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連載

3日で完成したDIYバー?
まちに生まれた新たな交流拠点
ISHINOMAKI2.0 vol.2

リノベのススメ
vol.119

posted:2016.7.20  from:宮城県石巻市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。

profile

ISHINOMAKI 2.0

東日本大震災を契機にジャンルに縛られない多種多様なプロジェクトを実現。地域のリソースを丁寧に拾い上げ、全国のありとあらゆる才能と結びつけて今までになかった新しいコミュニケーションを生み出しています。石巻のバージョンアップが、日本のバージョンアップのモデルになることを目指しています。

writer profile

Kuniyoshi Katsu

勝 邦義

ISHINOMAKI2.0理事/設計事務所主宰。1982年名古屋生まれ。2007年東京工業大学卒業。2009年ベルラーへ・インスティチュート修了。山本理顕設計工場、オンデザインを経て、2016年自身の設計事務所を設立。   

credit

main photo:鳥村鋼一

『リノベのススメ』執筆陣はこちら。週替わりで担当していただきます!

こんにちは。
石巻2.0の勝です。
石巻からお届けするリノベのススメ、
第2回は石巻の中心市街地の夜の交流拠点である〈復興バー〉
そして本を通じた交流拠点〈石巻まちの本棚〉を紹介します。

わずか5坪の空間に生まれた、復興バー

港町気質が残る石巻は夜の飲食業も非常に活発です。
日用品を販売する商店街の路地を挟んで、
飲食店やスナックが建ち並ぶ繁華街が位置し、
人口当たりのスナック数が日本一なのではないかと言われるくらい、
小さな飲み屋さんが集積しています。
とはいえ最盛期ほど繁華街の元気もなく、
その範囲も年々小さくなっているのですが、
そんな繁華街の一番外側のエリアに位置するのが復興バーです。

4階建てビルの1階にある復興バー。

もともとこの場所にはダイニングバーがありました。
被災してしまったその空間を、〈石巻工房〉の協力のもと改装して、
ボランティアで外から集う人も地元の人も、
まだまだ大変ななか、集い情報交換ができるような場所をつくろうと、
スタートしたプロジェクトでした。

石巻工房の代表でもあり建築家の芦沢啓治さんが、
東京から石巻への道中の電車で仕上げたスケッチをもとに地元の有志や
遠方から集うデザイナーたちが自らインパクトドライバーやペンキを用いて仕上げました。

建築家・芦沢啓治さんの手書きの現場指示図。

外観を塗装しているところ。

そして当時、使えるものはすべて使うという姿勢のもと、
流れついた道路標識のビスさえも使うという徹底ぶり。工期はわずか3日ほど。
2011年7月から、復興バーとしてスタートしました。

そんなこんなで見切り発車でスタートした復興バーの初代マスターは
石巻2.0の代表でもある松村豪太。
もともとバーテンの経験もある豪太さんは震災時は市内のNPO職員でしたが、
その後、石巻2.0の活動の主要な役割を担うようになります。

復興バーのわずか5坪ほどの店内は10名も入ると満席になります。
狭い店内では自然とコミュニケーションも密になり、
誰もが垣根なくフラットに会話が弾むのが不思議です。

復興バーの店内。

たくさんの人が集い、語り合う場へ

まだまだ夜には明かりが灯ることも少なかった石巻のまちなかで、
ぽつんと独り明かりを灯してスタートした復興バーは、
復興事業で訪れる多くの人やボランティア、
地元のおもしろい人など多種多様な人が出会い、語り合う場所になり、
店内は、いつも熱気に包まれていました。

復興事業に対するタテマエもホンネも、
地元の人と外から移り住んで来た人たちとの思い込みのような隔たりも、
お酒のグラスを一緒に傾けると包み隠さず会話がすすみ、
また明日から頑張ろうという、前向きな気持ちへ向かっていくことが実感できます。

復興バーが軌道にのると同時に、まちづくりプラットフォームである石巻2.0の活動も
多岐にわたるものになっていきました。
前述の豪太さんも、昼間はいろいろな打ち合わせ、
毎夜には遅くまで飲み食いする人をカウンター越しに迎えること1年、
さすがに毎日の営業の継続が難しくなり、導入したのが日替わりマスター制度です。

日替わりマスター。

まちで活躍する人がバーカウンターに立ち、1日限りのマスターを務めます。
これまで地元の水産会社の社長や地元の料理人、音楽家、
スポーツ同好会や医療系の仕事に従事する人など、多様な人たちがカウンターに立ちました。
それぞれが特別なドリンクやフードメニューでもてなすことが特徴です。

例えば、水産会社の社長にとっては、自社の製品を実際のお客さんに提供し、
消費者の声をダイレクトに受けられることが何よりの魅力でしょう。
そしてその復興バーのシステムを東京に輸出して、
毎年夏は「復興バー銀座店」を期間限定で開店しています。

銀座復興バーの様子。

日本の中心といえば銀座なのではないかという、復興バー初代マスターであり、
石巻2.0の代表でもある松村豪太さんによるわかりやすい直感と、
熱心に銀座での交渉を続けてくれた協力者の方々の尽力のうえに実現したのが
〈銀座復興バー〉です。改装前の居抜きの空き物件を期限付きで活用することで、
日本で一番賃料が高い銀座での出店を実現させました。
銀座復興バーはそのコンセプトどおり、
東北との縁が深い個人やチームが日替わりでマスターを務め、
1か月ほどの期間中は連日満席になるほどの人気企画です。
石巻だけではなく青森県から岩手県、宮城県、福島県に至るまで
三陸の沿岸で活動する人たちが集まり、日本の真ん中銀座で出会い、
石巻そして東北の未来のことを語り合います。2016年の開催も現在準備を進めていて、
また銀座復興バーの看板を掲げることを目指しています。

垣根なく、誰もがつながる復興バーは、一時はお休みも多かったですが、
現在ではお手伝いスタッフも増え、
週の半分ほどはオープンし、石巻の夜をにぎやかにしています。

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本屋のなくなったまちの新たな拠点?

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本がつなぐ、人と人の面白さ

さてこの復興バーですが、
毎年開催される石巻最大のお祭り〈石巻川開き祭り〉に合わせて開催される
〈STAND UP WEEK〉の初年に合わせて生まれた場所です。

川開き祭りは北上川の治水で石巻のまちを開いた川村孫兵衛重吉に対する、
報恩感謝の祭りとして約90年前に始まったお祭り。
川の恵みに感謝しながら、供養祭が厳粛にとり行われる一方で、
地元の小学生による鼓笛隊のパレードや花火大会などが開催されます。

STAND UP WEEKは震災直後の2011年の夏に
川開き祭りを開催することを決めた地元の人たちの心意気に動かされ、
石巻2.0をはじめとした地元有志たちがまちを一緒に盛り上げたいと、
まちに変化を起こすような小さな実践を試みるまちづくり週間です。

これまでに野外映画上映会や
地元料理人たちが一流の料理でもてなすアウトドアダイニング、
音楽ライブやものづくりのワークショップなどを実践してきました。

STAND UP WEEK2011で行われた野外映画上映会。

このSTAND UP WEEKのひとつの企画として
2012年に始まったのが、〈石巻一箱古本市〉。
東京で編集者やライターを中心に東北に本を送る活動をしていた
〈一箱本送り隊〉と石巻2.0とで始め、今では石巻の人気イベントになりました。

2012年は非常に盛況のうちに終わり、
その〈石巻一箱古本市〉の成功をきっかけとして、
まちなかに日常的に本がある拠点がつくられることになりました。

STAND UP WEEK2012の一箱古本市の様子。

震災後に石巻に関わるようになって数年、
ふと気づくとまちなかには1軒も本屋さんがないことに気づきました。
それまで用事のない時は決まってまちの本屋に通っていた自分としては、
なにか大事なものがまちにないという感覚を抱えていました。

石巻のまちなかには、商店街を歩く人が少なくなったことにともない、
震災前から多くの商店が廃業しました。
聞けばかつてはまちなかにも6店舗もの本屋さんがあり、
地域内のミニコミ誌も複数あった出版文化もさかんなまちでした。
そんなまちだからか、一箱古本市はとても関心をもって集まってくれた方が多く、
まちなかに本がある場所の重要さを身をもって体験しました。

2012年のSTAND UP WEEK後、
新刊書店でも古書店でもない本が集う空間を新たにつくるため、
一緒に考えてくれる人を地元新聞で募集。
今、本が集う場所を石巻のまちなかにつくるにはどうすればよいか、
半年ほど議論を進めました。かつてあった本屋さんの思い出を語る人、
商店街がよかった頃のまちなかの思い出を話す人など、
議論はさまざま及びましたが、集まった人たちはみな、
まちなかにまだまだ大きな期待と可能性を感じていました。

こうして2013年の7月に完成したのが〈石巻まちの本棚〉です。

(写真:鳥村鋼一)

実はこの場所は地元の人たちから長らく愛されていた新刊書店〈たん書房〉が
もともとあった場所です。
場所探しに苦心していたころに町内での会合に出席していた大家さんに声をかけ、
時間をかけて交渉した結果、借りることができました。
かつて書店を営んでいた大家さんも今では運営を手伝ってくれる大事なキーパーソンです。

東京で復興を応援する展覧会で使われた木材の建屋を
京都の建築家畠山サトルさんとともに移築。
40平方メートルほどの店内の壁は左官の挾土秀平さんや地元左官の今野 等さんたちと、
一般の方が参加するワークショップ形式で施工しました。

セルフビルド ワークショップの様子。(写真:布田直志)

石巻まちの本棚は貸し本と古書販売を日常的に行っています。
私自身も運営に深く関わり、これまで3年の間に、
本や出版に関わる仕事に従事する人に話を聞く連続講座や古本販売、
写真展や期間限定のポップアップショップなど
本だけではない幅広い活動を続けています。

(写真:布田直志)

講座のひとつ、『料理研究家 枝元なほみさんと本とお話し』。

本を契機に人が集まり、広がる拠点があることで、
本屋さんのなかった商店街に多元的な深みを与えています。

(写真:鳥村鋼一)

石巻まちの本棚誕生の契機となった
石巻一箱古本市は、今年2016年も7月23日(土)に
STAND UP WEEK2016の初日のメインイベントとして開催します。
ぜひとも足を運んでほしいです。

たった3日間でつくったバーや、
イベントをきっかけに生まれた本のためのスペースが、
人と人をつなぎながら、
石巻のまちの日常を少しづつ変化させていくことになっていったと思います。

次回のリノベのススメは「富貴丁通り」、
かつてはセレクトショップやブランドショップが建ち並び、
石巻随一のファッションストリートでしたが閉店するお店も増え、
一時的に寂しい状態が続いていましたが、
昨今建ち並ぶ古い建物に新規開業するものも増え、
今再び地元の注目スポットとなりつつあります。

そんな富貴丁通りの魅力を
東京から石巻へと移り住んだ建築家・天野美紀さんとともにお伝えします。
天野さんは地元料理のレストラン〈日和キッチン〉のオーナーでもあり、
石巻でも設計活動に従事するパワフルな女性。乞うご期待。

informarion

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復興バー

住所:宮城県石巻市中央1-8-8

TEL:0225-25-4953( (ISHINOMAKI2.0)

営業時間:水・金・土 20:00〜24:00

※メニューは、ビール500円・パイン泡盛500円など

https://www.facebook.com/fukkobarishinomaki/

information

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石巻まちの本棚

住所:宮城県石巻市中央2-3-16 たん書房ビル1階

TEL:0225-25-4953 (ISHINOMAKI2.0)

営業時間:土・日・月 11:00〜18:00

http://bookishinomaki.com

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