連載
posted:2023.3.27 from:徳島県徳島市・阿南市・美波町・海陽町 genre:暮らしと移住 / 食・グルメ
PR 徳島県
〈 この連載・企画は… 〉
ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。
writer profile
コロカル編集部
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撮影:石坂大輔(HATOS)
徳島県の県庁所在地である徳島市から西方向に目を向ければ、
ごみゼロを目指すゼロ・ウェイストで有名な上勝町や、
多くのサテライトオフィス誘致の事例がある神山町など、
先進的な取り組みをしている自治体が多い。
今回は徳島市から海沿いを南下して、高知県境まで旅をする。
こちらの地域もまたソーシャルな気づきを得られる旅となった。
まずは徳島駅から車で10分弱の万代中央ふ頭へ。
東西500メートルに渡るいわゆる倉庫街だが、近年、倉庫を転用した事務所の開設、
カフェや書店、家具店、古着店などのオープンが続いている。
その仕掛け人といえるのがNPO法人〈アクア・チッタ〉理事の岡部斗夢さんだ。
「近くに新しい港ができて、1990年代後半から物流機能が移転し、
倉庫としての機能が低下していきました」と教えてくれた。
「しかし港湾施設なので、簡単に転用ができません。
それでも地域の活性化を目指して、とにかく掃除から始めました。
そして2005年に『アクアチッタフェスタ』を開催し、19年までに15回開催。
最終的には1万7千人を集めるイベントになりました」
現在では20棟の倉庫のうちおよそ3分の2が転用され、
30の事業者が利用しているという。
最近では1棟貸しではなく、
小規模事業者に向けて分割して貸す取り組みも始まっている。
「倉庫に興味を持ってくださる方はたくさんいますが、
どれも100〜150坪という大きな倉庫なので、
リノベーションをするとすぐに1千万円くらいかかってしまいます。
そこで私の〈ユニフォーク〉という会社で倉庫を借りて分割し、
シェアショップとしてお貸ししています。
6坪くらいから、そして1日や1週間という単位でも貸し出し可能です。
立ち寄りやすい空間をつくることで、地域の回遊性を高めたいと思っています」
新しい箱をつくるのではなく、すでにあるものを再利用していく取り組み。
特にこのふ頭では、建物それぞれではなく地域で統一された、
倉庫街としてブランディングされた活性化を目指す。
「港の倉庫街という風情を残したい」と岡部さんは言う。
どの施設も、倉庫としての佇まいを残しながら、うまくリノベーションされている。
“倉庫街に出かけよう”というお出かけが、
徳島市内では少しずつ人気になっているようだった。
information
NPO法人アクア・チッタ
住所:徳島県徳島市万代町5丁目
web:NPO法人アクア・チッタ
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万代中央埠頭から市街地に向かって進んでいくと
〈ひょうたん島クルーズ〉乗り場がある。
運営しているのは水辺を守る取り組みを行っているNPO法人〈新町川を守る会〉。
1990年の発足以来、
月2回、徳島市内中心地を流れる新町川の清掃を欠かさず行ってきた。
「昭和62年に筏レースを企画したときに、新町川のあまりの汚さに驚きました」
と話すのは中村英雄理事。
仲間とともに自分たちが率先して活動したことで、
市民の多くが川の保全に目を向けるようになった。
結果、新町川などを巡って中洲を1周する「ひょうたん島クルーズ」が実現可能になり、
人気アクティビティとなった。
満潮などの時間帯によっては、頭を下げないと通り抜けられない橋があるなど、
楽しさもあるクルーズとなっている。
クルーズ船に乗って川を眺めていると
「かつては自転車や家電、布団などもたくさん捨てられていました」という
中村さんの言葉が信じられない。
30年以上、コツコツと継続することを大切にしながら川の保全に携わってきたことが、
今では市民に伝播し
「最近では、若い人の清掃活動への参加者が増えました」と喜ぶ中村さん。
川からまちを見上げるという、普段とは視点を変える体験をしながら、
地域を守る活動への視点もいろいろな角度から考えてみたい。
information
次に徳島市内から南下し、阿南市へ。車で40分ほどの距離を走る。
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次に向かったのは海部郡美波町。
まずは美波町の中心地である日和佐地区で、
サテライトオフィス誘致など地方創生を積極的に行っている〈あわえ〉を訪れた。
1909年開業の銭湯をリノベーションしたあわえのオフィスは、
入るとすぐに番台がある。脱衣所跡を抜け、浴場跡があわえのオフィススペース。
椅子は湯船のへりを利用していて、“足湯”状態で仕事をしていることになる。
そんなユニークなオフィスを持つ会社であるが、
脱衣所跡のスペースは、地域に開放されている。
「観光協会やボランティアガイドさんなどの案内で見てもらっていることもありますし、
特に週末などは地域の人に開放し、自由に使ってもらえるスペースになっています。
高齢者が多いので“スマホの使い方がわからない”とか
“娘にLINEを送りたい”という気軽な相談も結構いらっしゃいますよ」と話すのは
あわえの久米直哉さん。
あわえではすでに周辺エリアに30社近くものオフィス誘致を成功させている。
そこで単に社員にきてもらうだけではない、つながりの創出も大切にしているという。
「地域の課題解決にがっつり入ってもらったり、
サテライトオフィスと地域、サテライトオフィスとサテライトオフィスをつなぐ試みを
行っています。そうして新しい価値を生み出していきたいと思っています」
さらに都市部と徳島県の両方の学校で教育を受けることができる
「デュアルスクール」も推し進めているという。
大人のワーケーションや2拠点居住など働き方が多様になるなかで、
子どもの教育ももっと柔軟性があってもいい。
その下見として、観光がてら美波町を訪れるのもいいかもしれない。
日和佐の夜におすすめなのが、
あわえの向かいにある築80年を超える古民家をリノベーションした
ワインバー〈ミルアン〉。オーナーはお店の隣に住んでいるボーデ・ケンさんだ。
ケンさんは、両親とともに〈お宿 日和佐〉というゲストハウスを営んでいる。
コロナ禍になり、お宿 日和佐も例に漏れず、経営が苦境に立たされた。
そこで考えたのが飲食店である。
「観光客など外からのお客さんだけに頼るのではなく、
地元の人にサービスを提供できたら、
このような災難も乗り越えられるのではないかと考えました。
そこで私が以前ワインのインポーターをしていた知識を生かして、
ワインバーをやってみようと思ったんです」
日和佐にこれだけのワインを飲める飲食店はなく、
日本式の洋食店とは異なる「地域内の多様性」という点でも意味があった。
「自分たちのルーツがフランスにあるので、
父と相談してフランスや洋風の要素を取り入れ、
日本の古民家とうまく融合する空間にしました」
現在は、決まった日時にオープンするのではなく、予約制になっている。
料理はピザやガレット、さらにハーブやスパイスなどを使ったものを。
もちろんワインはケンさんが好きだというギリシャワインのほかに、
さまざまなものを揃えている。
日本とフランス、どちらにもルーツを持つ彼ららしく、
日本の古民家を自然とフランス様式をともなったカタチで再生している。
そうした境界線の融合したところに、このような新しい価値が生まれるのだろう。
information
ミルアン
住所:徳島県海部郡美波町日和佐浦125
Instagram:@milleun_hiwasa
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日和佐のまちなかから車で10分弱で、
東京から移住してきた林嗣大さんが手がけている〈阿波尾鶏〉料理専門店〈odori〉に着く。
阿波尾鶏とは地鶏とブロイラーのかけ合わせで、両者のいいところどりの鶏だ。
もともと産地直送野菜などを売っているお店だったところを、
〈あわえ〉の吉田基晴さんと出会い美波町に移住した林さんが、
2015年に現行のレストラン業態にリニューアルした。
「今でも産直のカタチは残していて、毎日、地元農家が野菜を届けてくれます。
当初は販売だけしていたのですが、
採れたて野菜が毎日来るのに使わない手はないと思い、お店でも提供しています。
地元農家の季節野菜がすぐに手に入って使えるのはすごく強みです。
これは都会のお店ではありえないことですよね」
最初から地元農家さんとつながりを持てたということが、
地域に入るという点でも、レストラン経営としてもプラス材料だったようだ。
阿波尾鶏の安定的な供給、
そして新鮮野菜を毎日手にしていると「料理への考え方がシンプルになった」という。
「手を加えるときに、やり過ぎず、素材を生かすように気をつけるようになりました。
シンプルなサラダでも感動していただけます」
地域に密着しながらも、周辺にはない料理を提供しているodori。
お店を長く続けてきて、地域での役割を自然と理解してきたのか、
従業員もユニークな動きを始めているという。
「現地採用であるが、全員移住者」というスタッフ、
そのうちふたりが定休日に〈Thurire(スリール)〉という
完全予約制のお弁当屋さんを始めた。これが好評で毎回売り切れているという。
ガッツリ系のodoriに対して、ヘルシーなThurireと棲み分けもできている。
「私もひとりで大きなことができるタイプではないけど、
こうやってみんなで協力して美波町や日和佐エリアを盛り上げていきたい」
徳島名物・阿波尾鶏のお店と思いきや、
美波町産野菜を生産者ごとにオンライン販売するなど、
地域への還元も意識したフラッグシップショップになっていた。
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その後は、海陽町へ向かう。阿波海南文化村にあるバス停から、
1台で道路と線路の両方を走るDMV(デュアル・モード・ビークル)に乗車。
途中、阿波海南駅でバスから鉄道にモードチェンジして、宍喰駅で下車する。
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宍喰駅でDMVを降りて徒歩数分。
住宅街に入って行くとすぐに〈ショッピング大黒〉がある。
2017年に海陽町に移住してきた岩崎致弘さんが、
2020年に事業承継したスーパーマーケットだ。
店頭には野菜やトイレットペーパーなどの日用品が並び、
店内に入っても特別変わったことは感じられない“普通”のスーパー。
しかし、よくよく見てみると、普通の食材などに混ざって
珍しいナチュール系ワインやオーガニック食材、手づくり食品なども売られている。
元々地元に愛されていたスーパーだったため、
その機能は殺さずに、自分なりの表現を加えた。
「僕はもともと音楽アーティストや
文化人などのマネージメント業界にいました。
音楽や伝統芸能ってすごく影響力やエネルギーがあり今でも生活の一部です。
しかし、人により趣味や趣向もあったり、
“何年も積極的に関わってない”という人も多かったりします。
でも3年間ごはんを食べてないって人はいない。
食文化は人種も国境も超えて、みんなに共通している文化だと思います」
なかでもオーガニックや自然食品など、
成り立ちや背景を意識した品揃えとなっている。
「体にいいということだけでなく、
その裏側にひとつひとつつくり手の思いや世の中の状況が反映されています。
食を通じて、世の中をもう一度見直すきっかけになってほしい」
そしてスーパーだけでなく、実際に食べて感じてもらう場所として、
飲食店〈テイクサンド〉も立ち上げた。
無農薬の酵素玄米、グラスフェットビーフ(牧草のみを食べて育った牛の肉)、
海陽町産ジビエ、とれたて天然鮮魚、ローカル&オーガニック野菜などを使用。
マヨネーズ、ポモドーロソース、タルタルソースなどの調味料にいたるまで、
ほぼ手づくりしているというこだわりよう。
メニューはすべて無添加料理だ。
海が目の前にあり、屋上テラスからは最高の眺望が広がる。
自然豊かな地で、食文化を今一度見つめ直してみることができるお店だ。
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テイクサンド
住所:徳島県海部郡海陽町宍喰浦字松原219-1
営業時間:ランチ11:00~15:00(L.O.14:30)、ディナー土曜17:00〜21:00(L.O.20:30) ほかにイベント営業多数
定休日:月曜(祝日は営業。イベントや年末年始の営業はSNSで告知)
Facebook:テイクサンド
Instagram:@takesand4491
徳島市から阿南市、美波町、海陽町と海沿いを南下する旅。
移住者やUターン者も多く、常に新しい動きがある地域のようだ。
さまざまなサステナブルな取り組みが、旅における地域の魅力になっていた。
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