率を誇っている。
実は、他にもたくさんの問い合わせが来ているという。
しかし思いつきであったり、ビジネス的な資金調達など、
iikuniに馴染まない場合は、断ることもあるという。
ただクラウドファンディングというサービスを運営しているのではなく、
これもすべて鎌倉という地域の活動であることを忘れない。

このように、クラウドファンディングという仕組みをつくるだけではなく、
運用法も同時に考えていかなくてはうまくいかない。
そうしたノウハウを、ほかのローカルにも伝える動きも生まれてきている。

宮田さんがそのノウハウの一端を教えてくれた
「プロジェクトを持ってくる人に対して、
どれだけつながりがあるかインタビューするところから始めます。
運営者がどれだけ地域の人脈を持っているかが鍵になります。
ヒアリングするシートも結構細かいですよ。
やろうとしていることよりも、“どうやったら支援の輪が広がるか考えていますか?”
と問います。人から支援を受けるということがどんなことなのか、
真剣に考えてもらえるように、話し合って考えを深めていきます」

すでにいくつかの地域で、iikuniをモデルにした
ローカルクラウドファンディングの動きは始まっている。
まださまざまな可能性を秘めた仕組みなのだ。

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お寺も神社も教会もある鎌倉だから可能なこと

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禅とITが、実際に結びついた!

カマコンバレーのプロジェクトのひとつに、
禅寺として有名な建長寺で行う〈禅ハック〉がある。
担当しているのは今村泰彦さん。

「建長寺の高井正俊宗務総長さんは
3.11をきっかけに、神道、仏教、キリスト教の宗教の壁を超えて、
合同での祈願を実現したんです。お寺も神社も教会もある鎌倉だと可能なんですよね。
カマコンバレーの活動も、そういう考え方から影響を受けた部分があります。
高井総長はとても鎌倉を愛していて、
若くてがんばっている人を応援してくださっているんです。
それに甘えて、禅寺でハッカソンをやりたい! と提案しました」

テーマについてのお話をしていただく。

早朝、眠い目をこすりながら坐禅が行われる。

海外では、アップルのスティーブ・ジョブスをはじめ、
オラクルのCEOなどが禅宗を取り入れている。
グーグルも企業プログラムとして、
瞑想や坐禅などの“マインドフルネス”を取り入れている。
IT業界には禅を取り入れても違和感のない素地があった。

「シリコンバレーでもエンジニアがどんどん健康になっています。
そのほうが脳が活性化されて、いいアイデアが出るようです。
それを1泊2日でプチ体験できます」

具体的には建長寺の修行体験のプログラムにハッカソンを組みこんだ。

「3時に起床なので、逆算して21時就寝にしました。
果たして21時に寝られるのか。そこが一番心配でしたね」という古田さん。
「でも、意外にお寺だと寝られちゃいますね。
すごく静かだし、外の自然音が心地よくて、眠くなります」と今村さん。

3時に起床後、40分の坐禅、そして4時半〜6時までハッカソンが行われる。
テーマ設定は、普遍的なものになっている。鎌倉うんぬんではない。

「まずは禅の教えに学ぶことが本質だと思っています。2回目のテーマは〈ゴミ〉でした。
まずはインプットとして、和尚さんにゴミについて話してもらいます。
短くはあるけど、すごく含蓄のある言葉でした。
『そもそも禅にはゴミという概念がありません。要らなくなるからゴミなんです。
すべて生かしましょう』と」

そういった考え方の取っかかりを受けて、ハッカソンが開始される。
チームにわかれてアイデアを短い時間で一気に形にしていく。
参加者はサラリーマン、エンジニアなどに加え、
場所柄、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)の学生なども参加している。
個人参加もチーム参加もいる。個人参加は5名ほどで即席チームを組むことになる。
チーム参加の方が有利かと思いきや、
第2回で優勝したのは学生も参加した即席チームだった。
その場で起こる化学反応というのも興味深い。

朝食は建長寺の精進料理を堪能。

畳のうえでハック中。日本ならではの光景。

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鎌倉に住む高齢者も巻き込みます

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世代間交流を起こすもの

〈今昔写真〉というプロジェクトは、定例会のプレゼンテーションから生まれた。
鎌倉在住の〈日本テレビ〉土屋敏男さん(あのTプロデューサー!)が提案したもの。
鎌倉の古い写真を募集し、
その写真と同じ場所で、同じように写真を撮るというプロジェクト。

鎌倉のお祭り〈鎌人いち場〉で行われた今昔写真に参加してみた。
なんと1964年の東京オリンピックのときに、七里ヶ浜を聖火リレーで走った当人が、
そのときの写真を持って参加してくれた。
海沿いをみんなで移動。聖火ランナー役はもちろん本人で、
沿道で声援を送る役は若者たち。
アングルや動きを細かく指示する土屋さんのディレクションのもと、パチリ。

当時の写真を身ながら、動きの演出にも思わず熱が入る。

「結局、人の歴史なんです。家にあるものを掘り起こしてもらって、風景に置き換えます。
決してノスタルジーを楽しむものではありません。
スマホアプリにもなっていますが、それがメインではなく、
あくまでイベント化することが重要です。もちろん古い写真を持ってくるのは高齢者。
そこでイベントに参加した若者たちと世代間交流が生まれています」

そこには喜んで当時の話をする高齢者の姿がある。
そしてそれを興味深く聞く若者たち。
移住者も多い鎌倉では、まちの歴史、成り立ち、変遷を知ることが
鎌倉への愛着につながるだろう。

これまで今昔写真が撮られてきた場所をマッピング。

カマコンバレー周辺で、
いろいろなことが起こる。同時に起こる。どんどん起こる。
どれも共通しているのは、鎌倉を愛する人たちが、鎌倉を愛するがゆえに行っていること。
結果、鎌倉がどんどん良いまちになっていく。

Information

カマコンバレー公式facebook
https://www.facebook.com/kamaconvalley

iikuni公式サイト
http://iikuni-kamakura.jp/

今昔写真公式facebook
https://www.facebook.com/konjakusyasin

ZenHack(禅ハック)公式サイト
http://www.zenhack.jp/

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