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北海道の郷土食
「三平汁」を作ってみよう。
素材だけで美味しい、
でっかい大地のレシピ。

日本列島カンタン郷土食
vol.001

posted:2014.6.13   from:北海道  genre:食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  地域ごとにさまざまな郷土料理がありますが、なかなか食べないし、伝えられていない。
コロカルはそれをちょっと心配してました。そんなときに郷土料理を後世に伝える全集が編集部で話題になり。
これを教科書に、いろんな人ともつながって、郷土料理を身近にする連載をしよう!ということに。
料理人・後藤しおりさんがアレンジした、家庭でおいしくカンタンに作れる郷土料理を、都道府県別に紹介していきます!

profile

Shiori Goto
後藤しおり

ごとう・しおり●実家は福島県で寿司屋を営む。ブータン料理店、野菜料理店などを経て、2012年7月に独立。世田谷を拠点にケータリング、ロケ弁、出張料理人として活動。不定期でアトリエでイベントなども行う。
http://gotoshiori.com/

photographer profile

Tetsuka Yamaguchi
山口徹花

やまぐち・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。『anan』『Hanako』など女性誌を中心に活躍。週末は自然豊かな暮らしを求めて、郊外の古民家を探訪中。コロカルで『美味しいアルバム』も連載中。

writer profile

Akiko Saito
齋藤あきこ

さいとう・あきこ●宮城県生まれ。コロカル編集部編集担当。好きな郷土料理は宮城県亘理町のはらこめし。
https://twitter.com/akiko_saito

移り変わる季節があり、四方を海に囲まれ、
豊かな自然と山地がもたらす水にも恵まれる
日本列島だからこそ生まれた郷土食。
この郷土食を日本の隅々から掘り起こし、記録した名著があります。

それは「日本の食生活全集」全50巻(農文協)。
1980年代から90年代にかけて刊行されたこのシリーズは、
都道府県別にさまざまな郷土料理が“聞き書き”されていて、
コロカル編集部にもこの本のファンがたくさんいます。

そこで! 農文協のご担当者をお訪ねし、
特別にご協力をいただき、始まったのがこの連載です。
「日本の食生活全集」に掲載されている料理
(すばらしい郷土食がたくさん網羅されているのです!)から、
1品を選び、料理人・後藤しおりさんが
現代の家庭でもおいしくカンタンに作れるように再現しました。

これからそのレシピを各都道府県別に公開していきます。
ぜひみなさんもお試しください。
また、みなさんの好きな郷土料理をコロカルのFacebookから教えてくださいねー。

「自然とともに生きる」北海道の食事

記念すべき第一回のレシピは、北海道。
北海道のひとたちは、長く厳しい冬と遅い春、
短い夏。そして火山灰の土と共に暮らしてきました。
明治の初期に本州各地から移り住んだ彼らは
山野を開拓し、不利に見える条件を工夫で乗り越えてきたんです。

畑で栽培する作物には、冷害に強いじゃがいも、
山からの風が良く乾燥してくれる大豆やうずら豆を選びました。
冬を越すために、野菜を凍らせずに
長く保存する貯蔵方法を考え抜きました。

また、本州からの居住者たちは、各家庭による
本州での食文化をそのまま持ち込んだので、
各地方での食文化が独自な発展を遂げていることも面白いところ。
「日本の食生活全集1 聞き書 北海道の食事」をめくると、
ますの飯ずし、身欠きにしんの昆布巻き、
かぼちゃだんご、ほっけのかまぼこなどが並んでいて、どれもおいしそう。
海に向かい、原野を切り拓き、自然とともに暮らす北海道の郷土食から選んだ、
カンタンレシピを2回にわたってお届けします。

Page 2

合言葉は「三平しようか」! ありあわせの美学「三平汁」

北海道編の前編でご紹介するのは、
広い北海道でも広い地域で日常的なおかずとして作られる「三平汁」。
明治後期ごろから、北海道の代表的な料理として位置づけられる定番のメニューです。
名前こそ「汁」ですが、汁物ではなく、
ありあわせの材料で作るクイックメニュー。
お腹がすいたら、「三平しようか」を合言葉に、
それぞれの季節で旬の野菜やお魚をさっと煮込みます。

さらに取り入れられるのは、こんな材料。
春はふき、わかめ。夏は菜っ葉やささぎ。
秋は大根、キャベツ、かぼちゃ。冬は鮭、ほっけ、にしん、たら、
などなど。三平汁はいつでも具だくさん。
米が貴重だったので、米をあまり食べなくてもお腹がいっぱいになるように、
という知恵だったんです。

しおりさんのレシピは、
三平汁のルーツと言われる、糠でつけこんだ「糠にしん」を使った三平汁。
シンプルに煮込むだけで、糠にしんの塩分と旨味がスープに溶け出し、
滋味深い風味が楽しめます。

「三平汁の魅力は、素材の旨味の組み合わせだけで美味しくなるところ。
今回はせっかくなので伝統の食材「糠にしん」を使ってみました。
糠にしんの塩気だけで調味するのが醍醐味です。
通信販売やアンテナショップでも手に入りますし、お手元になければ
塩漬けの鮭やほっけで代用しても。
塩分は糠にしんの種類にもよるので、量を調整してください。
翌日には糠にしんの塩分とうまみが全体になじむので、
より美味しくいただけます」(後藤さん)

これが糠にしん。塩分と旨味がたっぷり詰まっています。

北海道足寄郡で採れる、成長すると2メートルを超える「ラワンぶき」。

三平汁には、「絶対にしんを使うべし」という厳格な決まりはありません。
そのときに採れた食材を組み合わせて作られる、柔軟な料理。
それもまた、開拓精神が産んだ北海道の食文化を象徴するところです。

一晩水で戻せばふっくら炊けるうずら豆

三平汁のおともには、北海道で採れるうずら豆を
たっぷり入れた「うずら豆入り飯」を。
ふっくらと炊けたうずら豆の食感で箸が進みます。
お米が貴重だった昔はきびのご飯でしたが、白米でアレンジしています。

「北海道のお料理で印象的だったのは、お米が貴重だったゆえの
豆や芋の使い方。冬を越すために保存食を多用し、
旬のお野菜と保存食をうまく組み合わせているなぁ、と。
北海道独特の文化を感じました」(後藤しおりさん)

みなさんもぜひ、作ってみてください!

★鰊とふき三平(2人前)

材料

糠にしん … 半身の2分の1

ふき … 2本

酒 … 大さじ2

昆布 … 5×10cm

水 … 500ml

1. 昆布は網の上で焦げ目が少しつく程度あぶる。ふきは適当な長さに切り、沸騰した湯に放ち、2~3分茹でる。水にとり、筋をとり、食べやすい大きさに切る。糠にしんは、糠を洗い流し、水気を拭き取り、一口大に切っておく。

2. 鍋に水と昆布をいれて中火にかけ、小さな煮え玉が立ったら、ごく弱火にし、30分おく。糠にしんと酒を加え15分煮る。ふきを入れ、5分煮る。

★うずら豆入り飯(3合分)

材料

米 … 3合

うずら豆 … 100g~130g(一晩水で戻したもの)

昆布 … 5×5cm

酒 … 大さじ3

塩 … 大さじ2分の1

薄口醤油 … 小さじ1

1. お米は研いで15分浸水させ、ザルにあげて水気をきっておく。

2. 炊飯器にと調味料を入れてざっと混ぜ、うずら豆、昆布をのせて炊く。

書籍情報

日本の食生活全集1 聞き書 北海道の食事

著者:北海道の食事編集委員会編出版:農山漁村文化協会(農文協)

日本の食生活全集とは:おばあさんからの聞き書きで、各県の風土と暮らしから生まれた食生活の英知、消え去ろうとする日本の食の源を記録し、各地域の固有の食文化を集大成する書籍。四季の食事に加えて、救荒食、病人食、妊婦食、通過儀礼の食、冠婚葬祭の食事等を記録している。

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