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連載

日本の食文化の豊かさを
WASARAにのせて。
「WASARA」後編

貝印 × colocal
これからの「つくる」
vol.012

posted:2014.7.8  from:東京都台東区  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。

伊勢谷友介さんがパーソナリティを、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

前編:“使い捨ての器”のイノベーション。「WASARA」前編 はこちら

世界で使われる日本のカタチ

日本の美意識や感性が込められた紙の器、WASARA。
パーティやケータリングなどのシーンにおいて使用される機会が多い。
日本国内のみならず、そうしたニーズが高い海外からの反響も大きい。

クリエイティブディレクターである緒方慎一郎さん(SIMPLICITY代表)は、
「WASARAを通して、日本の食文化を世界に発信していきたい」と話す。

和食が世界で食べられるようになり、より浸透していくなかで、
料理だけでなく、食べ方や作法も含めた日本の食文化を伝えたい。
言葉で説明しなくても「日本のクオリティと食文化からくるデザイン」であることが、
わかるようなものづくりを目指した。

角皿と竹製カトラリー

パーティなどのシーンで活躍することが多いWASARA。竹製カトラリーにはスリットが入っており、WASARAのフチに差し込むことで固定できる。(写真提供:WASARA)

パーティやケータリングというシーンは、それ自体がコミュニケーションの場。
そこで活躍するWASARAは、コミュニケーションを潤滑にする役割を担うこともできる。
片手にWASARAを持つ。話題のきっかけにもなるし、日本の紹介にもなる。

「食材や料理に合わせて器を選ぶことは、日本人にとって当たり前の行為です。
五感で食を楽しみ、季節の移ろいや自然の美しさなどいろいろなものを感じ取る。
たとえ使い捨ての紙の器だとしても、そういった日本の豊かな食文化を守りたい。
それを世界に伝えていきたいと思っています」

日本の食文化の豊かさをWASARAにのせて、世界にも広めていく。
そこには、新たな発見と可能性が満ちていた。

「あるとき、海外の方が2種類のWASARAを組み合わせて
カップ&ソーサーとして使っている場面に出会いました。
このような使われ方は開発段階では想定していませんでしたが、
それを見たとき、WASARAは成功したと感じました。
WASARAには“こう使わなければいけない”というルールはありません。
本当に大切なのは、日本のものが違う文化圏に渡ったときに、
新しい使い方や解釈を通じて、その土地の暮らしにきちんと根付くこと。
WASARAの使い方は、私たち日本人よりも海外の人のほうが上手かもしれません(笑)」

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丸皿、角皿、各種カップ

ピンチョススタイルで盛り付けられた料理

どのように組み合わせても構わない。その国の文化や風習に合わせて使い方も変化していくはずだ。(写真提供:WASARA)

使い方や未来を想像するチカラ

つくり手の想定を超えた使い方が生まれる。
使い方は使い手の自由だ。
それはWASARAが現代の暮らしに息づいている証拠だ。

しかしその一方で、失われつつある伝統工芸があるのも事実。
現代のライフスタイルに馴染まずに、
使われなくなってしまったもの、失われていく日本の技巧に
緒方さんは危機感を募らせる。

「日本の職人の技は素晴らしい。
そのクオリティの高さは世界でも突出しています。
しかし“どのように使われているか”を知らない職人が意外と多い。
実際に使われているシーンを職人へフィードバックするのはとても重要なことです」

自ら経営する和菓子店や和食料理店で
日本各地の職人とともに製作したオリジナルの器などを
実際に使ってきた緒方さんが、常に大切にしてきたことだ。

最高のクオリティのものをつくっていればいい、というだけでは
その産業は衰退してしまう。
クオリティがすごく高いだけに、もったいない。
そのギャップを埋め、
現代に使えるものにイノベーションしていくことも緒方さんの仕事だ。

ニーズがないから売れなくなる。
生活文化が変化していることを理解し、
ニーズに合わせてものづくりも進化させていくことが必要だ。

「デザインと同時に、どうすれば使ってもらえるのかということを、
一緒に提案していかなければなりません。
いくらかっこいいデザインをつくっても、使われなければ意味がない。
一時の話題で終わってしまうのではなく、
それが本当に日本のものづくりの未来につながっていかなくてはなりません」

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角皿が重ねられた状態

重ねて置かれている姿も美しい。持ちやすさを考慮したデザインが機能美を生み出している。(写真提供:WASARA)

日本には1000年を超えるような工芸がたくさんある。
本来は、後の世代のことを考えたものづくりをしてきた国なのだ。

「かつての人々は、例えばここにある木を切ってものをつくるときに、
何百年後かに誰かが困らないだろうかという想像力をもっていました。
自分が生きている間ではなく、何世代も後のことを思いやる。
そういう感性が日本のものづくりにはあるはずです。
いまつくっているものをどうやって残していくか、という問いは、
数百年単位で考えなくてはいけないと思います」

デザイン性の高さや、触ったときのなじみの良さ。
そういった物理的なことはもちろん、
使い捨ての紙の器という1回きりのものであっても、
日本の奥深い食文化とものづくりの精神がWASARAには込められている。

ボウル型WASARAの中にマカロンを

(写真提供:WASARA)

information

WASARA

環境に配慮したワンウェイの紙の器WASARAは、日本の美意識や価値観を商品哲学とし、3年以上の開発期間を経て2008年に誕生。2012年には、農薬を使わず自然に自生した竹を使用した、防カビ剤・漂白剤フリーの竹製カトラリーを発売。国内にとどまらず、欧州や北米など、世界中へ販路を拡大。香港デザインセンター主催アジアデザイン賞2009 大賞・金賞ダブル受賞。シカゴ建築・デザイン博物館2010年 グッドデザイン賞受賞。デンマークINDEX: Award 2011 ファイナリスト進出。

Web:https://www.wasara.jp/

information

SIMPLICITY

クリエイティブディレクター 緒方慎一郎により1998年設立。「現代における日本の文化創造」というコンセプトのもと、自社ブランドとして和菓子店、和食料理店、プロダクトブランドを展開。建築、インテリア、プロダクト、グラフィックなど多岐に渡るデザインやディレクションを手がける。2014年6月に開業したHYATTグループによるホテル〈Andaz Tokyo〉のインテリア設計を担当。

Web:http://simplicity.co.jp/

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