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小布施 Part3
「演出家」としての図書館長

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.004

posted:2012.2.22  from:長野県上高井郡小布施町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer's profile

Maki Takahashi
高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:嶋本麻利沙(THYMON)

小布施の図書館「まちとしょテラソ」で館長を務める
花井裕一郎さんを訪ねた山崎さん。
4回にわたりお二人の対談をお届けします。

45歳で図書館長に。未知の世界への挑戦でした。

山崎

ところで、花井さんは長年、
東京で映像演出家として働いていらっしゃったんですよね。
図書にまつわる知識や資格みたいなものをお持ちだったんですか?

花井

いいえ。ありません。45歳までまったく未知の世界!
そもそも、40歳をすぎて公務員になるなんて、
自分でも思ってもいませんでしたよね。

山崎

そっか、公務員なんだ!

花井

そうなんですよ。こう見えても(笑)。町の教育部門という位置づけになります。
全国から25名の応募があって、選んでいただきました。

山崎

いまは何名で運営されているのですか。

花井

僕を含め正職員3名、臨時雇用者10名で運営しています。

山崎

館長の任期は。

花井

今のところは5年で再任なし。
なんとかならないかなあって少しあがいているところです(笑)。

山崎

あと1年かぁ……。もちろん、こういうプロジェクトは、
見直しのタイミングも大事なんですけどね。

蔵書は約7万6000冊。

建物周囲の植栽プロジェクトも、町民主体で行われる。

ここにいても、演出家としての力が生きている。

花井

僕は元々、ひとりの町民としてこの町に暮らしているわけですよ。
だからある日を境に「公務員」になったからといっても、
町民としての思いは一緒。
設計事務所、行政、町民が、それぞれの立場でそれぞれ不器用に、
ことば足らずに発するネガティブな意見を聞きながら、
それが「ワクワクする気持ち」に変わるように、
あるいは「じぶんたちがなにがしたいのか」を明確にしてみせるために、
やっぱり「演出家」としてそこにいたような気がしているんです。

山崎

それ、わかります。僕らが日本全国の現場でやっていることも、
まったくそういうことですよ!

花井

開館してからも、その立ち位置は変わりませんね。
たとえば、誰かにオススメの本を押し付けるのではなく、
そのひとがきっと読みたいだろうな、と思う本をさりげなく並べておくんです。
そうすると「じぶんで見つけた!」と思ってもらえて、
より豊かな図書館体験になるんじゃないかと考えているんですよね。

山崎

それって、まったく「ファシリテーション*」ですよね(笑)。
本人が思ってもいなかったことを「ほんの少しだけ」ピックアップして
目の前に提示すると、とても新鮮な発見として、ワクワクにつながる。
自ら「また明日も!」と思ってもらえるための、重要な仕掛けです。

花井

ターゲットは「これまで図書館に来なかったひと」なのかなって。

山崎

うん。講演を行うとき、デパートの再生を任されたときなど、
僕も同じこと考えますね。
植物園にエンターテイメント性を見事にプラスした、
イギリスの「エデン・プロジェクト」なんかはとても参考になります。

花井

仕掛けのヒントはいろんなところにある、と。

山崎

ワークショップでの会話のルール「Yes、and……」と、
花井さんの「演出力」はイコールなわけだ。

花井

おっしゃる通り! コミュニティが「なにを欲しているのか」を考えて、
演出していかなければならないと思っています。

(……to be continued!)

*ファシリテーション:グループ活動が円滑に行われるように、
中立的な立場から支援、舵取りを行うこと。またはそのための技術のこと。
「促進する」「容易にする」「円滑にする」「スムーズに運ばせる」が原意。

僕らが日本全国の現場でやってることと同じですね。(山崎)

ターゲットは「これまで図書館に来なかったひと」。(花井)

information

map

まちとしょテラソ

「学びの場」「子育ての場」「交流の場」「情報発信の場」という4つの柱による「交流と創造を楽しむ、文化の拠点」という理念のもとで建築された小布施町立図書館。「本を貸し出す業務」だけにとどまらず、この場で未来を担うこどもたちが世界を感じ、飛び立っていくための支援や、なにかを創り出すひとの支援を通じ、町内外のひとびとの生涯学習の拠点としての「図書館」を目指している。
住所 長野県上高井郡小布施町小布施1491-2 TEL 026-247-2747
開館時間 9:00 〜 20:00 火曜休館 http://machitoshoterrasow.com/

profile

YUICHIRO HANAI
花井裕一郎

1962年福岡県筑豊生まれ。テレビディレクターからスタート。2000年、東京から小布施町に拠点を移し、本来の人間の姿、生き方を模索し創作。2009年より、小布施町立図書館・まちとしょテラソ館長。図書館を交流の場、ワクワクする情報を提供する場として演出している。

profile

RYO YAMAZAKI
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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