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新幹線でビュンと移動、
城下町・信州上田で
ワーケーションする良さとは?

Local Action
vol.201

posted:2023.3.10   from:長野県上田市  genre:暮らしと移住

PR 上田市

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

writer profile

Chizuru Asahina

朝比奈千鶴

あさひな・ちづる●トラベルライター/編集者。北陸の国道沿いのまちで生まれ育ち、東京とバンコクを経由して相模湾に面した昭和の残り香ただようまちにたどり着きました。旅先では、細い路地と暮らしの風景に惹かれます。

credit

撮影:ただ(ゆかい)

新幹線でビュンと移動、城下町・信州上田でワーケーションする良さとは?

コロナ禍を機に、テレワークに切り替えた企業も多かったため、
全国各地にテレワーク施設が増えた。
そのなかで、地方の観光を楽しみながら
通常通りに仕事も行う「ワーケーション」という新しいワードも登場。
今やすっかり定着、普及した。

オフタイムの過ごし方も合わせ、
地域ごとに個性を打ち出しているワーケーションだが、
テレワーカーからすると、どこに出かけて仕事をしたらいいのか
と迷うばかりである。

そんな人には東京駅から新幹線で約90分と、アクセスしやすい長野県上田市がおすすめだ。
上田の特色は企業向けワーケーションに力を入れていること。
テレワーク施設には、テレワーカーたちの力になるコンシェルジュ的存在なる
「コーディネーター」が常勤し、相談すると地元とのコネクションを考えてくれる、
力強い味方だ。

そんな上田をまずはバケーション視点での魅力から紹介しよう。

上田は戦国時代の氏族、真田家発祥の地であり、真田昌幸から続く三代の本拠地。歴史好きに人気の観光地だ。

上田は戦国時代の氏族、真田家発祥の地であり、真田昌幸から続く三代の本拠地。歴史好きに人気の観光地だ。

上田駅到着と同時に、まるで時代を飛び越えたような感覚になるのは、
NHK大河ドラマ『真田丸』でもおなじみ、真田幸村の銅像が迎えてくれるからだろうか。
ここは、真田一族ゆかりの地で、信州きっての城下町。
放映当時の2016年は、721万人も観光客が訪れたという。

上田城跡公園。戦国時代、難攻不落といわれた上田城であるが、関ヶ原の戦い後、真田昌幸、幸村父子は九度山(和歌山県)に幽閉され、上田城は徳川氏に破壊されている。その後も歴史とともに数奇な運命をたどり、櫓などが復元され、現在の上田城跡公園としての形ができあがった。

上田城跡公園。戦国時代、難攻不落といわれた上田城であるが、関ヶ原の戦い後、真田昌幸、幸村父子は九度山(和歌山県)に幽閉され、上田城は徳川氏に破壊されている。その後も歴史とともに数奇な運命をたどり、櫓などが復元され、現在の上田城跡公園としての形ができあがった。

上田城の東虎口櫓門には、「信州上田おもてなし武将隊」の真田幸村たちが旅行者をもてなしている。

上田城の東虎口櫓門には、「信州上田おもてなし武将隊」の真田幸村たちが旅行者をもてなしている。

東京駅からは新幹線で90分の距離だ。
都内に通勤している人がいてもおかしくはない。

とはいえ、せっかく古都風情を味わえるまちなのだから、
滞在しないのはもったいない。
山間の城下町で、暮らす気分でテレワーク。
これが上田ワーケーションの醍醐味だ。

旧北国街道の古き良き風情を残す、柳町のまち並み。映画のロケ地にもなっている。パンの〈ルヴァン〉や日本酒〈亀齢〉の〈岡崎酒造〉、ワイナリーの〈はすみふぁーむ〉直営カフェもあり、周辺には、フレンチ、イタリアンなどの個人店が点在し、ランチめぐりも楽しい。

旧北国街道の古き良き風情を残す、柳町のまち並み。映画のロケ地にもなっている。パンの〈ルヴァン〉や日本酒〈亀齢〉の〈岡崎酒造〉、ワイナリーの〈はすみふぁーむ〉直営カフェもあり、周辺には、フレンチ、イタリアンなどの個人店が点在し、ランチめぐりも楽しい。

しかも、上田市内には、「美人の湯」で知られる信州最古の温泉、別所温泉もある。
風情のある温泉街と地域のソウルフードが好きな人にはたまらないワーケーション先だろう。

上田から上田電鉄別所線で別所温泉まで約30分。

上田から上田電鉄別所線に乗って別所温泉までは約30分。

ミントグリーンのレトロな駅舎は撮影地としても人気。

ミントグリーンのレトロな駅舎は撮影地としても人気。

平安時代から続くといわれる、いで湯の里・別所温泉にもコワーキング施設が点在する。ランチの後に、さっと無料の足湯〈ななくり〉でリフレッシュできるのも温泉地でのワーケーションならでは。もちろんリモートワーク後に、共同浴場の湯めぐりで疲れを癒すことも可能。

平安時代から続くといわれる、いで湯の里・別所温泉にもコワーキング施設が点在する。ランチの後に、さっと無料の足湯〈ななくり〉でリフレッシュできるのも温泉地でのワーケーションならでは。もちろんリモートワーク後に、共同浴場の湯めぐりで疲れを癒すことも可能。

もう少し足を延ばすと、鹿が教えた湯といわれる
「鹿教湯(かけゆ)温泉」も上田にはある。

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ワーケーションの過ごし方

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上田に移住したテレワーカーが、 ワーケーションホストになってみた

そんな上田の諸条件に魅せられて、
都内から移住をした人がいる。
2020年2月に、上田在住の女性と結婚した森田靖さんだ。

東京でエンジニアとして働いていた森田さんは、
当面はお互いの家を往来する生活にするつもりだったという。
だが、コロナ禍で、完全に自宅でのリモートワークとなり、
ならば、妻の住む上田にいても変わりはないのでは、
と同年の8月に引っ越した。

森田さんは東京のIT関連会社で開発エンジニアの仕事をしていたが、昨年末に退職。すべてリモートで転職活動を行った。

森田さんは東京のIT関連会社で開発エンジニアの仕事をしていたが、昨年末に退職。すべてリモートで転職活動を行った。

土地に慣れてきた森田さんは昨秋、
当時勤めていた会社の同僚4人をワーケーションに誘った。
ちょうど上田市の企業向けワーケーション実践支援補助金制度が始まったこともあり、
それを利用することを提案したのだ。

プログラムの参加条件は、3つ。
・市内にあるテレワーク施設を必ず利用すること
・宿泊施設や体験コンテンツの利用を少なくともひとつ以上含むこと
・参加者は3名以上であること

森田さんらは、11月3日(木・祝)から5日(土)の2泊3日、
テレワーク施設〈+519worklodge〉と宿泊施設〈SUNTERRACE別所温泉〉を利用した。

「地元出身の妻や、市のワーケーションコンシェルジュにアドバイスをもらい、
スケジュールを立てました」
という森田さん、その中身はいったい?

<森田さんたちのワーケーション日程>
1日目/祝日。朝、車で東京を出発。
往路、周辺をいろいろ立ち寄りながら、
お昼過ぎに〈SUNTERRACE別所温泉〉にチェックイン。
〈あいそめの湯〉でゆったり温泉に入ってから上田駅へ電車移動し、
夜は地元の方たちとクラフトビール片手に団らん。

2日目/金曜日。平日なのでテレワーク施設〈+519worklodge〉で
通常通りに朝から夕方まで仕事をする。
仕事後、〈室賀温泉 ささらの湯〉に入り、
夕食は皆で買い出しをして宿で自炊をした。

3日目/土曜日。朝っぱらから外湯に入って朝食。
その後チェックアウトし、地酒店でお目当ての酒をお土産に買って、
稲倉の棚田や上田城のイベントへ。
地元スーパーや直売所で買い物をし、夕方、帰京した。

「上田は自然が身近にあるのがいいですよね。
夜はクラフトビールや日本酒、ワインなども楽しめて温泉もあります」

移住をして、すっかり上田に馴染んだ森田さん。
ワーケーションをした友人たちも滞在を楽しんで帰っていったという。

上田は、1年を通して晴天率が高く、
冬でも市街地にはあまり雪が積もらない。
だが、車を少し走らせると菅平高原があり、
スキー場もある。スノーボードや温泉が好きな森田さんは、
移住をしてQOL値はかなり上がったそう。
「自然が美しく過ごしやすい、春と秋が特におすすめです」

上田市を東西に流れる千曲川の河川敷は、森田さんお気に入りのジョギングルート。山から吹き下ろす風が清々しく、気分転換になるのだとか。

上田市を東西に流れる千曲川の河川敷は、森田さんお気に入りのジョギングルート。山から吹き下ろす風が清々しく、気分転換になるのだとか。

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企業向けワーケーションの拠点も

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上田の企業向けワーケーション、 最大の特徴が集約された拠点〈+519worklodge〉

2022年6月18日にオープンした、〈+519worklodge〉(上田市技術研修センター)。名前の由来は、標高519メートルの立地にあること、自然の中にあり、ロッジ風の佇まいであることから。また、「+」は、さまざまな人がここに集まり、モノコトが+(プラス)されていくことをイメージしている。

2022年6月18日にオープンした、〈+519worklodge〉(上田市技術研修センター)。名前の由来は、標高519メートルの立地にあること、自然のなかにあり、ロッジ風の佇まいであることから。また、「+」は、さまざまな人がここに集まり、モノコトが+(プラス)されていくことをイメージしている。

森田さんや友人たちが訪れたテレワーク施設、+519worklodgeについて説明しておこう。
さまざまな人たちの上田でのワーケーションを支えるこの施設は、
県営の上田リサーチパーク内にある。
その地の利を生かし、大学の研究施設など、
ビジネスマッチングへのバックアップ態勢が万全なのが特徴だ。

そのため、ここには、利用者と企業を結びつける
「コーディネーター」がいる。

「地域の産業活性化を支えるために、
さまざまな企業がテレワークできる場としてここがつくられた背景があります」
と話すのは、コーディネーターの滝沢一秀さん。
広くて居心地のいいテレワーク施設だが、
ハード面の魅力だけでなく、ソフト面からのアプローチも期待できるのだという。

なぜなら、+519worklodgeは
信州大学繊維学部を中心とした産学官連携の組織、
一般財団法人 浅間リサーチエクステンションセンター(AREC)が
施設の管理を行なっているから。

ARECは、地域内企業への各種サポート、創業支援などを行い、
これまで産学官連携のさまざまなプロジェクトや創業者を排出している。
地域課題に直結する問題を解決に導いてきた実績がある組織だ。

つまり、ここには上田を拠点に東信州全域の企業、
大学の研究技術とのパイプがあるということだ。

「テレワーク施設とビジネスの相談窓口が紐づいているのは
リサーチパークの中に施設がある上田ならではです」
と上田市商工観光部 商工課の伊藤正道さんは話す。

「上田市は、いつしか“ワーケーション”というワードがなくなっても
ぶれない施設運営を目指しています。
予算があればテレワーク施設はどこでもできますが、
大切なのは運営です。
この場所を、ただの貸館スタイルから施設に命を吹き込むことを考えたとき、
ARECとのコラボに行きついたのです」

ARECのサポート(運営)があれば、コワーキングに集まる利用者同士や
利用者と地元企業との化学反応も期待できる。
伊藤さんは、ここは、何よりも仕事に集中できる場所だから
地元の人にも人気を博しているのだという。

「静かであることがビジネスに最適、
という考え方に基づいて運営しています。それが評価され、
オープンしてわずか半年で利用者増につながっているんです」

予約不要、ドロップインで利用できるコワーキングエリアは周囲の自然に溶け込んだインテリア。3時間500円から利用できるのはテレワーカーにはありがたい。ワーケーションのオフィスとして利用する人もいれば、地元でリモートワークを行う森田さんのような人もいる。

予約不要、ドロップインで利用できるコワーキングエリアは周囲の自然に溶け込んだインテリア。3時間500円から利用できるのはテレワーカーにはありがたい。ワーケーションのオフィスとして利用する人もいれば、地元でリモートワークを行う森田さんのような人もいる。

コワーキングエリア利用者は1時間100円の追加オプションで個室が使用可能。リモート会議などにおすすめ。

コワーキングエリア利用者は1時間100円の追加オプションで個室が使用可能。リモート会議などにおすすめ。

コーディネーターは、リサーチパーク内にある場所のポテンシャルを生かし、
上田で何か仕事を始めたい人、技術的なことでどこかに相談したい人など、
ビジネスが生まれる前の段階から話を聞く。
具体的に何を相談したいのか、相談者はビジネスをこの地でどうしていきたいのか
イメージできていると、その先は早い。
そんな仕組みがあるなら、
上田にワーケーションに来たきっかけで地元企業と縁を結びたい人も出てくるはずだ。

滝沢さんにコーディネーターの仕事内容を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「例えば、パソコン用の部品を製造している会社が
新規事業として上田で農業に取り組んでいきたいと思っているとします。
自社でも研究して、トマトをつくったけれども、
その味がどんなふうにおいしいのか確かめる際に、
社内では定量評価ができない。
そこで大学の研究部門につなげて評価してもらうとか、
あるいは専門の測定会社への橋渡しをします」

コーディネーターは、地元の製造業をはじめとする企業の特徴を熟知しており、
信州大学繊維学部など研究機関にも必要に応じてアクセスが可能だ。

「困りごとや課題などの相談を受けたら、実践経験や知見を生かし、
ARECのネットワークを総動員して産学官金の関係者につなぎます。
継続的に成果創出まで伴走型で支援を行っていくのです」
企業単位ではなかなか結びつきにくいお見合いを
スムーズにする仲人、といったところだろうか。

そのほか、+519worklodgeでは、
女性のための創業スクールなど
起業したい人への創業支援のプラットフォームもあり、
市外からも気軽に参加できる。

コーディネーターは総勢9名(うち女性2名)。
常駐の無雁(むかり)茉利恵さんは
上田市創業支援プラットフォーム事務局も行っており、
テレワーカーから相談を受ければ、
事務局のイベントに参加する自営業者とのマッチングも行う。

上田でワーケーションをし、コーディネーターと話すことは、
ここで創業する可能性も含まれるということだ。
企業側が一からアプローチをするといった負担が減るような努力を、
自治体も行っているのだ。

コーディネーターの無雁茉利恵さん(左)と滝沢一秀さん(右)。滝沢さんはARECの東信州広域連携コーディネーター&産学官連携コーディネーターとして、上田市を中核とする東信州エリア全体の産業振興に関わることが多い。

コーディネーターの無雁茉利恵さん(左)と滝沢一秀さん(右)。滝沢さんはARECの東信州広域連携コーディネーター&産学官連携コーディネーターとして、上田市を中核とする東信州エリア全体の産業振興に関わることが多い。

そろそろ桜の季節。
この春、上田でワーケーションするなら、
仕事の後に桜の名所、上田城跡公園で夜桜散歩もいいだろう。
暮らすように滞在して、今後の暮らし方やビジネスの可能性を探ってみてはいかが?

information

map

+519worklodge/上田市技術研修センター

住所:長野県上田市下之郷812-10

TEL:0268-39-1555

営業時間:9:00〜18:00

定休日:日曜・祝日

Web:上田市note 

上田市企業向けワーケーション実践支援補助金

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