連載
posted:2014.7.15 from:福井県鯖江市 genre:ものづくり
sponsored by 貝印
〈 この連載・企画は… 〉
プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。
editor profile
Tetra Tanizaki
谷崎テトラ
たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/
photographer
Suzu(Fresco)
スズ
フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/
TSUGIとは関西から福井に移住した20代7名による
ものづくりとデザインのユニット。
木工、眼鏡づくり、デザイン、地域活性や自然環境NPOなど
それぞれが地域で仕事をしながら、
ものづくりをテーマとしたイベントの企画をしている。
TSUGIという言葉は「次」「継ぎ」「接ぎ」「注ぎ」という
4つの「TSUGI」から生まれた言葉だという。
伝統の知恵を「受け継ぎ」、若者たちと地域を「つなぐ」、
そして「次(NEXT)」をつくる。
「“次”の世代である若者がものづくりや文化を“継ぎ”、
新たなアイデアを“注ぐ”ことでモノ・コト・ヒトを“接ぐ”」
という思いが込められている。
鯖江は越前漆器、越前和紙、そして、眼鏡など、ものづくりのまち。
拠点となる「TSUGI Lab」は鯖江市河和田地区にある錦古里漆器店を
セルフビルドで改装した。
福井を面白くしていきたい、そんな若者たちが集まり、
そこから食のカフェイベントや割れた器を修繕する金継ぎワークショップなど、
鯖江を面白くするプロジェクトが生まれている。
TSUGI代表の永富三基さんにお話を伺った。
普段は鯖江で漆器の木地づくりをする「ヤマト工芸」で木工職人として働いている。
大学卒業と同時に関西から移住してきたIターンの24歳だ。
永富さんをはじめ、関西の若者たちが、なぜここ鯖江に移住してきたのだろう。
「きっかけは河和田アートキャンプでした。
2004年の福井豪雨の被災地支援のアート活動です。
そのとき地域のひとと交流して、縁ができました」
河和田アートキャンプとは
2004年の福井豪雨の被災地支援をきっかけにスタートした地域振興イベント。
「芸術が社会に貢献できることとは何か?」という問いかけから始まり、
全国32大学の学生が参加。
毎年夏、鯖江市の河和田地区で行われ、現在約800人の若者たちが参加している。
TSUGIのメンバーもこのキャンプの主要なメンバーとして地域に関わった。
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河和田アートキャンプをきっかけに河和田地区に暮らす人々との交流がはじまった。
しかし永富三基さんは、移住の決め手となったのは
「ものづくりをする職人の魅力」だという。
「学生として最初はこのまちに関わって、
いろいろ地域の活動や交流をしたんですが、
移住してきたきっかけは“ものづくり”です。」
“ものづくり”の産地のなかにある
この地域独自の技術とかノウハウ、製品が眠っているんです。
それを習得して、自分たちなりに県外・県内に発信していきたい。
とくに同世代にむけてものづくりの魅力を、発信していきたい」
そして2013年、同じ志を持つ仲間7人でTSUGIを立ち上げる。
「自分たちの活動がきっかけになって、
地元のひとも移住者も一緒になって発信していく、そんな熱いまちになれば」と考えた。
福井県鯖江はものづくりのまち。
職人たちは尊敬され、腕を競い合い、切瑳琢磨し、イノベーションを起こしてきた。
「この地域は昔から漆器や和紙といった伝統的工芸品の産地でした。
メガネで有名ですが、ほかにも繊維、ニットなどの
ものづくり産業が集まっているんです」
とTSUGIの事務局、ディレクターの新山直広さん。
デザイン事務所で3年間、地場産業の市場調査や
サンプルデザインに携わったあと、福井に移住した。
Iターン5年目。市の職員をしながら、地元のブランド化に取り組んでいる。
「このまち自体に、いっぱいヒントや素材があるんです。
そして若者たちが動きやすくしてくれる大人がいるんです」
昔から全国を渡り歩いてきた腕利きの職人たちが集まり、
このまちで仕事を得て、このまちに暮らし、やがてはこのまちに骨を埋める。
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TSUGIのメンバーの職種はさまざまだ。
木工職人、眼鏡職人、デザイナー、鯖江市職員、NPO職員……。
「TSUGIが目指すものは、ものづくりを志す若手が
10年後の地場産業を担えるように、切磋琢磨できる環境をつくること。
そして福井のものづくりのファンを増やしていくことです。
そのためにものづくりをテーマに未来の産地を醸成する
さまざまなイベントを開催しています」
とTSUGI事務局の新山さんは話す。
現在活動2年目のTSUGI。
初年度は「ものの価値を知る」をテーマに地場の技術を使ったワークショップを開催し、
産地の課題を解決する「モノトーク」や不定期カフェを展開した。
また産地のファンをつくるWEBサイト、「TSUGIBA」を発信し、
商品企画やデザインワークなど地域のコラボレーションを進めた。
「たとえば金継ぎのワークショップなどをしました。
ブローチをつくったり、修復だけでなく、ライトに参加できる工夫をしたんです」
2年目の現在は、商品企画やデザインワークなど
地域のコラボレーションを進めている。
今後、TSUGIが開発したコラボ商品を扱うショップや
シェア工房などのアイデアを実現させようと考えている。
最初はどんなところから始めたのだろうか。
「まずは“アジト”をつくろうと、
もともと河和田町で越前漆器をつくってきた錦古里漆器店の1階を改装しました。
私たちにはこの場所が魅力的だったし、
錦古里漆器店さんにとっては若い人が集まることが魅力。
お互いのメリットが一致して、「TSUGI Lab/ツギラボ」が誕生しました」
スタッフがセルフビルドでリノベーションした。
となりは錦古里漆器店さんの工房がある。職人と若者の交流が生まれた。
「自分たちのまちの資源を生かして、発信することで、
いろんなひとにもっと知ってもらいたいです。
はじめは交流振興が目的だったのですが、
最終的には定住人口を増やしていくことにつながるといいなと思っています。
ただ地域活性が目的という言い方はしたくない。
あくまで“ものづくり”を中心に福井を知ってもらいたいという気持ちです」
後編:地域の若者のコラボレーション 食・ものづくり・自然 × ソーシャルデザイン。「TSUGI」後編 はこちら
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