西和賀の郷土料理「すし漬け」や
ツアーで感じる、
雪がもたらす「発酵パワー」
岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000人の小さなまちです。
雪がもたらす西和賀町の魅力あるコンテンツを、
全国へ発信していくためのブランドコンセプト〈ユキノチカラ〉。
西和賀の風景をつくりだし、土地の個性をかたちづくってきた雪を、
しっかりタカラモノとしてアピールしていくプロジェクトです。
今回ご紹介するのは、雪がもたらす発酵文化のひとつ、「すし漬け」。
後半には2月に開催されるユキノチカラツアー2018「雪国の発酵をめぐる旅」の詳細を
お知らせしていますので、どうぞ最後までご覧ください。
魚を麹やご飯などと漬けて発酵させる「すし漬け」は、
西和賀の貴重な冬の動物性タンパク源。
これまでさまざまな「ユキノチカラ」を取り上げてきたが、
伝統的な発酵食の文化は、その中の最たるものではないだろうか。
麹によりデンプン質が糖分に分解されたあと、酵母・乳酸菌によってつくられる発酵食。
雪による低温多湿の気候は、この発酵食づくりに適しているといわれる。

しかも奥羽山系の山々に囲まれた盆地の西和賀の場合は、
一日あるいは四季の寒暖差が大きく、土も豊かで、水も空気もきれい。
今回の「ユキノチカラツアー」にも同行していただく発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが、
「発酵に良い環境」として挙げている条件を、すべて網羅している。
西和賀の発酵文化が、今も脈々と受け継がれているゆえんだ。

近年ブームの甘酒は、アミノ酸たっぷりの発酵飲料。
そんな西和賀の代表的な発酵食が、「すし漬け」。
魚を貯蔵するためにご飯や麹、塩などと一緒に漬けて発酵させた保存食で、
西和賀の郷土料理でもある。
日本各地に伝わっている「なれずし」「飯ずし(いずし/いいずし)」と同じような料理、
といえばイメージできる人もいるだろう。
発酵により醸し出される、甘みと酸味が複雑に入り交じったその味わいは、
のどを通過しても口中に余韻が残るほど、力強い。
それだけに、好き嫌いの個人差も大きいという。
山に囲まれた西和賀の人々は、昔から隣の秋田県から魚を仕入れ、
冬の貴重な動物性タンパク源として「すし漬け」をつくり、食べていた。
この料理で岩手県の「食の匠」に認定された湯田地区出身・在住の高橋節子さんも、
母親がつくっていたことを鮮明に覚えている。
「子どもの頃、11月になると両親と一緒に隣の横手市にハタハタを買いに行ったものです。
母親はハタハタをすし漬けのほか、麹漬け、塩漬け、米ぬか漬けにしていました。
その頃はすし漬けが苦手で食べなかったですけど、
塩漬けのハタハタを焼いたものは好きで、毎朝食べていましたね」

「すし漬け」で岩手県の食の匠に認定された高橋節子さん。自宅の冷蔵庫には、塩を加えてつくる「塩麹」と、砂糖を加えてつくる「甘麹」の2種類を常備したり、もち米のおかゆに麹を加えて甘酒をつくったりと、発酵食の達人でもある。
そんな高橋さんがすし漬けを食べるようになったのは、嫁いでから。
お姑さんがつくるすし漬けがおいしく、開眼したそうだ。
ただし、魚はハタハタではなくホッケ。
昔はどの家庭でもすし漬けにはハタハタを使っていたが、
高橋さんが嫁いだ頃からハタハタが不漁で値段が高くなったため、
高橋家ではホッケなどほかの魚で代用するようになっていた。
「以来、私もホッケのすし漬けをつくるようになりました。
ほかに、サケ、イカ、生ニシン、身欠きニシン、サンマでもつくります。
ホッケを漬ける時にはカブも一緒に入れますが、
サケの時は赤カブ、イカの時はキャベツと、魚と相性の良い野菜を使います。
すし漬けは家庭料理なので、使う魚も野菜もつくり方も家によってさまざまですよ」
「食の匠」である高橋さんのすし漬けの主なポイントは3つ。
ひとつは、下漬けする時に酢を多めに使い、魚の生臭みを消すこと。
高橋さん自身が、魚の生臭さが苦手だからだという。
ふたつめは、材料を順序よく重ねて漬けること。
ホッケの場合、カブのほかに人参やフノリも使い、
それらを順番に重ねることで彩り良く仕上がる。
これは実家のお母さんから受け継いだやり方だ。
3つめもお母さん譲りで、衛生上の理由から、笹の葉を使うこと。
盛りつけた時も、笹の葉の緑で、見た目がいっそう美しくなる。