odekake
posted:2015.10.2 from:北海道河東郡上士幌町 genre:旅行
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
photographer profile
YAYOI ARIMOTO
在本彌生
フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp
writer's profile
Team YumYum
チームヤムヤム
(山本 学 ・ 山本えり奈)
旅をしながら十勝に暮らす編集デザインチーム。あいうえお表やカレンダー、すごろくやイラストマップなど、日々の楽しみをデザインする作品をつくっています。「ヤムヤム旅新聞」にて、旅やローカルな魅力を発信中。
http://www.tyy.co.jp
credit
取材協力:北海道観光振興機構
帯広市の中心街から車で1時間20分。
上士幌町・ぬかびら源泉郷に、心のこもったおもてなしが評判で、
地元の人たちが何度も足を運ぶ宿があります。
玄関には〈中村屋〉の文字と、
季節ごとの糠平の風景が描かれた手づくりの暖簾。
柱時計や福助人形、足踏みミシンなどが置かれたロビーは、
昭和の古民家にお邪魔したようなぬくもりのある雰囲気。
アメ色のソファに座り、
火鉢でパチパチとポテトチップスを炙っていただくことができます。
調度品のほとんどは、かつて土産物屋をしていたときのものや
古い農家や民家からいただいたものだそう。
廊下にずらりと並ぶ自家製の果実酒。
アキグミ、エゾヤマザクラ、コクワ、ふきのとうなど、
夕食時に選ぶことができます。
現在の中村屋のはじまりは、昭和52年。
土産店を経営していた当時、
昭和はじめから続いていた旅館の建物を買い取って宿泊業を始めました。
その頃の旅行スタイルは団体客が主流で、
55の客室を持つ中規模旅館として経営していましたが、
団体ツアーブームが去った後、中村屋は大きな方向転換をしました。
15年ほど前に、それまで55室あった客室を、19室まで縮小。
個人客へきめ細やかなおもてなしをできる宿へと
その方針を変えていったのです。
一室ずつ趣の異なる客室は、すべて社長の中村準一さんと、
娘婿の健次さんの手作業によるもの。
材料は古民家から集めたどっしりとした梁や建具、床板など。
古いタイルが散りばめられた洗面台。
エゾシカの革が貼られた畳、池田町産のミズナラを使ったベッドボード、
足寄産のエンジュを使った客室のドア。
客室の木材や畳の縁も、ローカルに根づいたもの、地産地消を目指しています。
源泉かけ流しの温泉は、趣の異なるふたつの内風呂と
混浴の露天風呂があります。
ひとつはヒノキやサワラ、オンコ、ヒバなどの
木をふんだんに使った湯治場風の木の浴場、
もう一方は、昭和30年代のタイル職人がつくったというレトロな花形の湯船。
いまでは貴重な細やかなタイルは、タイル職人の技を感じさせてくれます。
手づくりだという露天風呂には、
星を見るための真っ暗になるスイッチなど粋な演出も。
夕食時には、キャンドルに照らされた廊下からロッジ風のレストランへ。
寒い日は薪ストーブのパチパチと薪がはぜる灯りを眺めながら、
窓の外にはエゾシカがときおり現れることもあります。
食材はほぼ全てが地元産のもの。
糠平周辺地域で採れた山菜や野菜をたっぷり使っています。
春から秋にかけていただける、摘み草の天ぷらは、
アカツメグサやブドウの葉、ミントなど、普段目にする草花が食べられるなんて!
と驚きの味です。
この日、豚肉と野菜の陶板焼きについてきたのは、
士幌町の「夢想農園」のわかもろこし(ヤングコーン)。
トウキビの赤ちゃんであるヤングコーンは短い夏の間だけ食べられる貴重なもの。
柔らかくて甘みのあるタケノコのような歯ざわりです。
朝食は、地産地消を大切にしたビュッフェスタイル。
地元採れたての野菜料理や茅室町・さげやの新鮮生卵、十勝わたなべの納豆、自家製の梅干、
ゴボウ、カボチャの種、レーズンを使った手づくりグラノーラ、焼きたてパン、
自家製ソーセージのスープなど、
和洋に富んだ旬の食材をふんだんに使った優しい味わいの料理が並びます。
さらに、中村屋には、アイデアの光るうれしいサービスがいくつもあります。
まず、宿泊客が滞在中に利用できる品々が揃えられた、
〈エゾリスの穴〉と呼ばれる小部屋。
基本的なアメニティの追加分以外にも、
双眼鏡、星座早見盤、野草図鑑、虫除けスプレー、お香、
アロマディフューザー、折り紙やお絵かきセット、スノーシューや自転車まで、
宿での滞在をより楽しくしてくれそうなアイテムがいっぱいです。
そして朝起きると、ドアノブにかわいいバッグが。
中にはころんとした牛乳瓶が入っていました。
上士幌町の〈しんむら牧場〉の新鮮な牛乳。心遣いにほっこりします。
「宿で体験したことを持ち帰ってほしい」
そんな想いから、ロビーにあるお土産コーナーには
宿にちなんだものが並びます。
夕食や朝食にも使われている、地元産の野菜が並んだ「食べれる野菜市」。
料理で使われている地元でとれた豆も売店で量り売りしています。
料理に使っても、家庭菜園で育てても。
手書きのレシピカードも用意されていて、
食べておいしかった料理、豆や雑穀を使ったおやつなど、
家でもつくれるようにと、うれしい心遣い。
客室に置かれていた手づくり石鹸やお風呂バッグ、
使いやすさを追求したオリジナルタオルも販売。
赤いナイロン製のお風呂バッグは、上士幌の気球を再利用したもの。
気球の全国大会も行われる上士幌らしい手づくりの逸品です。
エゾシカの革を使ったバブーシュやコースターも目を引きます。
中村屋の食事に使っていたいろんな木の箸や、
客室の鍵に付いていたバードコールをつくる体験もできます。
ローカルに愛され、ローカルを感じることのできる宿。
“泊まる”ことで、
糠平温泉の自然や動植物、地域の豊かさ、あたたかさを体験できる場所です。
information
糠平温泉 中村屋
住所:河東郡上士幌町字ぬかびら源泉郷南区
TEL:01564-4-2311
料金 新和室/1泊2食付1万3110円〜、新和洋室/1泊2食付1万5270円〜
※駐車場 あり
http://nukabira-nakamuraya.com/
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