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連載

〈真鶴みんなの家〉で起きたこと。
アーティストと地元の若者による
ものづくりワークショップ

真鶴半島イトナミ美術館
作品No.006|Page 1

posted:2017.1.10  from:神奈川県足柄下郡真鶴町  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

sponsored by 真鶴町

〈 この連載・企画は… 〉  神奈川県の西、相模湾に浮かぶ真鶴半島。
ここにあるのが〈真鶴半島イトナミ美術館〉。といっても、かたちある美術館ではありません。
真鶴の人たちが大切にしているものや、地元の人と移住者がともに紡いでいく「ストーリー」、
真鶴でこだわりのものづくりをする「町民アーティスト」、それらをすべて「作品」と捉え、
真鶴半島をまるごと美術館に見立て発信していきます。真鶴半島イトナミ美術館へ、ようこそ。

writer profile

Hiromi Kajiyama

梶山ひろみ

かじやま・ひろみ●熊本県出身。ウェブや雑誌のほか、『しごととわたし』や家族と一年誌『家族』での編集・執筆も。お気に入りの熊本土産は、808 COFFEE STOPのコーヒー豆、Ange Michikoのクッキー、大小さまざまな木葉猿。阿蘇ロックも気になる日々。

credit

撮影:みんなの家プロジェクトチーム

都心からJR東海道線で約1時間半。
真鶴駅から商店が建ち並ぶ通りを歩くこと約10分ほどで、
道路にまで人が溢れる一軒家を見つけた。
中をのぞくと、右手には手づくりされた真鶴の地図、
左手には住民の顔の切り絵が壁を埋め尽くしている。
中央のスクリーンには「真鶴みんなの家」の文字。

お試し暮らしができる一軒家〈くらしかる真鶴〉では、
2016年10月18日~10月29日の間、一般公開・参加型のワークショップ
〈真鶴みんなの家プロジェクト〉が行われた。

このワークショップは、くらしかる真鶴を拠点に、
未来の真鶴を担う若者たちと外部のアーティストたちが集い、
寝食をともにしながらディスカッションをし、ものづくりで交流するというもの。
いままさに、住民を前に各自の成果物を発表する会が始まろうとしていたところだった。

プロジェクトを軌道にのせた切り似顔絵

オープニングを飾ったのは、チャンキー松本さんによる
和紙を使った貼り絵を紹介する映像作品。
真鶴らしい風景を貼り絵で表現し、絵や写真では表現できない素朴さと
リアルさが同居した仕上がりに、会場からも声が上がる。

チャンキーさんは、東京を拠点に絵本作家や
イラストレーターとして活躍しているアーティスト。
期間中は週末を除き、ほとんどの時間を真鶴で過ごした。
真鶴の印象は、「瀬戸内海の風景とよく似ていて懐かしい印象を持ちました。
僕は香川県の生まれで、仕事で尾道にもよく行くのでね」とのこと。

今回は、「人と景色、その両方がないとまちは成立しない」という考えから、
住民100人の切り似顔絵にも挑戦。
目の前に座った相手の顔を、わずか5分ほどで切り抜いていく。
特徴をよく捉えていて、とにかくそっくり。
この切り似顔絵をきっかけに、このプロジェクトを知った人がとても多かったそう。

「珍しい芸やし、初めて訪れたまちでは挨拶代わりにもなる。
待っていても始まらないので、最初はこっちから出かけて行きましたよ。
斜め向かいのお茶屋さんにふら~っと入って、挨拶をさせてもらって
『実は切り絵をするんです』と。
90歳になろうかというおばあさんの切り絵を切らせてもらいました。
幼稚園や敬老会(デイサービス)も訪問して、キャラクターを切ったり、
おめでたい切り絵を切ったりね」

発表会を前にチャンキーさんの切り似顔絵は99人分に到達していた。
「やっと完走できた気分」と清々しい表情だ。

右がチャンキーさん。左は地元チームとしてワークショップに参加した遠藤日向さん。貼り絵の映像作品につけた音楽も遠藤さんが担当した。

憧れのまち真鶴を歩き、写し、言葉をそえる

次に始まったのは神戸の塩屋からやってきた森本アリさんらによる〈ちいきいと〉。
〈ちいきいと〉は、まちの写真を使った大喜利合戦で、
神戸~阪神間を中心に、“ジモトを愛しジモトを極めた「まちの顔」たちが集結”し、
テーマに沿った写真とトークを発表する会のこと。

その名前は、地域を糸で結ぶという意味と、神戸にある元生糸検査所を
リノベーションした〈デザイン・クリエイティブセンター神戸〉(通称KIITO)で
開催されたことに端を発する。今回は、その真鶴版をやってみようというわけだ。

塩屋と真鶴には共通点が多いという森本さん(右下)。真鶴のまちをくまなく歩き回り、このワークショップが終わる頃には地元の人のように歩いていた。

ここで登場したのは「背戸道」「生きている屋外」「ほどよい駐車場」などの
『美の基準』にも登場するキーワードのほか、
真鶴というまちを浮き彫りにする「つる」「路地」「守り神」「ベンチ」「海」などの
言葉をテーマに撮影された写真の数々。

森本さんと真鶴のメンバーがまち歩きをして撮影し、選定されたものに、
住民や外から訪れた人々から公募された写真も加えられ、
撮影者によりその場でコメントが加えられ発表された。

会場からは写真が切り替わるたびに「ここどこ?」
「あ、○○さん家の近くね」など、質問と共感と、
ときに愛のあるツッコミが入り混じる賑やかな雰囲気に。
終了後は「住んでいると見失いがちな、なんでもないことの貴重さ、おもしろさが、
ほかの人のフィルターを通して見直すことで見えてきた」など、
うれしいコメントが寄せられた。

森本さんは、塩屋の洋館〈旧グッゲンハイム邸〉で催しの企画・運営を行っている。
ときに楽団の団長として、ときに塩屋のまちづくりメンバーとして、
幅広く活動している。真鶴は塩屋ととてもよく似ていながらも特別なまちだと話す。

「すり鉢状で、山と海が近くにあって、高低差がある。
塩屋と真鶴はまちの規模と地形がそっくりで見分けがつかないくらいです。
僕が真鶴を知ったのは、塩屋のまちを守るためにまちづくり条例の勉強をするなかで、
『美の基準』が取り上げられたことがきっかけ。すごいところがあるんだなと。
僕みたいなまちづくりを学んでいる人間からすると、真鶴は憧れのまちなんです」

その後、知人のつながりで真鶴からも塩屋に訪れている人がいることを知り、
「あ、向こうからも注目してもらえてるんや」と親近感をもったそう。

「昨日ね、美の基準をつくった三木邦之元町長さんがここに来られて、
お話できたんです。塩屋でもまちづくりガイドラインをつくろうとしているのですが、
つくるうえで、生の声を聞くことができて本当によかったです。
深く響くものがありました」

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