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連載

“支えあう農業”「CSA」って? 
長沼〈メノビレッジ〉を営む夫妻が
考える、ローカルの経済循環

うちへおいでよ!
みんなでつくるエコビレッジ
vol.032|Page 2

posted:2016.12.8  from:北海道夕張郡長沼町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。
http://michikuru.com/

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支えあう農業「CSA」や加工品づくりで、地産地消を実践する

講演活動や市民運動による働きかけだけでなく、
レイモンド夫妻は地産地消の取り組みを実践している。
1996年から取り組んできたのが「CSA」の活動だ。
CSAとは、Community Supported Agricultureの略。
地域で支えあう農業という意味で、同じ地域に住む農家と消費者が手を取り合い、
野菜や穀物、卵などの受け渡しを直接するシステムのことを言う。

メノビレッジでは、それぞれの生産物に価格をつけるのではなく、
年間にかかる生産コストの合計額を会員数で割って会費を決め、
その時期とれた作物を会員が定期的に受け取っていた。
そしてふたりは、この取り組みによって、
グローバル化された巨大な経済システムのなかで、
小さいながらも別のベクトルを持つしくみを社会に示すことが、
とても大切だという意識をもっていた。

18ヘクタールの農場でさまざまな野菜や穀物をつくっているメノビレッジ。(写真提供:メノビレッジ)

このほかメノビレッジでは、加工品の販売も行っており、4年前からは、
なたねを栽培し油を搾る〈みん菜の花プロジェクト〉を立ち上げた。
ここでも大切にしているのは、地域のなかで食べ物を循環させるという点。

レイモンドさんによると、50年ほど前までは、食用油のほとんどが
日本で自給できていたそうで、長沼にもなたねの畑が670ヘクタールもあったという。
当時は、地域に搾油場も9か所あったが、
60年代以降、またたくまに閉鎖されてしまった。

その理由は、大手食用油メーカーが、カナダからなたねの輸入を始めたこと。
加えて国の政策により、米づくりが奨励されたことなどがあった。
「以前は、油も地元で消費され、搾り粕も肥料や餌として
土に還元されることで、持続可能な自立した経済がありましたが、
それがあっという間に失われてしまった」(レイモンドさん)

雪の下から見えるのがなたね。春に花が咲き種を収穫して油をつくる。現在、搾油は岩手の業者に依頼しているが、いずれ施設を整備して、購入した搾油機を使って自分たちで油の製造をしたいと考えている。

レイモンドさんはなたねを育て油を搾ることによって、再び物や人の行き来の活発な、
生き生きとした社会をつくりあげることにつなげたいと考えている。
さらに地域経済を強いものにするためには、なたねの畑をつくることだけでなく、
インフラの整備も欠かせないと考え、搾油機も購入した。
同じ考えに基づいて、小麦の製粉機もメノビレッジに設置している。

メノビレッジにある小麦の製粉機。製粉した粉の販売も行っている。

わたしたちはいま、油の原料がどのように育てられ、
どのように輸入され、食卓に運ばれるまでに、
どれほどのエネルギーをつかっているのか、想像するのは難しい。
もし、メノビレッジのように、ご近所さんがつくったものであれば、
その生産と流通の過程をリアルに知ることができる。
「ローカルでは自分の行いが、人や大地、自然に
どういう影響をおよぼすのかよく見える」とふたりは語ってくれた。

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