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森の中の小さな料理店
「かっこう料理店」で
十勝の恵みをまるごといただく

おでかけコロカル|北海道・道東編

posted:2015.10.3   from:北海道河西郡更別村  genre:旅行

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

photographer profile

YAYOI ARIMOTO

在本彌生

フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp

writer's profile

Team YumYum

チームヤムヤム
(山本 学 ・ 山本えり奈)

旅をしながら十勝に暮らす編集デザインチーム。あいうえお表やカレンダー、すごろくやイラストマップなど、日々の楽しみをデザインする作品をつくっています。「ヤムヤム旅新聞」にて、旅やローカルな魅力を発信中。 http://www.tyy.co.jp

credit

取材協力:北海道観光振興機構

帯広市中心街から車で30分、更別村の畑の中に、かっこうの鳴く森があります。
駐車場から小道を通って、森の向こうに現れる、こげ茶色の木の建物。
入り口には白く清潔な暖簾がかかっていて、
まるで童話の世界のような佇まいです。

柏の森の小道を歩くとかわいらしい建物が現れます。

店主の渡邊正和さん、知子さんご夫婦は、
2011年に更別村に引っ越してきて2年間場所を探し、
今の森に出会って2013年に店をオープンしました。
東京出身の正和さんは帯広市にある帯広畜産大学を卒業後、
料理人を目指して東京へ。
夜間の調理師学校へ通い、西荻窪にある〈のらぼう〉で料理の修行をします。
畑をしながら料理店を開きたいという夢を叶えるため、
学生時代を過ごした北海道へ戻りました。
同じ大学の同級生だった知子さんと一緒に、
日高山脈が綺麗にみえる更別村で、念願の料理店を開きました。

道路沿いにあるこちらの看板が目印。

かっこう料理店のメニューは、〈やさいごはん〉と
〈やさいごはん〉に肉料理などの主菜が付いた〈とかちごはん〉の2種類。
先付けからはじまり、かっこうサラダ、
かき揚げやだし巻き玉子などの野菜料理いろいろ、土鍋ごはん、お味噌汁、
最後は着物姿の知子さんが点ててくれるお抹茶と和菓子、
とコース仕立てて、一品ずつ運ばれます。

先付けは、更別村にある野矢農場の大根のネギ味噌かけ(上)。野菜料理いろいろ皿(下)。この日は、夏野菜の揚げ浸し、噴火湾産ベビーホタテと大根の和え物、更別産ニラ入り出汁巻き玉子、人参葉のかき揚げ、トウキビと南瓜のゴマ和え。季節の野菜を使っているので、内容は日によって変わります。

まず、おしながきに書かれた“本日のお野菜”の種類の多さに驚かされます。
「十勝には思っていたよりもたくさん野菜があって、
農家さんに買いに行ったら『この野菜使ってみて』といただいたり、
欲しい野菜をつくってくれたり」(正和さん)

かっこう料理店の看板のひとつ、〈かっこうサラダ〉は、
まさに豊かな十勝の土地で農家さんのつくったいろんな珍しい野菜がいっぱい。

〈かっこうサラダ〉は色も味もカラフル。冬は〈かっこうおでん〉になります。

黄色や紫色の人参、ナスタチウムやボリジといった食べられる花、
縞模様の地豆など、ひと口食べるたびに味わいの異なる、楽しいサラダです。
ほかにも長芋、きゅうり、トウキビ、キャベツ、南瓜、金時豆など数種類の豆、
グズベリーなど果実類、アクセントに更別産のポテトチップスと、彩り豊かに。
正和さんも何種類入ってるのかわからないほどだそうです。
(編集スタッフが数えたところ25種類の野菜や果実が入ってました!)

とかちごはん(2000円)には、肉料理や魚料理がつく。この日はお野菜入りミートローフ。

テーブルごとに炊きたてを出してくれる土鍋ごはんは、2種類から選びます。
かっこう畑で採れた豆を使った豆ごはんの米は、
手植え、手刈り、天日干しした東川町産無農薬米。
毎年秋には、ご夫婦で稲刈りのお手伝いにも行くそうです。
もう一種類は、季節によって野菜が変わり、今回はカボチャと肉味噌のごはんでした。
ホクホクの甘いカボチャと濃厚な肉味噌の相性が絶妙なおいしさです。

土鍋ごはんはテーブルごとに炊きたてを出してくれます。

“かっこう”という店名は、畑仕事を始める季節の合図である
「かっこうが鳴いたら豆を蒔く」という農家に伝わる言い伝えと、
4歳になる息子さんが1歳のころ、
初めて言った言葉が“かっこう”だったから。
鳥のさえずりが響く森の中。窓の外からはミズナラ、柏の森を望み、
冬には清らかな小川も顔を出す環境で、家族でつつましく暮らしています。
「メニューは毎日少しずつ変えています。
特に最初にお出ししている先付けは、あたたかい日は冷たいもの、
寒い日は温かなものにしています。
暑いかなー? いや寒いんじゃない? って、
その日の朝に今日の天気はどっちどっち? と夫婦で悩んだりするんです」
と笑う知子さん。そんなご夫婦の優しい人柄もこの店の魅力です。

コースのしめくくりは、知子さんが点ててくれる有機宇治抹茶と手作りの和菓子。優しい味わいにほっとします。

「食べ物が、誰がつくったのか、
どこで育ったのかがわかるというのは、すごい幸せなことだと思います」(正和さん)

おしながきにある
“食べることは生きること。明日に繋がるお食事を”
という言葉の通り、心身ともに清らかになっていくような、
心地良くお腹を満たすことができる、料理の数々。
笑顔の素敵なご夫婦のあたたかな人柄。
窓の外に広がる柏の森……人、食、自然と、
十勝のよさを味わうことのできる料理店です。

小さなお店なので、予約制とのこと。
夏休みなどの繁忙期は、当日の予約が取れないこともあるので、予め連絡を。

笑顔が素敵な渡邊さんご夫婦。

information


map

かっこう料理店

住所:河西郡更別村字勢雄317-8

TEL:0155-52-5180

営業時間:11:00〜15:00(予約制) 

定休日:日曜・祝日、ほか不定休あり

http://kakkouryouritenn.blog.fc2.com/

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