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連載

トミトアーキテクチャvol.3
横浜の木造アパートをまちに開く。
リノベーションの鍵は、
地域の家具や建具、ピンコロ石

リノベのススメ
vol.142|Page 2

posted:2017.3.11  from:神奈川県横浜市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。

writer profile

tomito architecture

トミトアーキテクチャ

冨永美保と伊藤孝仁による建築設計事務所。2014年に結成。主な仕事に、丘の上の二軒長屋を地域拠点へと改修した「カサコ/CASACO」、都市の履歴が生んだ形態的特徴と移動装置の形態を結びつけた「吉祥寺さんかく屋台」などがある。
冨永美保
1988年東京生まれ。2013年横浜国立大学大学院Y-GSA修了。2013年~15年東京藝術大学美術学科建築科教育研究助手。2016年から慶応義塾大学非常勤講師、芝浦工業大学非常勤講師。
伊藤孝仁
1987年東京生まれ。2012年横浜国立大学大学院Y-GSA修了。2013年~14年 乾久美子建築設計事務所。2015年から東京理科大学工学部建築学科補手。

Page 2

大工さんに相談したり、インターネットでつくり方を調べたりしながら、素人のみで施工する。
きれいに仕上がるかどうか、実際にやるまで不安でしかたありませんでした。

当日はなんと80名を超す参加者が、子どもからお年寄りまで
たくさん集まっていただけました。中学生がモルタルを練り、
小学生がピンコロ石を敷き詰めていき、おじいちゃんが口を出す。
近所にお住まいの外国人夫婦も赤ちゃんを抱えながら参加してくれました。
改修後のCASACOで、こんなことが起きたらいいなと考えていたことが、
すでに実現している! と感じました。

3列ずつくらい、徐々に道路側にピンコロ石を敷き詰めていく。木枠をたてながらモルタルを4センチほど流しこみ、そこにピンコロ石を半分埋めるように敷いていく。

ワークショップ終了後の集合写真。「まだ固まっていないから乗っちゃダメだよ」といっても聞かず、石畳の感触を確かめるように走り回る子どもの姿が印象的でした。

素人工事なので、やはりプロのようにはいきません。見た目にも、その上に立った時にも、
「歪み」を感じます。しかしそれが、とてもポジティブなことだと思うようになりました。
手描きの絵のようないびつさは、親しみを感じやすい風景をつくっていて、
足下から伝わる歪みを通して、住宅の一部でありながらまちの一部でもあるということを、
身体で直接理解することができます。

「みんなで一緒に」だけではだめ?

参加型ワークショップは、地域を巻き込んで「自分事」として捉えてもらう
「主体形成」という意義が大きくあります。ただ、一方でそれだけでは、
むしろ「内輪感」を助長してしまったり、
ただただ素人施工の中途半端なものを生み出してしまう危険も隣り合わせです。

参加していない人にも親しみやすさを生みうる「風通しのいい」風景をつくることができるか、
素人施工という技術を逆手に、いびつさを空間の質に転化できるかといった視点が、
設計者である私たちには求められていると感じました。

次は家具や建具といった地域素材の行方を見ていきましょう。

手づくりであることがよくわかる、ちょっと歪んだ石畳。ずっと昔からここにあったような印象を与えます。

建具や家具といった「動産」

近隣の空き家から家具や建具をたくさんいただいてきては、
改修前の空間にストックしていました。それらを採寸して設計に生かせる状態にし、
実際の空間に置いてみながら検討をしていきました。

近所の空き家にお邪魔して、木製のガラス建具を外している様子。敷居と鴨居を押し広げて、なんとか取り外すことができました。

施行中の現場に、いただいた家具や建具をレイアウトしながら設計。それらの寸法に合わせて、壁の厚みや開口部のサイズを決めていきました。

普通の設計だと、空間のサイズが決まり、そこに合わせるかたちで
建具や家具を購入したりつくったりしますが、ここではその上下関係が逆転します。
建具や家具という条件が先にあり、それを空間の主役に据えながら、
壁などの寸法を決めていきます。その理由は、ものが持っているキャラクターが、
空間の中に多様に散らばっている状態をつくりたいと考えたからです。

改修に寄って新しい役割を与えられた家具や建具たち。水回りの多かった北側は柱の上から壁を貼って構造補強をしながら、白い壁として、時間を感じさせる家具や建具を引き立たせます。(写真:大高隆)

建物を「不動産」というように、建具や家具や畳といった
日本建築における運べる要素は「動産」と呼ばれます。実際に江戸時代、
それらは規格化された寸法体系のもと、引っ越し先にももっていく存在だったそうです。
まちを「動産」という観点から見直してみると、
まだまだ眠っている可能性がたくさんありそうです。

このように、「偶然」いただいたものたちが主役になる空間をどうコーディネートするか。
私たちがずっと考えてきたことでした。
ただただ方針なく物を集めてレイアウトしているだけでは、
ルールが曖昧なままルーズな場所になってしまうかもしれませんし、
何やら楽しそうだけど内輪感のある入りにくい場所になる可能性もあります。

ここからは、空間の役割と考え方について見ていきます。

左右対称を生かした、大きな中心と小さな中心

CASACOはもともと左右対称形の二軒長屋という形式でした。中央の戸境壁を軸に、
まったく同じ構成をしているため、中央にふたつの階段が並走しています。
私たちは、バラバラなものたちが主役になるためのガイドラインとして、
「中央のホール空間とその回りにある性格の違う空間」という形式を設定しました。

改修前と改修後の1階平面図。中央のカーペットの空間の回りに、さまざまな床素材の場所が広がっていることがわかります。

中央のホールは吹き抜け空間として、天井高さ6メートルほどの大きな空間です。
床にはカーペットが敷かれ、並走する階段が中央に鎮座する。
およそ住宅地には似つかわしくない空間です。この大きな空間が建築の中央にあることで、
ほかの空間がバラバラと個性をもっても、ルーズにならないと考えました。

軒下側からホールをみた様子。グレーのフレームは構造を補強するための鉄骨。(写真:大高隆)

大きな中心があって、その回りに小さな中心がある。小さな中心の空間では、
ピンコロ石やバラバラの寸法の家具や建具が生き生きと存在するように工夫しています。

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